2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530463
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 武稔 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (80293398)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 知識創造 / システム方法論 / コミュニケーションメディア / 暗黙知 |
Research Abstract |
ナレッジマネジメントに関連する文献調査を実施し、それらで議論されている暗黙知の役割について精査した。その上で、そのような暗黙知に対し、本研究の独自の観点として、暗黙的認識、脳機能としてのパターン認識、宣言的記憶および手続き的記憶、そしてメンタルモデルの概念を比較しながら考察し、組織的知識創造プロセスにおけるそれぞれの役割を明確にした。例えば、パターン認識の視点からの宣言的記憶と手続き的記憶の相互関係に関する考え方は暗黙的認識という哲学的考察を科学的に支持していることを示した。SECIモデルで定義されている暗黙知のひとつとしてのメンタルモデルは、言葉で説明可能であり、この暗黙知が形式知へと変換される。そのようなメンタルモデルの創発は暗黙的認識により説明可能であり、この暗黙的認識の能力、すなわちパターン記憶は、経験的に強化される。さらに、そのようなメンタルモデルの創発は、プロジェクトメンバー間のコミュニケーションの連鎖として考察可能であることを示した。そして、N.Luhmannが提唱した社会システム論の観点から、コミュニケーションの連鎖を持続させるメディアとしてシステム方法論を位置づけることを提案した。以上のことを踏まえて、システム方法論のひとつであるソフトシステム方法論を組織的知識創造の観点から理論的に再構築した。これらの成果を、University of Hull(英国)のビジネススクールの研究者らに提示し、意見交換した。また、本研究成果の一部についてはUniversity of Maltaの認知科学系の研究者らに提示し、意見交換した。一方、実践的観点から、Von Hippelにより提案された情報の粘着性という観点から、歴史観光開発に関する事例を用いて、歴史研究者から観光ツアー開発者への情報移転について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織的知識創造プロセスにおける暗黙知について吟味し、暗黙知の認知的側面(メンタルモデル)の質を向上するための技術的側面に注目し、そのような技術的側面(暗黙的認識力)をどのように強化・育成するのかという視点の正当性について考察した。そして、そのような能力の育成に関する議論を人の性質から切り離して議論できるように、ニクラス・ルーマンが提唱した社会システム論を導入した。このような考察に基づき、平成23年度に計画していたシステム方法論及びその教育・訓練と実践法のプロトタイプの開発を終えた。さらに、社会システム論の立場から、システム方法論が社会システム論で示されているコミュニケーションメディアの役割を果たすという仮説を導出した。このように、本研究は研究計画に示す通り、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に理論的に再構築したシステム方法論及びその教育・訓練・実践法を、まずはひとつの組織で5名程度が参加する複数のプロジェクトを立ち上げ、そこでの実践により本アプローチの問題点及びユーザの熟達度を、メンバーへのアンケート及びインタビューにより確認しながら、精錬していく。次に、地元企業において提案している地域振興を目標として、システム方法論を試行する。これらの試行の結果を国内外の研究協力者らと議論を重ねながら、成果をまとめていく。そしてその成果は国内外の学会等で積極的に発表するとともに、ホームページ等を利用して、広く社会に公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度からの繰り越し金が発生した。これは、研究計画で研究交流のための英国出張費を計上していたが、実際には英国出張に引き続き、別用務でマルタ大学へ立ち寄り、復路の旅費を別予算から支払ったために発生したものである。平成24年度には、初年度に構築したシステム方法論の適用プロジェクトにおけるコーディネーションと観察研究のための研究者支援雇用費240千円、ナレッジマネジメントに関する専門的知識の提供に50千円、主に国際学会での研究成果発表のための学会参加費及び会議費として50千円、2件の外国出張旅費(1件は研究成果の学会発表、1件は英国ハル大学の研究者との本研究課題に関する研究交流)として900千円、残りを国内学会での研究成果発表のための出張及び国内での研究者との研究交流のための国内出張旅費として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)