2011 Fiscal Year Research-status Report
製造企業の品質競争力と企業内コミュニケーションの関係が解析可能なモデルの開発研究
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23530444
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
海老根 敦子 駿河台大学, 経済学部, 教授 (30341754)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 品質競争力 / 企業内コミュニケーション / 品質経営 / 品質創造モデル / 中小製造企業 / IFM(相互作用する場のモデル) / 実態調査 / ダイナミクス |
Research Abstract |
平成23年度の研究実績は次の通りである。1.調査対象企業の選定と予備調査:平成23年度の調査対象企業として,先行研究で3年間継続して協力を得た地元の中・小規模製造企業の内から9社を選定した。先行研究において平成21年度及び平成22年度に実施した実態調査(総数11社,180名)をまとめ,平成22年度末に作成した『調査報告書 企業内コミュニケーションと品質力に関するアンケート』を,調査対象企業各社を訪問して配布し,調査結果を報告し,調査内容に対する意見を聴取し,経営状態の変化や製品・生産技術対応への変化,生産現場が抱えている課題などの概要を把握した。2.研究環境整備と解析技術習得:パソコン・システムと統計解析ソフトウェアを調達し,調査結果解析のための環境整備を実施した。統計解析手法のセミナーを受講し,調査結果の解析に不可欠な解析技術を習得した。3.今回得られた知見:調査対象企業への(1)先行研究で実施した企業組織内コミュニケーションのミクロな構造に注目した実態調査のデータ解析結果と(2)今回の予備調査の結果から,次の知見を得た。(1)組織内コミュニケーションの状態は,コミュニケーションの積極性と活発性という2つの状態変数で表現できる。(2)企業の組織内コミュニケーション状態の特性を変位ベクトルという表現法で把握できる。(3)変位ベクトルを用いて品質管理活動や業務改革の状態と企業内コミュニケーションの状態との関係を論じることができる。(4)コミュニケーションのモデル構築には,時間軸の導入が不可欠である。4.研究成果の公表:オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会第3回全国研究発表大会で「IFM(相互作用する場のモデル)を用いた中小製造企業のコミュニケーション状態の研究」を論文集に執筆し,口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の常として,個々の項目は必ずしも当初の想定とは一致しないが,全体的に見て,研究は概ね順調に進行している。本研究の目的は,製造企業の品質創造経営に有用なコミュニケーション論的手法を開発することである。先行研究では地元中・小規模製造企業に対する実態調査を実施して,調査対象企業との信頼関係を構築する糸口を見出すとともに,面接調査を通じて本研究の狙いが的外れではないという確信を得た。本研究は,その成果を引き継いで,調査内容の具体化と精密化に努めるとともに理論を整備し,コミュニケーションに関する実用的なモデルを開発することである。当初は先行研究の調査をそのまま発展させて,更に精密な調査を行う予定であったが,調査結果を検討するうちに,調査対象の選定からデータ解析の理論構築に至るまで,更に首尾一貫した戦略が必要であることに気付き,研究遂行の抜本的な見直しを迫られることになった。その成果が前述の成果発表に反映されている。すなわち,先行研究の調査データを再度見直し,先行研究とは異なる角度からデータを解析し直して,有意義な可能性を見出すことに成功した。今後はこの方向でも調査研究を推進する。同時に,理論整備の根幹であるIFM(相互作用する場のモデル)に関して,コミュニケーションのモデルには時間軸の導入が不可欠であるという確信を得た。いかなる調査対象も,時間軸と空間軸が共存する時空の中で捉えなければ,ダイナミックな記述は不可能で,その結果,現実的で実用的な成果は得られない。また,有限の時間と人で調査を実施せざるを得ない以上,時間的な長さにも,同時に収集可能なデータの量にも限界があるために,データの精度には時間的な限界と空間的な限界が共に存在しているという,いわゆる不確定性関係が存在することにも気付いた。よって,研究は概ね順調に進捗しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究実施推進方策は次の通りである。 前年度の成果を点検し,前年度調査の補充,精密化のために次の項目を実施する。〔手順1:調査対象企業の選定〕当該年度の調査対象企業として,先行研究ならびに前年度協力を得た地元の中・小規模製造企業の内から数社選定する。製造企業側が,本調査研究への協力により得られる調査成果のフィードバックに対して特に関心をもち,自社に対する有益な知見をもたらすものと判断しているか否かを,選定の基準とする。〔手順2:調査方法の見直し〕調査対象企業の特性を考慮し,前年度の調査方法と内容を見直し,改良する。〔手順3:本調査の実施〕調査対象企業を訪問し,手順2の調査方法にしたがい,生産現場の観察と面接調査とアンケート調査を実施する。〔手順4:調査結果の解析とモデル開発〕手順3の本調査の結果整理および解析とモデル開発の目的と手段は前年度と同様である。理論を一層整備し,モデルの精密化を図る。〔手順5:調査結果のフィードバック〕手順4の調査結果の解析を調査対象企業にフィードバックする。〔手順6:中間報告の公表〕手順4の解析結果の研究成果を学会発表等で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画は次の通りである。物品費:120,000円(資料・図書購入費,消耗品購入費等)旅費:380,000円(国際会議参加交通費,国際会議参加宿泊費,調査交通費等)人件費・謝金:140,000円(資料整理謝金等)その他:60,000円(印刷費,郵送・通信費等)
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Research Products
(2 results)