2012 Fiscal Year Research-status Report
共同決定の変容に着目したコーポレート・ガバナンス構造の研究
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23530434
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
吉村 典久 和歌山大学, 経済学部, 教授 (40263454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀口 朋亨 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (20568448)
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Keywords | ドイツ |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ドイツへの訪問調査を実施した。ドイツを代表するダイムラー社にての追加調査を実施するとともに、同様に代表する企業であるシーメンス社傘下のOSRAM AGなどにも赴いた。 ダイムラー社では、同社の共同決定制度、それに伴う人事・教育体制についての実態に関する情報を相当量、収集することが出来た。くわえて、OSRAM AGでインタビュー調査の対象者となった者は以前、会社法の専門家として、親会社たるシーメンス社のトップ・マネジメント層における意思決定の現場に近い場所にあり、同社における「選択と集中」「事業構造の組み替え」にまつわる意思決定の状況をうかがうことができた。同社におけるそうした取り組みは、日立製作所、パナソニックといった日本の電気機器企業の経営のお手本とされてきた。それにまつわる意思決定の過程をつまびらかに出来たこと、とくにその過程における共同決定制度の関与の状況を明らかに出来たことは、非常に大きな成果であった。 こうした個別企業に対する訪問調査にくわえて、共同決定制度を含めたドイツにおけるコーポレート・ガバナンスに関する一般的な状況、法制度の動きなどについても情報収集を進めることが出来た。ドイツ、欧州を代表する会社法を専門とする弁護士事務所に所属するコーポレート・ローヤーから、そうした点に関する情報を得た。日本で獲得できる情報には限りがあり、現地における動向をより詳細につかむことにつながった。くわえて、一般的な実態面、法制度面などについて疑問となっていた点についても、当該のローヤーから詳細な説明を受けることが出来た。疑問点を明らかに出来たことは、今後の研究をよりスムーズなものとするに資するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
訪問調査などを実施するとともに、すでに成果の一部の公開が進められている。 2012年10月、研究代表者である吉村は『会社を支配するのは誰か』を講談社から出版した。これには、研究成果の一部が活用されている(同書の223頁に補助を受けたことを記載)。 学会発表も実施済みである。本研究の成果の最初の発表として、分担者は代表者と密接に連絡を取りながら、2012年9月15日に開催された日本リスクマネジメント学会全国大会(於尚絅大学)において、「リスクマネジメントの視点から考察したドイツ企業のガバナンス制度-共同決定制度を中心に-」という発表を行った。続いて、2012年12月8日に開催された日本経営学会関西部会例会(於摂南大学)において、「ドイツ企業における共同決定制度の現状について」と題して、分担者・代表者の共同の形で発表を行った。コメンテーターをはじめ、フロアからも活発に質問、コメントを頂戴できた。コメンテーターはドイツ経営学の専門家であり、例会の参加者にもドイツの企業統治・経営に詳しい研究者が多数、含まれていた。活発な討議が行われたことから、我々の研究成果が一定の評価を得たものと考えている。 前者の発表は、『危機と管理』(日本リスクマネジメント学会)に既に掲載され、後者のこの発表をもとにして現在、『経済理論』(和歌山大学経済学会)に論文を提出済みである。 研究のこうした進行状況から「おおむね順調に進展している」と判断するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度には、日本語論文3本、英語論文1本、ドイツ語論文1本の計5本の論文を執筆し、主要学術誌に投稿予定である。前年度は、本研究の総論にあたる部分の研究を論文としてきたが、本年度は各論の発表を精力的に行いたい。共同決定には、社会レベルのもの、企業のトップマネジメントレベルのもの、事業所レベルのもの、と3つのレベルが存在するとされているが、本研究は後者二つをその研究対象としているので、まず事業所レベルの共同決定に関する論文を公表し、学会の批評を受けたい。続いて、我が国に共同決定制度を導入しようとする動きがあることに着目し、その是非に関して学術的な検証を行いたい。当然のことながら、コーポレート・ガバナンス研究にとって最も重要な、トップマネジメントレベルの共同決定の機能性に関しても論を世に問う予定である。本研究の成果物の質の如何を世界に問うことも我々は重要な課題として捉えている。英語圏およびドイツ語圏の学術誌に発表することで、国際的な研究者からもフィードバックを得ることが期待でき、それによって新たな知見が得られると信ずる。 また、規模の大きな学会の全国大会での発表もほぼ決まっており、そこで直接、有力研究者から批評を受けることで、本研究全体の質の向上を目指したい。 上記のような目的を果たすため、本年度もドイツの現地調査を行い、共同決定制度の深部に切り込んでいきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経費の使用計画において最も大きなものは、ドイツにおける調査費用である。ドイツにおけるコネクション形成は順調に進んでおり、代表者・分担者は密接に連携を図りつつ、力を合わせ準備を進めている。さらに重要文献の追加購入にかかわる費用も必要であると考える。 また、アウトプットに関わる経費の執行も見込まれる。例えば、有力学会における発表の為の移動費がそれにあたる。また、外国語で執筆した論文の校正費用も考慮する必要があると考えている。
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Research Products
(7 results)