2013 Fiscal Year Annual Research Report
企業境界の変化がイノベーションに及ぼす影響に関する分析
Project/Area Number |
23530476
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永田 晃也 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (50303342)
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Keywords | イノベーション / 企業境界 / 研究開発 / 専有可能性 / 技術機会 |
Research Abstract |
本研究は、M&Aに伴う企業境界の変化が、当事者企業及び当事者以外の企業のイノベーションにどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的としている。 当事者企業のイノベーションに及ぼす影響については、以下の作業仮説を設定した。①M&Aを行う企業の事業ドメインが同一ないし近似している場合は、イノベーションから得られる利益の専有可能性が高まることによって研究開発が促進される。②M&Aを行う企業の事業ドメインが異なる場合は、技術機会の多様性が増大することによって、研究開発が促進される。 当事者以外の企業のイノベーションに及ぼす影響については、正負いずれの可能性も考えられ、その可能性が顕在化する程度は、当事者企業と他社の競合関係が強くなるほど高くなるとの作業仮説を設定した。 これらの作業仮説を検証するため、本研究では製薬企業の大型合併を対象とした事例分析、および文部科学省科学技術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査」の個票データに日経NEEDSの財務データを連結したデータベースを用いた統計分析を行った。前年度までの分析により、これらの仮説を指示する結果が得られたが、データベースを用いた分析では、M&A実施企業と非実施企業の間に研究開発集約度における有意な差が観測されなかった。 本年度は、その要因を明らかにするため、M&Aの実施目的と、M&Aに伴う研究開発部門の変化の関係を分析した。これより、研究開発力の強化を目的とするM&Aを実施した企業では、研究開発集約度に正の影響を及ぼす「新しい研究開発プロジェクトの立ち上げ」と、負の影響を及ぼす「重複した研究開発プロジェクトの整理・統合」がしばしば同時並行的に進展するため、結果的に研究開発集約度を顕著に変化させないことなどが明らかになった。
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