2011 Fiscal Year Research-status Report
企業境界の変化がイノベーションに及ぼす影響に関する分析
Project/Area Number |
23530476
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50303342)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イノベーション / 企業境界 / 研究開発 / 専有可能性 / 技術機会 |
Research Abstract |
本研究は、M&Aに伴う企業境界の変化が、当事者企業および当事者以外の企業のイノベーションにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としている。当事者企業のイノベーションに及ぼす影響については、以下の作業仮説を設定した。(1) M&Aを行う企業の事業ドメインが同一ないし近似している場合は、イノベーションから得られる利益の専有可能性が高まることによって研究開発が促進される。(2) M&Aを行う企業の事業ドメインが異なる場合は、技術機会の多様性が増大することによって、研究開発が促進される。 当事者以外の企業のイノベーションに及ぼす影響については、正負いずれの可能性も考えられ、その可能性が顕在化する程度は、当事者企業と他社の競合関係が強いほど高くなるとの作業仮説を設定した。 平成23年度は、まず当事者企業のイノベーションに及ぼす影響について、製薬企業間のM&Aを対象とした事例分析を行った。新薬開発経過一覧から取得できるパイプライン品目のデータを使用し、事業ドメインが近似している企業間の合併事例として第一三共、事業ドメインが異なる企業間の合併事例としてアステラス製薬を対象とした分析を行った結果、上記(1)および(2)の仮説が検証された。この分析結果は、文部科学省科学技術政策研究所のDiscussion Paperとして公刊した。 当事者以外の企業のイノベーションに及ぼす影響については、科学技術政策研究所が平成22年度中に実施した「民間企業の研究活動に関する調査」において取得されたデータを用いて分析を行った。分析結果から、M&Aが市場集中度に及ぼす影響の程度によって、競合他社が採用する対抗措置は異なることが明らかになった。調査データの基本的な集計結果は、同研究所の報告書として公刊し、そのうちM&Aの影響等に関する分析結果は、研究・技術計画学会の年次学術大会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、平成23年度はM&Aを実施した当事者企業の分析を行い、当事者以外の企業に関する分析は24年度以降に行う予定であったが、科学技術政策研究所の22年度調査により所要のデータが取得されたため、23年度中に後者の分析に着手することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、特許庁「知的財産活動調査」のデータなどを補完的に使用する予定であったが、科学技術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査」により所要のデータが利用可能になったため、引き続き同調査データを用いた分析を進めることとする。一連の分析を早期に完了させ、分析結果の総合と、理論的・政策的インプリケーションを導出するための考察に移行することとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のようにデータ利用が効率化されたこと等から、当該年度の予算には若干の残額が生じた。これを次年度予算とあわせ、特にデータ分析の高度化および分析結果の発表などを目的に使用する。
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