2011 Fiscal Year Research-status Report
共同決定の変容に着目したコーポレート・ガバナンス構造の研究
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23530434
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
吉村 典久 和歌山大学, 経済学部, 教授 (40263454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 朋亨 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (20568448)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究では、ドイツ企業のコーポレート・ガバナンスにおける共同決定制度が果たしてきた役割について検討を進めている。従来の研究では、特に、その(法)制度面への注目が主であったが、本研究ではその機能面、実態に注目するものである。 研究の開始年度である平成23年度においては、吉村が日本における、そして掘口がドイツにおける、両名ともが行ってきた共同決定に関する既存研究の収集と分析を、より徹底的に行った。ドイツのみならず、日本においても書籍、論文などの形で相当量の研究蓄積があった。ただし、既存研究、特に日本におけるそれでは制度面の研究には相当の蓄積があるが、実態を明らかにしようとする研究が十分なものではないことが分かった。 既存研究のレビューにくわえて、研究実施計画にあるようにドイツにおける聞き取り調査を実施した。実施した期間は平成24年2月末から3月頭の期間で、吉村・掘口の両名が参加した。今回の調査では、ダイムラー・アーゲー(Daimler AG )の関係者を対象とする調査を実施した。ダイムラー社のシュトゥットガルトの本社にての本社・人事部門のメンバーへの複数回の調査にくわえて、生産現場における労使関係のマネージャーへの調査も実施した。聞き取り調査は合計3回・計4名に対して実施されたが、時間的にも約10時間程度のものとなった。ドイツにおいてはまた掘口によって、日本では入手が困難な研究資料の入手も行った。 この聞き取り調査においては、ドイツを代表する企業における共同決定制度の今日の現状を聞き取りすることができた。また、制度に参加する従業員代表者のキャリア・パスの問題など、今後の研究に資する新たな分析視覚も獲得することができるなど、次年度の研究につながる成果を生み出すこともできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ語文献も含めての既存研究のレビューについては、相当に収集、検討が進んでいる。既存研究の量は膨大なものである。しかし、われわれが進めている共同研究の実態解明という点については既存研究は手薄なことがわかり、われわれの研究が相応の価値あるものとなり得ることを、再確認することができた。 現地ドイツもおいて、ダイムラー社の複数部門への長時間にわたる聞き取り調査を実施できたことにより、当該企業の共同決定制度の今日の姿を明らかにすることができた。 ダイムラー社、一企業の事例であるが、当該企業のドイツ、欧州における存在感を考えると、その姿を明らかにできたことは今後の研究に向けての大きなステップとなろう。 その際に発見された事実を、今後行う予定である他社の聞き取り調査において確認する。ダイムラー社における調査は、ドイツ企業全体における共同決定の姿を明らかにする、さまざまな分析視角を提供するものであったと考えている。 これらから本研究は、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
ダイムラー社を含めドイツにおいて、聞き取り調査を複数回、実施する予定である。比較的、時間を取りやすい夏休み期間をまずは実施期間と考えている。 すでに掘口は、デュッセルドルフのコーポレート・ローヤーと連絡を取り、当方が希望する訪問企業へのアクセスを開始している。くわえて学会関係者にも連絡を取り、労働組合へのアクセスも開始している。掘口が連絡を取っている者はいずれも、ドイツ企業・労働組合に太いパイプを有する者である。それゆえ、今年度も聞き取り調査は確実に実施できるものと考えている。こうした聞き取り調査を行うことで、さらなる実態把握に努める。 また、既存研究のレビュー論文、パイロット的に行ったダイムラー社への聞き取り調査の結果については、論文にまとめる予定である。学内の機関誌のみならず、組織学会あるいは日本経営学会などの学会誌への投稿も考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、ドイツにおける聞き取り調査に向けて、研究費を活用する予定である。そのため「旅費」の部分に多くの配分をしている。くわえて、聞き取り調査を円滑に行うため、専門知識を要した通訳者に協力を依頼することも考え、「謝金等」にも研究費を一部、配分している。 次年度使用額が生じた理由であるが、当初、ドイツにおける聞き取り調査を複数回、あるいはより長期に実施する予定であった。しかしながら、調査依頼先と当方の予定が調整できず、やむなくそうした形での現地調査を断念したためである。
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