2012 Fiscal Year Research-status Report
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23530452
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
加藤 敦 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (00329963)
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Keywords | 国際情報交換 インド、ベトナム / ソフトウェア分業生産 / オフショア開発 / 地域ソフトウェア会社 / グローカル経営 / モンテカルロ・シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は地域ソフトウェア会社のグローカル経営について2つの課題に分けて取り組んできた。 第1に「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」についての研究実績は次の通りである。(1)文献調査・海外現地調査:インドでの研究発表にあわせた研究情報の収集に努める一方、研究協力者吉田勝彦氏に委託し、共同研究の追加調査のためベトナム現地調査を行った。(財)商工総合研究所より研究助成を受け、中国大連市にて現地調査を行った。(2)事例研究並びにリアルオプション定式化と定量評価:先行研究を踏まえ定式化に努めている。(3)研究成果の公表:インドでの国際会議CUBE2012において先進国における国内オフショアの成立要件並びに沖縄県の先進事例について口頭発表を行った。吉田勝彦氏と共同でベトナムにおける対日オフショア人材の蓄積過程等について日本工業経営学会にて口頭発表を行った。さらに日中間オフショアをめぐる環境変化並びに橋頭保としての大連市「日系ITコミュニティ」の重要性について日本学術振興会産業構造・中小企業第1118委員会にて口頭発表を行った。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については、文献収集、先行研究調査を進める一方、2つのプロジェクトに参画し、これまでの研究成果にもとづき、ソフトウェア会社の新たな役割について、専門家と情報交換を進め、実践的な問題提起に努めた。まず沖縄県の新事業・雇用創出プロジェクトを推進する(社)IIOTの技術委員として、クラウド、IOT(Internet of Things)、相互運用性などのキーワードにもとづきテスト事業の可能性を検討した。さらに松島桂樹武蔵大教授を中心とした「IT投資マネジメント」出版チームの一員として、クラウドなど新たな基盤技術の在り方をBCP(事業継続計画)という文脈で考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」について文献調査、海外現地調査、事例研究については概ね予定通りである。まず中国及びベトナムとの連携に関して理論的に検討する一方、中国大連市への現地調査、研究協力者によるベトナム現地追加調査を実施した。この中で為替変動並びに日中関係変化の下、橋頭保としての大連市「日系ITコミュニティ」の重要性が増していること、ベトナムにおける対日オフショア人材の蓄積過程などを明らかにした。またインド・プネ市で開催されたCUBE2012において口頭発表を行うとともに、現地IT企業へのインタビュー、専門家との意見交換を行った。一方で、日本国内の地域ソフトウェア会社の調査は沖縄県、鳥取県を除いて進んでいない。従って当該課題の計画に対する進捗率は90%と評価する。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については研究計画に沿って、調査研究を進めた。また沖縄県の新事業・雇用創出プロジェクトを推進する(社)IIOTへの技術委員として参画し、さらに『IT投資マネジメントの変革』出版チームへ加えてもらう等、新技術基盤下でのソフトウェア会社の機会と脅威に関して、文献調査を補完し専門家と定期的に情報交流を進める機会を得た。こうした活動を通じ、理論的な枠組みの明確化に努めたことから、今までの研究成果の公表とあわせ、当該課題の進捗率は110%と評価する。 なお当初計画した専門委員会は設けなかったが、上述活動並びに所属するITコーディネータ研究会の場を通じ、研究進捗の都度、専門家との定期的な意見交換の場を持つことができたためである。 以上から、全体として進捗率は概ね100%と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」に関して(1)理論的研究、(2)地域ソフトウェア会社並びに地域の事例研究、(3)大連市「日系ITコミュニティ」の調査を行う。まず理論的研究では投入要素価格、取引費用、人的資産などの視座から、その地域が目指すべきグローカル経営の在り方、課題並びに活路について検討する。次にグローカル経営という見地に立ち、先進的な地域企業、わが国に営業・生産基盤を設ける海外企業について事例研究を行う。さらに厳しい日中関係の下、橋頭保的役割が期待される大連市「日系ITコミュニティ」について研究する。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については(1)理論的研究、(2)基盤技術変化の下での関西中小ソフトウェア会社の取り組みに関する事例研究、(3)沖縄県の先進事例の研究、(4)海外におけるクラウド型プラットフォーム上の我が国企業の進出事例、について研究する。まず理論研究では、クラウド、IOT、モバイルデバイス普及などの技術環境変化が中小ソフトウェア会社にいかなる脅威と機会を与えるか、大都市圏か非大都市圏か、エンタプライズ系か組込系か、など幾つかの類型に分け考察する。次に関西中小ソフトウェア会社の取り組みに関する事例研究を行う。一方、沖縄県が取り組むテスト事業の創造に積極的に関与し、本研究の成果還元に努める。さらにインド、中国、ベトナムなどを継続的に調査し、クラウド型プラットフォームにおける我が国企業の進出の可能性について検討する。 第3にリアルオプションモデルの定式化と定量評価に努める。様々なグローカル経営の類型の定式化を試み、投入要素や立地環境に関わる外生リスクの下で、機会利益を追求できる経営戦略について検討する。 第4に研究成果公表に努め、国内外の専門家との情報交換を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第1に研究課題「中国やベトナムなどオフショア開発先との競合・補完・連携」に関して(1)理論的研究に伴う文献調査費、(2)地域ソフトウェア会社並びに地域の事例研究に伴う文献調査費、国内出張旅費、その他経費、(3)大連市「日系ITコミュニティ」の調査に伴う文献調査費、海外出張旅費、その他経費を計上する。中国への海外出張旅費は原計画では計上していなかったが、当初予想できなかった為替変動並びに日中関係変化の下、橋頭保としての大連市「日系ITコミュニティ」の重要性が増しているからである。 第2に研究課題「クラウドなど新たな基盤技術下での地域ニーズ対応と新市場進出」については(1)理論的研究に伴う文献調査費、(2)関西中小ソフトウェア会社の事例研究に伴う文献調査費、国内出張旅費、その他経費、(3)ベトナムなど海外におけるクラウド型プラットフォーム上の我が国企業の進出事例調査のための文献調査費を計上する。関西中小ソフトウェア会社の事例研究を加えたのは、クラウド、IOTの影響を受ける企業が少なくないと考えられるからである。なお沖縄県の先進事例研究に関しては、今年度も引き続きIIOT技術委員を拝命する予定で、国内出張旅費は原則として不要であるが、自主調査のための追加出張旅費は必要になる。 第3にリアルオプションモデルの定式化と定量評価に関しては、文献調査費並びに経費が生じる。 第4に研究成果公表に関して、国内外の学会発表を計画している。またWEBサーバーを通じて情報発信のため経費が生じる。なお当初予定した専門家委員会に関しては、IIOT技術委員としての活動を考慮し、今回は計上しない。
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Research Products
(8 results)