2013 Fiscal Year Research-status Report
役員人事と戦略 戦後日本の低迷、暴走、独走企業の分析
Project/Area Number |
23530469
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
日野 恵美子 福山大学, 経済学部, 講師 (40550059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三品 和広 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (40283155)
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Keywords | 経営者 / 戦略暴走 / 役員人事 / 在任期間 / 社長 |
Research Abstract |
主たる成果物は研究代表者と研究分担者の共著論文「操業経営者の戦略暴走」である。前年度の実施状況報告書に記したように,暴走経営者に重点を置き,新たな切り口で研究を進めた。初年度には戦略暴走した創業経営者を分析対象とした論文(「創業経営者が戦略暴走するとき」)を執筆したが,当該年度は戦略暴走した操業経営者(いわゆるサラリーマン経営者)を分析対象とした。「創業経営者が戦略暴走するとき」においては「飴(株式所有)も鞭(役員による他律)も暴走の抑制力としてはさほど効果的ではない」ことが示唆されたため,「操業経営者の戦略暴走」では改めて自律の面に焦点を当てた。経営者自身の特性に着目し,いわゆる本命経営者と目されていた人たちでも戦略暴走するという事実が確かめられた。「本命中の本命に任せれば安心」とは言いがたく,現実の経営者育成や選抜のあり方に疑問を投げかけうる結果を得られた。 前年度に引き続き,経営者データベースの拡充にも取り組んだ。就任年月,退任年月といったごく基本的な事実であっても上場前の情報となると入手が難しいが,各種データベースや日本経済新聞の縮刷版からの情報収集によって,ある程度は補完できた。 在任期間の変遷に関する論文を改訂し,執筆がほぼ完了した状態である。日本の製造業600社以上を対象にしており,半世紀にわたる社長の在任期間の推移を詳細に分析した。企業の業績別の分析も含んでおり,在任期間の長さと戦略面での弊害についての議論へと発展する可能性のある研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に遅れが生じ,2年目以降は順調に進行にしているものの,初年度の遅れは取り戻せていない状況である。 初年度に遅れが生じた理由は次のとおりである。科学研究費助成事業の応募後に所属機関と居住地が変わることになった。それに伴い,謝金を支払ってデータ収集をする予定であったのが,旅費を使って前所属機関やその近隣の施設に自らデータを収集しに行かざるを得なくなった。研究員から教員に身分が変わり,研究への時間配分を減らさざるを得なかったことも加わり,応募時の想定よりも遅い進行となった。 また,暴走経営者の研究を重ねるうちに,当初の想定以上に多くの切り口があることが分かってきた。そのため,暴走経営者の研究を重点的に進めており,他のカテゴリの経営者の研究には遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
概要欄に記した在任期間の変遷に関する論文を完成させる。そのために若干のデータの追加が必要であり,それが最優先事項である。当該論文には業績別の分析も含まれるものの,因果関係の分析は着手しておらず,早急に取り組むべき課題である。そのために,業績に関するデータの収集が必要である。 本研究課題の申請以前に執筆した「経営者の自律性 役員人事の分析」(神戸大学学位論文,日野,2009)では,経営者を制御する役割を担いうる人材として専務以上の役員全員に着目したが,その後の観察や議論により,少数の特定の人材に的を絞ることを検討している。 研究分担者の戦略に関する研究成果をふまえて,暴走以外のカテゴリの経営者の研究に本格的に着手する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特に初年度に研究に遅れが生じ,2年目以降は順調に進行しているものの,初年度の遅れは取り戻せていない状況である。そのため,延長を申請し承認された。 初年度に遅れが生じた理由は次のとおりである。科学研究費助成事業への応募後に所属機関と居住地が変わった。応募当時はデータ収集を前所属機関の大学院生に依頼する予定であったが,依頼や監督をすることが難しくなり,基本的には代表者自身がすべてのデータを収集する計画に切り替えざるを得なかった。それによって,当初予定よりも長い期間を要することとなった。また,身分が研究員から教員に変わったことにより,特に初年度に遅れが生じた。 論文の投稿料と,データ補充のための旅費または図書費に使用する。データは主に有価証券報告書と社史から収集するが,所属機関の近隣では入手できないものが大半で,旅費を要する。
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