2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530443
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
幸田 達郎 文教大学, 人間科学部, 准教授 (30468368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹沢 安治 中央大学, 総合政策学部, 教授 (00146953)
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Keywords | 協力 / 擦り合わせ / 成果主義 / 新制度派経済学 / 取引費用 / 経営組織 / 組織行動 / 女性の活用 |
Research Abstract |
本年度までに以下の成果が得られた。 まず、擦り合わせの基本となる“協力”をもたらす日本企業における制度的要因を質問紙調査により解明した。 実務への貢献として、日本企業に広く導入されている成果主義的制度の“賃金・処遇制度としての側面”そのものが、企業が競争力の源泉となる協力的な風土を再構築するための障害にはならず“目標統合の仕組としての側面”が、協力を促進する方向に働くことが明らかになった。目標統合をうまく行うことで、上司と部下の間でだけではなく、企業間の協力や擦り合わせを促進することができる可能性が明らかになった。 また、理論への貢献として、新制度派経済学が前提としている取引費用の削減が、集団を構成する個人個人のレベルで行われ得ることが明らかになった。個人行動、組織行動、企業行動を同一の説明枠組で記述する可能性を拡げることができたことは、研究成果として大きい。 公表した成果は、『神南地区に於ける異質な人材の投入による職場風土の変質(2012)』湘南フォーラム16、『「成果主義」の2つの側面と上司・部下間の協力 ―成果主義の影響に関する実証研究―(2013)』人間科学研究34、『協力と制度的環境 ―協力と成果主義の分析から―(2013)』生活科学研究35として発表しており、その派生的研究成果を本年6~7月の『Measures Taken by Major Japanese Corporations at Their Tokyo Headquarters to Cope with the Great East Japan Earthquake Disaster』2013 World Congress of Social Psychiatry(Lisboa, Portuguese Republic)にて発表の予定である。これらすべてに、科研費による研究であることを明記している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、母集団624,061件からサンプリングされた1,400件に対し、web調査を行うことができた。このような調査を行うことができたことは科研費による支援を頂いたことによる大きな成果であった。 全体の研究目的は『日本企業のものづくりの強みとされる企業間の「擦り合わせ能力」の詳細を究明する』というものであり①擦り合わせが有効に行われる際の現場における詳細な条件【研究目的1】、②担当当事者に必要とされる人的要件【研究目的2】、③育児経験者の職場復帰による人的資源の有効活用【研究目的3】、の3つを調査し、それらを統合することによって産業再活性化に資する情報の整理・提供を行う、というものであった。 このうち、研究目的1については、期待以上の成果で終了することができた。具体的には、実務上の貢献として、日本企業に広く導入されている成果主義的制度に関して、成果主義の“目標統合の仕組としての側面”が“協力”に対して強い正の影響を及ぼすことが明らかになった。成果主義の目標共有の仕組としての側面を取り出して利用することで、企業目的達成に向けた組織活動を推進することができる可能性があり、上司と部下の間でだけではなく、目標統合をうまく行うことで、企業間の協力や擦り合わせを促進することができる可能性がある。従来の研究にはみられなかった発見であり貢献であったと考えられる。 また、理論への貢献として、新制度派経済学が前提としているコストの削減、主に取引費用の削減により、個人行動、組織行動、企業行動を同一の説明枠組で記述できる可能性が拡がったことが本研究の理論的貢献として大きい。 研究目的2、3に関してはその分、進捗が遅れており、特に、申請時に内諾を得ていた人材派遣企業からの全面協力が得られなくなったことは、研究上の痛手であった。その分、研究の主軸が擦り合わせの条件に重点が大きくかけられることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
全体の研究目的としての『日本企業のものづくりの強みとされる企業間の「擦り合わせ能力」の詳細を究明する』のうち、①擦り合わせが有効に行われる際の現場における詳細な条件【研究目的1】については期待以上の結果を得ることができ、さらに深耕する予定である。 現段階で、実務上の貢献のみならず、理論的にも、人的資源管理と企業境界の決定という一見したところ関係性の薄い領域において、新制度派経済学、特に取引費用の経済学における「特殊な資産への投資」という分析用具を用いて独自の知見を見出すことができた。上司・部下や企業間の協力者相互の関係を一種の取引であると考え、実務上、数多くの場面で見られるそれらの「容易に取りやめることができない継続関係」に焦点を当てることによって、この状況下で目標統合の仕組としての成果主義的制度が強まる場合には、取引費用を下げるために協力関係が発達するという現象を見いだすことができた。この発見により、新制度派経済学が前提としているコストの削減、主に取引費用の削減により個人行動、組織行動、企業行動を同一の説明枠組で記述できる可能性が拡がったことが本研究の理論的貢献として大きい。 一方、②担当当事者に必要とされる人的要件【研究目的2】、③育児経験者の職場復帰による人的資源の有効活用【研究目的3】、の3つを調査し、それらを統合することによって産業再活性化に資する情報の整理・提供を行う、というサブ目的については、その分、研究期間内における調査内容の主力を縮小することになる。 残りの1年間でこの②と③をインタビューおよび質問紙調査で実施する。特にインタビュー調査については縮小することになり、それをwebによる質問紙調査で補うことになる。さらに、期待以上の研究成果が得られた①についてさらに深耕し、日本企業特有の競争力の源泉としての企業内・企業間の擦り合わせについて実証を重ねていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
女性活用に関する質問紙調査(web調査) 60万円 女性活用に関するアンケート調査(謝礼として手土産(お菓子)) 10万円 業務擦り合わせに関する質問紙調査(web調査) 50万円 学会発表旅費(含海外) 2013 World Congress of Social Psychiatry(Lisboa, Portuguese Republic)における発表確定 40万円 インタビュー文字起し及び翻訳 20万円 および印刷代 2万6千円
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Research Products
(4 results)