2011 Fiscal Year Research-status Report
近世京都町人の人口データベースを用いた社会経済史的分析
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23530425
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
浜野 潔 関西大学, 経済学部, 教授 (40288585)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歴史人口学 / 近世都市 / 京都 / 宗門改帳 |
Research Abstract |
近世の歴史人口学的研究において、これまでデータが乏しく研究の進んでいなかった大都市の人口について、幕末期京都の宗門人別改帳を素材に研究を進めている。現在まで、99冊28町分の史料のデータベース化を完成しており、このデータを用いて幕末期京都の出生率水準、および死亡率水準を推計する研究報告を日本人口学会(2011年6月、京都大学)、Social Science History Association(社会科学史学会、2011年11月、ボストン)にて行った。本報告によって、幕末期京都では出生率は低く、死亡率は高い状態(速水融が提唱した「都市蟻地獄説」の状態)にあり、農村から恒常的な人口流入がなければ人口を維持出来なかったことを明らかにした。さらに本研究では、残存年数が長く、近世中期の様相をも明らかにできる京都の衣棚南町、衣棚北町の2町のデータベース化に取り組んでおり、最終的には合計30町分の宗門改帳からなる大規模データベースの完成を目指している。初年度は、紙ベースのコーディングシートの情報をエクセルファイルに移す作業を進めた。入力にあたっては、大学院レベルでデータベース作成経験のある者をアルバイトとして雇用し、コーディング上で生じたミスのクリーニングも同時に行うよう努めている。衣棚南町、衣棚北町は京都の中心、三条通に面しており、多くの奉公人を雇い入れる「大店」が立ち並ぶ町である。この2町のデータを加えることによって、大都市中心部における人口変動パターンの解明が進むことが期待される。また、本史料は「元治大火」という幕末期最大の災害の生じた時期をも含んでおり、災害後の復興過程の分析も期待できるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は文書のマイクロフィルムからのデータベース化を想定していたが、紙ベースのコーディングシートの提供を受けることが可能となったので、前倒しでデータベース化の作業を進めることができた。史料には誤記も多く、当初予想したよりも多くのクリーニング作業が必要となっているが、2年目となる今年度はデータ入力者の熟練度の向上も期待できるので、作業のスピード上昇が見込めると思われる。 研究内容については、国内(日本人口学会)だけでなく、国際学会(Social Science History Association[ボストン]、およびEuropean Social Science History Conference[グラスゴー大学])での発表も行っている。今後さらに、研究成果を国内外の学術誌に掲載することを目指してゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は2012年6月に日本人口学会大会(東京大学・駒場キャンパス)での報告を予定しており、ここまでの中間成果を総括したい。また、2012年11月にはSocial Science History Association(社会科学史学会、バンクーバー)での報告がすでにアクセプトされている。作業に関しては、追加となる2町分のデータベースの完成を急ぎたい。この2町はデータサイズがもっとも大きいので、既存のデータベースが大きく拡張されることが期待できる。また、奉公人の雇用比率が高いため、奉公人に関する様々なデータを得ることも可能である。この面での新しい研究についても進めてゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「現在までの達成度」に記した通り、紙ベースのコーディングシートの提供を受けることができたため、この作成費用の節減が可能となった。繰り越しとなったこの分の予算は、European Social Science History Conference(ヨーロッパ社会科学史会議、2012年4月、イギリス・グラスゴー大学)の出張費に充当している。 また、引き続きデータベース化に関しては、アルバイトの人件費が必要となる。加えて、研究成果のまとめのため、新しいコンピュータおよびソフトウェアの導入を行いたい。さらに、国内外での研究成果の発表のため、交通費(研究会等出席のため、大阪-東京4回程度、Social Science History Associationでの報告のため、大阪-バンクーバー1回)を必要とする。
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