2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530467
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曳野 孝 京都大学, 経営学研究科, 准教授 (50301825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
チョルパン アスリ 京都大学, 白眉センター, 准教授 (70511286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | ビジネス・グループ / 経営戦略 / 経営組織 / 国際経営 / 発展途上経済 |
Research Abstract |
本年度は、健康上の理由によって、予定した研究内容のうちのかなりの部分、特にフィールドワークを中心とする研究が実施困難となり、結果的には過年度の研究成果を理論的に整理して、特に国際学会、研究会における研究発表に専念することになった。その理論的な概要は以下のように要約できる。 ビジネス・グループは、従来の研究によれば、開発途上市場においてのみ、企業の競争力の向上に積極的な役割を果たし、当該国の長期の経済成長に多大な貢献をしてきたとされている。このビジネス・グループ、特に巨大なグループは非関連多角化を製品戦略として追求し、持株会社と子会社という組織構造を維持してきた。この戦略と組織との特徴に関して、過去のビジネス・グループに関する研究が、経済環境の非競争的側面をその重要性の主要因と見なしてきたのとは異なり、本研究は企業内に蓄積された競争資源とその資源を動的に活用する能力に注目して、それらの要素がビジネス・グループを当該国の国内市場だけではなく、国際市場においても競争可能な経済主体に引き上げたことを議論した。 近年頻繁に議論される開発途上経済に本社を持つ多国籍企業の多くが、ビジネス・グループの事業子会社であることは、この新しい視覚から整合的に理解することが可能になる。この競争資源あるいは能力は、成熟工業経済における大企業が保有する製品に固有のものとは異なり、個別製品を越えた、より機能的な要素、例えば金融・財務、人的資源、マーケティングに関係するものであり、とりわけ組織マネジメントといった企業組織の統合的要素に関連するものであった。したがって、個別のビジネス・グループがどのレベルの国内、国際競争力を実現、維持出来るかは、持ち株会社形態をとる本社機構が、個別の事業にどのレベルの投資を行うかという資源配分だけでなく、それらの事業会社をどのように統合するかが重要であることが理解された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当科研費の実施初年度において、内臓疾患による手術を受けたことに起因して、予定したフィールドワークをほぼ全て断念せざるを得なかったことは、本研究の進行にとって大きな障害となった。特に当該年度においてスケデュールしていた個別のビジネス・グループへのインタビュー調査が、研究協力者による補助調査を含めて、全面的に不可能となったことは、この研究の実証的側面を充実させるという重要な課題にとって残念な事態となった。 しかし、この身体的制約の理由から、初年度の研究をほぼ全面的に文献研究に専念せざるを得なくなったことは、「研究実績の概要」の項で要約したように、理論的な研究の進展という側面においては、かえってプラスの効果を得ることになった。すなわち、一旦現実の企業から距離を置いて、過去の文献を選択、精査、批判するという作業を通じて、これまでの研究が成し遂げた成果を評価できる時間的な機会が与えられたというだけでなく、同時にそれらの研究が見落としていた大きな課題が明らかにできた。「研究実績の概要」の項で強調したビジネス・グループ内部の競争資源についての議論が不足しているという問題である。近年の企業競争力に関する研究が、かつてのポーター流の外部環境重視ではなく、内部資源に着目するという視覚の移動を考慮すると、この問題は重要視されるべきと思われる。 この新しい内部資源の視覚は、初年度の実証成果の不足を補って余りあると考える。第2年次およびそれ以降の年度について、実証研究、特に企業へのインタビュー調査において、質問項目の組み合わせを再考する機会を与えられただけでなく、研究全体の調査の再検討が可能になった点で、プラス効果をもたらした。さらに、3つの国際学会でその成果を報告できたことは大きな成果と考えられる。その意味で、予定された内容ではないかもしれないが、初年度の研究達成としてほぼ満足すべきと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」および「現在までの達成度」の項で既述したように、当科研費の実施初年度において、内臓疾患による手術を受けたことに起因して、実証、特にフィールドワークが大幅に遅れたことは重要であって、成果として要約した理論的なフレームワークを用いながら、実証面での不足を補っていきたい。 具体的には、初年度において不可能となった企業関係者へのインタビューを、研究協力者と分担をして、大幅に行う予定である。具体的には、5月中旬にトルコ最大のビジネス・グループであるコッチ・グループを含めて同国のグループ3社の社長あるいは戦略担当役員にアポイントメントを既に取ってあるのを初めとして、7月には南アフリカの現地調査に出向いて、異なる経済、経営環境のもとでのビジネス・グループの経営戦略と経営組織の実証研究を進めたい。その後についても研究代表者の体調に依存はするが、担当医師と相談をしながら、また研究協力者の都合をも考慮しながら、初年度における実証研究の遅れを回復していきたい。 さらに、その成果を広く公表する目的から、初年度と同様に国際学会においての発表の機会を確保しておきたい。現時点で、7月の南アフリカでの国際経済史学会での報告と2013年3月のポルトガルでの経済組織研究会での発表が予定されており、その両方において、研究代表者と研究協力者がそれぞれのセッションのテーマに関する基調報告をすることになっており、本研究が国際的にも高く評価されていることが理解できるだけでなく、それに相応しいレベルの研究を行う責務を自覚している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記に要約した研究の推進方策に従って、本年度は事実上初年度と本年度とを事実上合算するに近い予算執行を行うことになる。すなわち、当初は初年度に執行を予定していた特にフィールドワークに関する予算を今年度に活用すると同時に、本来今年度に配分していた予算を利用する計画である。とくに海外出張に関する旅費、研究補助に必要なRAの雇用のための人件費、謝金等の区分、内訳等については、基本的な変更は生じないが、個別項目の執行額が大幅に増額する場合があると考えられる。
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Research Products
(5 results)