2011 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国における連携に基づく多国籍企業の市場展開モデルの構築
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23530475
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
星野 裕志 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60273752)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 実地調査 / 関係者へのヒアリング |
Research Abstract |
本研究は、開発途上国における連携に基づく多国籍企業の市場展開のあり方のモデルを構築し、有効なアプローチの方法を提言することにある。本来BOPをはじめとする開発途上国へのアプローチは、利益追求型、ソーシャル・ビジネス、援助などに大別されるが、これらの違いを明らかにした上で、本研究の目的とする企業と国際機関や援助組織との連携による市場展開のあり方を模索することを目的としている。 しかしながら、昨今国連ミレニアム目標や環境問題の高まりからか、社会的な課題の解決を目的としたソーシャル・ビジネスと利益追求型のBOPビジネスが混同して論じられており、企業の動向にも曖昧さが見られることから、まずこれの違いを明確にし、学会・研究会報告や論文で提言を行った。 また初年度は在外研究でニューヨークに滞在していたこともあり、開発途上国援助に従事する国連機関やNGO組織などの同地に拠点を持つ機関にヒアリングを行うとともに、ソーシャル・ビジネスのグローバル・サミットに出席し、バングラディシュにおいて、ムハマド・ユヌス氏のグラミンとともにソーシャル・ビジネスを展開する多国籍企業の責任者に、企業がソーシャルビジネスを展開する意義とその戦略について、ヒアリングを行った。 その結果、企業と国際機関・NGOなどは、本来は異なるミッションと考え方と目的を有しているが、企業においても開発途上国における社会的な問題の解決を企業の社会的責任と位置づける限り、これらの組織が連携をしながら、効率的かつ両者のシナジーを高めながら活動をする可能性は十分にあることを確認し、2年目以降の具体的な調査と分析を通じて、最終的に研究をまとめることの意義の高さをあらためて確認することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年間の研究計画の初年度は、全体の研究のプラットフォームとして、主に以下の2点についてまとめることを予定していた。1 開発途上国市場に対する多国籍企業の事業展開に関する先行研究のサーベイ2 援助活動の一部として開発途上国市場に展開する多国籍企業の活動に関するヒアリング 昨年度は、サバティカルにより米国コロンビア大学に在外研究で8ヶ月半滞在した結果、当初予定していた開発途上国への実地調査と企業のヒアリングについては、内容及び対象の変更を必要としたが、国連本部の所在地であるニューヨークのロケーションを活かして、国連開発計画(UNDP)や国連人間居住計画などの国際機関への訪問調査、2011年11月にオーストリアのウイーンで開催されたソーシャル・ビジネスのグローバル・サミットの参加を通じて、バングラディシュでソーシャル・ビジネスを展開する多国籍企業であるフランスのヴェオリア、ダノンなどの責任者より、企業の戦略について直接にヒアリングする機会も得て、若干2年目計画との入れ替わりはあるものの、概ね順調に進んでいる。 先行研究のサーベイについては、BOPビジネスの展開に関する考え方をまとめて、ソーシャル・ビジネスと混同されている状況などを問題点として提起している。具体的な企業の動きと戦略の類型化などのデータベースの整理については、初年度に予定された内容を2年目に行う予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に当たる今年度は、初年度に十分に終えることのできなかったBOPビジネスに関与する企業の戦略をまとめるところから始め、BOPへのアプローチの違いを類型化する。その中から抽出した企業について、ソーシャル・ビジネスとして開発途上国市場に展開する多国籍企業の活動に関する具体的なヒアリングを行う。対象としては、開発途上国(主に従来から研究対象としてきたバングラディシュおよび南アジア)で事業を展開する多国籍企業とバングラディシュのグラミン・プロジェクトの関係者へのヒアリングを想定し、それぞれの事例から現状の課題と有効性を明らかにする。 3年間の研究の中間にあたって、最終的な目標である「多国籍企業との連携による開発途上国へのアプローチの有効性の考察」の解明に向けて、現地調査による発見事実と実証研究の考察に基づいて、開発途上国市場における多国籍企業の戦略と有効性と問題点の分析を行う。多国籍企業がBOP市場で事業を展開することの意義を利益追求と社会的問題の解決の両面から捉えて、企業の戦略を考察する。 一方で、国連ミレニアム目標の達成を中心として、社会的な問題の解決を目的として開発途上国で活動を展開する国際機関を含めた援助機関と企業の戦略とミッションの違いを明らかにしながら、援助とソーシャル・ビジネスの双方の手法での多国籍企業の事業について、連携の可能性と課題を分析する。最終的な連携のモデルを構築し、その有効性について、最終年度に提言を行うことを想定しながら、2年度目には必要な資料収集と現在展開されている事例分析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、昨年度に十分に実施できなかった実地調査を含めて、主に資料収集と関係者へのヒアリングおよび研究報告を目的とした出張に対して、主に研究費を使用する。・ ソーシャル・ビジネスとして、開発途上国市場に展開する多国籍企業の活動に関するヒアリングを目的とした出張 (特にバングラディシュおよび南アジア)・国際機関への開発途上国における社会的問題の解決のアプローチに関するヒアリングを目的とした出張 (JICAや政府機関、国連機関など)・本研究の中間報告及びBOP研究に関する意見交換を目的とした学会および研究会への出張
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Research Products
(1 results)