2011 Fiscal Year Research-status Report
地域を活性化させる次世代型生産ネットワーク構造設計システムの開発
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23530441
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Research Institution | Hokkaido Institute of Technology |
Principal Investigator |
川上 敬 北海道工業大学, 創生工学部, 教授 (10234022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 恵子 北海道工業大学, 未来デザイン学部, 准教授 (20420763)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 次世代型生産システム / ネットワーク構造 |
Research Abstract |
本研究の目的は,ものづくり企業が地方・地域に立地しながらグローバルな生産環境の中で,製品の付加価値創出の意味で地理的距離のへだたりを超越できるような,次世代型生産ネットワーク構造の構築を文理融合型の研究手法により提案することである。すなわち,地理的には遠距離に分散する生産拠点群をネットワークとして結合し,各拠点が有する多様な経営資源を組み合わせ,連携させることで,距離空間の隔たりを凌駕するような付加価値を創出可能とする新しい生産ネットワーク構造を設計・検証するための理論を提案し,その構造を導出するシステムを開発することが達成目標である。 この目的を実現するために平成23年度は,課題Iの国内外の先進地域における分散的産業集積手法の成功例抽出とその分析として,国内における分散型産業集積の先進例を訪問・調査し,1)分散型の産業集積を行った目的,2)生産拠点立地選択の要因,および3)実際には選択されなかった候補地域,等を聴き取りしたのちそれらを類型化した。その結果,調査対象の分散型産業集積が,生産文化論や付加価値創出の意味で,立地が目的に合致したものであったかどうかを検証することに成功した。 また,課題IIの計算論的手法による,地理的隔たりを超え付加価値を生む次世代型生産ネットワーク構造の導出について,付加価値を漸次的に最大化するネットワーク構造の成長過程を導出するプロトタイプシステムを構築し,仮想的な生産拠点データ群を用いて,複数のシミュレーション実験を行い,最適な生産ネットワーク構造が導出可能であることを統計的に検証した。 さらに調査結果から得られた,実際のデータをシステムに適合する形式へと変換し,単一データによるシミュレーション実験を行った.その結果から本システムの有効性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」の達成度について、平成23年度の研究はほぼ予定通りに進行したと考えている。 その理由として,平成23年度は研究の第一フェーズとして分散型産業集積の先進例として国内の工作機械メーカ数社を訪問・調査した。ここでいう分散型産業集積とは,自然発生的に形成される地場産業型集積や大企業とその下請け企業群から構成される企業城下町型集積などとは異なり,輸送費等のコストが発生するにも関わらず分散した地域に生産拠点を展開する集積構造である。そこで具体的には,1)分散型の産業集積を行った目的,2)生産拠点立地選択の要因,および実際には選択されなかった候補地域を聴き取り,分類・整理を行うことで,それらの産業集積が生産文化論や付加価値創出の意味で目的に合致したものであったかどうかを検証することができた。さらに(財)中小企業基盤整備機構が行っている「新連携」に北海道で認定された46件についても整理することができ,これによってさまざまな産業集積例が「地理的隔たりが付加価値を生む次世代型生産ネットワーク構造」を示しているか否かを分類できるようになった点は大きな成果であると考えている。 またコンピュータシミュレーションにより経営資源の多様度から創出される付加価値を漸次的に最大化する生産ネットワーク構造の成長過程を導出するシステムについては,仮想的な生産拠点データ群を用いて複数回のシミュレーションを行い統計的にその導出性能を示した。また調査結果から得られたひとつの実データをシミュレーションシステム上にのせるためにデータ変換を行い,シミュレーションした結果からその有効性も検証されている。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進計画としては,平成23年度の研究成果を統合し,より精緻なシステムを構築していきたい。 そのための課題として,本研究で提案している経営資源の多様さが付加価値を創出するという仮定に対する論拠を与え,かつその多様な経営資源をいかに融合させることで付加価値が創出できるのかといったビジネスモデルについても明らかにしていく。その過程で体系化された資源と資源の連携構造を「経営資源マップ」として構築することを考える。このマップは物理的な立地に縛られない意思決定ツールとして活用可能なものとして提示され,その性質を明らかにしていく。具体的には,1)平成23年度に整理した分散型産業集積の先進事例において,実際には選択されなかった候補地域も含めた生産拠点立地の有する経営資源を詳細に分析し,経営資源の全体集合を作成する,2)作成した経営資源集合の要素を定量的な資源と定性的な資源に分割し,各々を最小単位にまで分解,3)分解した各経営資源要素間の依存関係や相互作用関係を整理し全体を経営資源ネットワークとしてのマップとして表現,4)この経営資源マップを有効に利用可能とするように次世代型生産ネットワーク構造の導出システムをさらに高度化する。 これらの研究成果が得られるごとに国内外の学会にて研究発表を行い,多くの評価・意見を取り込むことでより成果を高めていく。さらにまとまった研究成果については学術論文としてまとめ,権威ある学術雑誌や国際学会において公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はフィールドワークを主とする社会科学的アプローチと,モデリングおよびシミュレーション技術を駆使する計算論的アプローチを組み合わせた文理融合型の研究手法をとっている。そのため,フィールドワークにおいては,さらに先進的な国内外の事例を調査するための旅費・宿泊費として一定金額を使用したい。 一方,計算論的アプローチにおいては,平成23年度は構築済みのプロトタイプシステムを実験的に稼働させ,シミュレーションを実施してきたが,システムの本稼働に向けてより処理能力の高い計算機上にシステムを移植する必要がある。そのため主要設備備品である「生産ネットワーク構造検証・設計システム構築用ワークステーション」に研究費を使用予定である。 これまでに得られた研究成果については適宜,学会発表を実施していく予定であるため,申請者らの旅費・宿泊費としても使用されていただきたいと考えている。さらに文献資料図書の購入および論文投稿料についても研究の進行および公表に必要なものであると考える。
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