2011 Fiscal Year Research-status Report
地域再生プロジェクトの本格的スタートを促進するための調査研究
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23530458
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
寺石 雅英 大妻女子大学, キャリア教育センター, 教授 (20217409)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地域再生 / 街づくり / 地域活性化 |
Research Abstract |
(1)全国各地で行われてきた地域再生プロジェクトへの聞き取り調査ならびに資料調査によって、地域再生プロジェクトがどのような経緯をたどっていかなる段階まで到達したのかを把握することで、大部分のプロジェクトが、検討・計画段階までは順調に進行したものの、実行段階にまで至らずそこで立ち往生したり、実行段階に移行しても本格的な実行段階に入る前の助走期間のうちにプロジェクトが自然消滅してしまっていることを明らかにした。(2)本研究プロジェクトでは、地域再生プロジェクトに立ちはだかる障害を地域再生版"The Valley of Death"と名付けたが、この"The Valley of Death"がどのような要因によって生み出されるのかを、同じく全国各地への聞き取り調査ならびに資料調査によって明らかにした。当初より、(1)地域再生プレーヤーのモティベーション欠如、(2)活動の一体性・組織性の欠如、(3)理詰めの計画によって最善の道を追求する思考、(4)官の主導や官への依存を期待する思考、(5)地域外からの影響力を極力排除しようとする思考、の5つの要因が主要因となっているのではないかとの仮説を立てていたが、今回の調査によって、その仮説がほぼ間違いのないことが検証された。また同時に、それぞれがどのようなメカニズムで地域再生版"The Valley of Death"を導くのかについても分析した。(3)上記の要因やメカニズムを克服するためには、どのような条件を備えた仕組みが必要となるのかを検討し、(a)リスクとリターンの共有を実現させる仕組み、(b)数打ちゃ当たる型思考を実現する仕組み、(c)民間のリスク資本を大量に調達できる仕組み、(d)地域再生プロジェクトを一元的にコントロールできる仕組みなどが有効に性を発揮する可能性が高いとの考察結果に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請時に予定した (1)地域再生版"The Valley of Death"の存在の確認 (2)地域再生版"The Valley of Death"を生み出す要因やメカニズムの明確化 (3)地域再生版"The Valley of Death"を克服するための条件の検討という研究プロセスが、年度内にほぼ計画通りに進行し、かつ当初構築した仮説がほぼ検証されていることから、「おおむね順調に進展している」との評価に至った。 すでに懇談会において、本研究の意義の1つとも言える、「地域再生プロジェクトに関わるあらゆる人々がこれまで信じて疑わなかった思考方法を否定し(厳密にはそれらの優先順位を低下させ)、彼らに大きな思考転換を余儀なくさせる」という目標には到達しつつある。地域再生プロジェクトを成功させるためにまず真剣に考えるべきことは、「いかにしたら成功させることができるか?」ではなく、「いかにしたら本格的にスタートさせることができるか?」であることが明確となったからである。全国の地域再生プロジェクトは、まずは本格的なスタートラインに立ってこそ初めて、従来からの「いかにしたら成功させることができるか?」という観点からの研究や議論の成果が意味を持ってくるのである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成23年度に検討した地域再生版"The Valley of Death"を克服するための条件を満たす仕組みを構築・提案することを目指していく。おそらくそこでは、地域再生持株会社方式を効果的に活用することがポイントとなってくると思われが、そのために重要となるのが、欧米諸国で採用されているさまざまなエクイティ型の地域再生スキームや地域再生ファンドに関する調査・研究である。 また、地域再生持株会社の導入を円滑に進めるためには、最初から広範囲の地域再生プレーヤーの出資を仰ぐのではなく、まずは設立準備会社を創設するところからスタートして、段階的に株主の範囲を拡大させていく必要があるが、こうした一連のプロセスや地域内の地域再生に対するマインドを持ち上げていくペースと新株発行のタイミングを巧みに調和させていく資本政策をデザインするためには、ベンチャーファイナンスの一連のプロセスを参考する予定である。 以上のようなエクイティ・スキームの導入に際して生ずる拒否反応や地域内でのコンフリクトを抽出するとともに、それぞれに対していかに対応していくのが望ましいのかについては、前橋市、伊勢崎市、長野原町等での実践的活動が大いに参考になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは、本年度予定していた地域再生プロジェクトの実地調査と収集した文献資料の整理の一部を次年度に回したため、その分旅費や謝金の支出が当初の計画よりも少なかったことによるものである。 次年度の研究は、本年度からずれ込むことになる上記の作業に加え、海外事例やベンチャーファイナンスを参考としたスキーム設計、ならびに地域再生の現場でのフィールドワークに時間が費やされることから、次年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画は、以下の通り、主に欧米のエクイティ型スキームやベンチャーファイナンスに関する文献資料、調査旅費、調査補助・資料整理等に関する謝金、などによって構成されることとなる。(1)物品費 950,000円(欧米のエクイティ・スキームに関する文献資料、ベンチャーファイナンスに関する文献資料)(2)旅費 350,000円(平成24年度)(前橋市・伊勢崎市・長野原町等への聞き取り調査)(3)謝金 1,100,000円(調査補助・資料整理)(4)その他 593,000円(印刷費・製本費・郵送費)
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