2012 Fiscal Year Research-status Report
20世紀ドイツにおける地域計画と地方自治に関する研究
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23530424
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山井 敏章 立命館大学, 経済学部, 教授 (10230301)
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Keywords | ドイツ / 国土計画 / 地域計画 / 地方自治 / ゲアハルト・ツィーグラー / モデルネ |
Research Abstract |
当該研究課題について、社会経済史学会および政治経済学・経済史学会の二つの学会の大会で研究報告をおこなった(「戦後ドイツの国土計画と中心地論」、「戦後ドイツの地域計画と地方自治」)。また、ドイツ語で執筆した論文をドイツの学術雑誌に投稿し、掲載可となった("Landesplanung und kommunale Selbstverwaltung")。これらは、西南ドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州で、第二次大戦後、国土計画策定のシステムが形成される過程を、国土計画・地域計画と地方自治の矛盾という観点を軸に検討したものである。 さらに、「『計画』の20世紀」と題する論文を執筆し、所属大学の紀要に発表した。19世紀末から1970年代初めまでの時期をひとまとまりの<モデルネ>として捉える近年の研究動向のなかに国土計画を位置づけ、本研究の方法的枠組みを設定することが、本論文執筆の目的であった。内外の歴史研究において一種流行の観を呈する言説分析という手法、それと密接に結びつくフーコー的歴史観に対する批判を通じ、「システムと規律の支配」という<モデルネ>論に支配的な歴史認識とは異なる立ち位置から20世紀の国土計画を論じる足場を築くこと、これが、本論文の執筆を通じて得られた成果である。 以上の研究を進める上で史料・文献を読み進めるとともに、夏期休暇を利用してドイツ各地の文書館を訪ね、史料を収集した。とくに、バーデン・ヴュルテンベルク州の国土計画システム構築において中心的役割を果たした人物、ゲアハルト・ツィーグラーに関する新たな史料を得られたことは重要な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したように、学会報告・論文の形で順次成果の発表を進めている。さらに、学会報告の一部は論文にまとめ、学術雑誌に投稿ずみである。バーデン・ヴュルテンベルク州各地で1950年代後半から設立された地域計画連合のひとつを事例とする論文、そして、第二次大戦中の国土計画に関する論文の作成に現在とりくんでおり、これらが完成すれば、全体をひとつの大きな研究にまとめることが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で言及した現在とりくんでいる二つの論文の執筆を進める。既発表および今後発表予定の他の論文とあわせて、研究全体をまとめる。 なお、本研究課題採択時の計画では、第二次大戦以前の時期については戦後の国土計画の「前史」という位置づけをしていたが、この間の研究のなかで、むしろ19世紀末ないし20世紀初めから1960/70年代までをひとつのまとまった時代(<モデルネ>)と捉え、そのなかに国土計画を位置づけるという研究のスタンスが明確になった。このため、第二次大戦下の国土計画について、「前史」という扱いを超えた研究が必要(かつ可能)になっている。また、バーデン・ヴュルテンベルク州の事例研究を核としつつも、連邦レベルの議論を検討する必要性が出てきている。こうしたことに配慮しつつ研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏期休暇中および春期休暇中の二度ドイツに出張し、文書館で史料収集にあたる。予定される訪問地は、コブレンツ、シュトゥットガルト、コンスタンツ、ミュンヘン、ベルリンである。文書館での作業等のためにラップトップPCを購入する。さらに、関連文献の購入、学会等への出張に研究費をあてる。 *次年度使用額について:今年度二度のドイツ出張を予定していたが、一度のみに終わった。日程上の都合もあるが、同時に、史料収集の進捗状況から、最終年度に二度出張を行うことが適切と判断したためである。
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