2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530463
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 武稔 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (80293398)
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Keywords | ナレッジマネジメト / システム方法論 / 暗黙知 / 長期記憶 |
Research Abstract |
M.Polanyiは、著書「暗黙知の次元」の中で、創造力と認識力に関わる機能構造をそれぞれ「機能的構造」と「現象的構造」と呼んだ。平成25年度の研究では、長期記憶に関する文献調査から、これら2つの構造をそれぞれ「前頭葉」と「海馬」に対応させ、この対応を前提として、いかに創造力と認識力を育成できるのかについて考察した。 ヒトの前頭葉の機能はおよそ20歳頃に完成し、成長がとまる。よって創造力を伸ばすためにできることは、長期記憶である陳述記憶と非陳述記憶(特に手続き記憶)を増やすことである。外部からの情報はすべて海馬を経由する。「やる気」が、長期記憶獲得の鍵である海馬内の長期増強という現象を励起し、同時に長期記憶の保存場所と考えられる側頭葉のシナプス可塑性を強める。外部からの刺激により増加可能な海馬内の顆粒細胞も長期記憶獲得の鍵である。このような現象により長期記憶獲得が促進されると言われている。 本研究では、以上のことを前提とし、従来の暗黙知と呼ばれ、その考察が困難であったものが、脳科学の長期記憶のメカニズムで説明可能であるという結論に至った。すると、そのような長期記憶(特に手続き記憶)を獲得するためには、豊かな経験の繰り返しが有効であるという説明ができる。このためのひとつの手段は、「やる気(リーダーシップと内発的動機付けに関係)」を持って、問題領域の熟達者と問題解決に向けて共働を繰り返すことである。このことにより、組織的な知識創造を伴う問題解決に関する豊かな経験が期待できる。さらにシステム方法論を利用することにより、問題解決に向けた試行錯誤ではない規則性のある共働の繰り返しを経験できる。このようにして長期記憶を獲得するということが、組織成員らの創造力と認識力を育成するということであり、そのような実践における活動と育成が組織的な知識創造の源泉であるという結論を得た。
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