2011 Fiscal Year Research-status Report
真の買収プレミアムの測定と決定要因―本源価値およびモメンタムからのアプローチ―
Project/Area Number |
23530442
|
Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
文堂 弘之 常磐大学, 国際学部, 准教授 (30337290)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 買収プレミアム / 残余利益モデル |
Research Abstract |
今年度は、真の買収プレミアムの算定のもとになる対象企業の理論株価の推定モデルを精緻化するための文献研究を行った。とくに、本事業では日本企業における真の買収プレミアムを計測することとしているため、日本企業を対象にした理論株価推定モデルの実証研究をサーベイし、推定モデルの構造とタイプおよび結果を整理した。その結果、まずDCF法に基づくモデル(以下、DCFモデル)と残余利益法に基づくモデル(以下、残余利益モデル)の株価関連性を比較した多くの研究において、DCFモデルよりも残余利益モデルのほうが、推計された理論株価と実際株価との関連性が大きいとの結果で共通していることが明らかとなった(ただし、理論株価と実際株価との乖離はDCFモデルのほうが小さい)。残余利益モデルでも推計モデルは設計の仕方によって多様である。まず、実績値とアナリスト予測値との比較では、複数の研究において実績値よりもアナリスト予測値に基づくモデルのほうが株価関連性が高いという結果を示していた。なお、アナリスト予測値よりも経営者予測値のほうが高い株価関連性をもつとの結果を示す研究も存在した。また、予測利益の年数については、より長い期間の予測利益を反映させたモデルのほうが株価との相関が高いとの研究結果が示されていた。さらに、使用する残余利益について、アナリスト予想値に基づくモデルと線形情報ダイナミクスすなわち前年度の残余利益の持続率に基づくモデルとの比較については、どちらも株価説明力に大きな差はないという結果が示されていた。これらのサーベイ結果から、本事業においては、複数年の予測利益を用い、経営者およびアナリストによる予測利益に使用した残余利益モデルに基づく推計モデルを中心において理論株価を推定する必要があることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の計画は、第1段階として、1年間をかけて、買収プレミアム、本源的企業価値の測定、モメンタム測定といった本研究の分析方法に関わる先行研究(とくに最新研究)を網羅的に入手し、新たにモデルに加えるべき観察指標がないか、現在想定している分析方法や指標のとり方に修正を加える必要がないかを整理・検討することであった。とくに、本源的企業価値の測定方法については、ファイナンスにおける重要テーマの一つであり、近年様々な視点からの研究が報告されている。加えて、本源的価値の測定方法によって本研究の結果は大きな影響を受けるため、先行研究で用いられてきた従来の測定方法についても慎重に検討を加えながら、申請時点から本事業の1年目の終了時点までに報告された最新研究の取り組みや成果を適宜盛り込み、本源的企業価値の測定方法を確定することであった。実際に、本源的企業価値の評価手法として最も有力といえる残余利益モデルを用いて、日本企業の理論価値と株価との関連性について実証分析を行ったほぼすべての先行研究の方法と成果を整理することができた。まだ一部にさらなる検討が必要な部分もあるが、今年度の事業は、おおむね計画通りに進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目の作業としては、計画通りに、データセットの作成を行う。そのための準備として、1年目の先行研究の整理を踏まえて、本研究における分析モデルを詳細に構築する。ただし、その際、単一のモデルではなく、いくつかの複数のモデルを採用する。この作業と同時に、分析対象となる我が国の2000年から2010年までに実施されたTOB案件のリストを作成していく。その後、分析指標作成に必要なデータ(ターゲット企業株価、TOPIX、TOB情報(オファ価格、日付等、提供株数等)、ターゲット企業の財務数値(実現値、経営者予想値およびアナリスト予想値)、無リスク資産利子率(10年物国債利回り)、業種別株価収益率、小型株および大型株株価収益率)を入手する。データは、レコフ「MARRデータベース」および日経NEEDS、東洋経済新報社のデータサービスを利用する。買収プレミアム・データセットとして、PREMi,PREMaのデータセットを作成する。さらに、モメンタム比率MR,株価上昇率CAR、持株提供率TR、各制御変数のデータセットを作成する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目の主な作業は、データセットの作成であるため、上記のような分析に必要な各種データを購入する必要がある。また、最新の研究成果を入手するために、文献の購入および学会への参加に必要な支出を計画している。さらに、分析作業に伴って必要となる物品の購入などの支出も想定している。・物品費 図書等の購入費用・旅費 学会参加等の出張費用・その他 データセット作成のためのデータ等の購入費用(ただしデータ販売の形状によってCD-ROM等図書(物品)扱いになることもありうる)
|