2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530426
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
桑原 哲也 福山大学, 経済学部, 教授 (20103723)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 化学多国籍企業 / 多国籍企業の対日投資 / 技術優位 / 日本企業のキャッチアップ / 合弁パートナー / 外資政策 / 原料調達の安定 / 複数企業の比較分析 |
Research Abstract |
平成23年度には、復興期から高度成長期にかけての化学素材の多国籍企業の対日投資について、『化学経済』(1954年から発行)をはじめとする雑誌、社史、企業物語の文献調査、当事者6名へのインタビューをした。戦後の化学素材多国籍企業は、次の3時期に分けて説明できることが明らかになった。第1の時期は、1950年代から1960年代末まで。拡大する日本市場へ向けて新製品を持ち込み、技術優位によって地位を比較的容易に確立できた。第2の時期は、1960年代末からプラザ合意による円高が急進する1986年の時期で、日本企業のキャッチアップがあり、競争激化する中で、マーケテイング能力が必要となった。多国籍企業は、日本側の合弁パートナーとのマーケテイング問題を中心にコンフリクトが生じ、その解決が成果を大きく規定した時期である。第3の時期は、多国籍企業が、日本からアジアの別の地域へ市場の獲得に乗り出し、投資の比重を日本から東南アジア、中国へ移していった時期である。 本年度の研究の意義は次の通り。第1、すべてが合弁形態である理由として、政府の外資政策のほか、原料調達の安定などで日本側パートナーが必要不可欠であったことが理解できたこと。第2、日本側合弁パートナーとの関係作りが、日本での成否のカギとなったこと。この問題が大きくなったのは、1960年代末から1986年までの時期であることが理解できた。第3、1950~1986年を対象に、各社の日本子会社の業績を確認し、その違いを説明することが、複数企業の比較分析の内容となることが理解できたこと。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
多くの課題が未解決である。第1、日本における多国籍企業が消費財市場へのエントリーする場合と、生産財市場へエントリーする場合との違いの最大のものは何かを突き止めることができなかった。 また、問題点が今一つ具体的に明確にならないために、事例研究の対象を絞り込み、それを掘り下げることが進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、特定の多国籍企業に焦点を当て、その日本子会社の社史を記述する。それを目指して、調査する。特に、マーケテイングの展開プロセスに焦点を当てる。そこでは、日本側合弁パートナーとの対立をどう解決したのかが重要な説明課題として立ち現われるであろう。また、従来研究してきた消費財企業の日本市場での地位確立に必要であった経営能力とは、違いがあるのかも説明する必要があろう。 その基本的データベースとして、事例研究対象子会社の1950年代~1986年に至る時期の財務的成績をまず確認しなければならない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、物品費用(150,000円)デスクトップと同様の使いやすさのノート型パソコン(たとえば、東芝ダイナブック)を購入する。2、海外調査費用(700,000円) 海外調査で、多国籍企業本社が所蔵している、日本事業の関する資料を調査し、収集する。米国 デユポン社(ハグリ―ミュージアム)、ダウケミカルの資料を調査する。ドイツにおいて、IGファルベン系企業、特にバイエルののアーカイブスの調査をする。スイスではベーヴェにおける、ネスレのアーカイブスで、戦前、戦後の対日進出関連の資料を調査する。3、国内調査費用(300,000円) 1990年以前に、事例として研究対象とする外資系企業に勤務した人へのインタビューをおこなう。 東京へ2泊3日で、6回出張。4、インタビューの文字起こし費用(300,000円)10名の文字起こし、1人3万円で。5、データベースの作成費用(240,000円)多国籍企業子会社の、資本金、従業員数、製品別売上、利益などの、データベースをアルバイトを雇用して、作成する。7時間1日8000円を、30日。 以上1~5で、169万円の使用を計画する。
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