2011 Fiscal Year Research-status Report
正義論視点からの働き方の多様化における組織的公正性の研究
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23530482
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
下崎 千代子 大阪市立大学, 経営学研究科, 教授 (80135003)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多様な働き方 / 公平性 / グローバル人材 / ダイバーシティ |
Research Abstract |
今年の研究実績について、講演会、インタビュー調査、資料収集、文献研究ごとに述べると以下の通りである。 まず、講演会について、グローバル企業の人事担当者からグローバル展開する際の採用、配属、評価等の課題に関して、3回の講演会を実施した。この中では、現地採用者と駐在員の処遇の公平性に関する困難性、帰国した時の配属の難しさ等を確認することができた。現地化途上と現地化が終了している企業で直面する問題が異なることも確認された。 インタビュー調査については、大学卒業後10年から20年を経過した14名についてインタビュー調査を実施した。そこからは、与えられた仕事を遂行しているという姿は見受けられたが、今後の仕事上でのキャリア開発に関する期待が希薄になっていることが伺われた。また、転職した場合、数回の転職後に適した仕事と出会うことも明らかになった。企業内での不公平感等については、とくに大きな問題を感じているものは少ない。それは、仕事に対する期待が従来ほど高いものではないという裏返しの反応であると分析できる。今回は、すべて正規社員に対するインタビューであったので、非正規社員に対しては別の反応がえられるものと考えている。 資料収集については、企業の女性継続雇用への取り組み、外国人の採用の取り組み、非正規雇用者の実態の統計資料、テレワーク関係の資料等について入手をしているが、それらの分析までには至っていない。 文献研究については、組織的公平理論の代表的な理論レビューを実施した。 今年度は予備的研究の実施であったので、次年度から本格的な分析に入って行く予定である。また、国内での企業内の働く者の公平性だけではく、グローバル展開する際においての従業員に対する公平性の研究の重要性を認識したので、その方向で研究を進展させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先に述べたように今年は予備的な研究年度として位置付けている。当初は、文献研究と資料収集中心に研究を進める予定であったが、講演会やインタビュー調査の方が先行しており、具体的な事例から、多様な働き方が現在どのように展開しているのか、そしてそこにおける問題点は何かについて、新たな知見を得ることができた。そうした意味において、概ね順調に進んでいると評価することができる。 ただし、この研究の中核となる多様な働き方のそれぞれに属する人に対するインタビューはまだ十分ではない。各グループの価値観をインタビューから明らかにして、働き方のグループ化を行い(正規、非正規(パート労働者、派遣労働者、契約社員、女性、若者、高齢者、自営業者、在宅勤務者、SOHO等)、価値観と働き方とが対応しているかどうかを解明する作業をまず実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方策については、従来と同様に、文献研究、資料収集(文献、論文、統計データ、企業事例等)、インタビュー調査、講演会を中心に遂行する。 今年は、とくにインタビュー調査に重点を置く。これまでのインタビュー調査に基づき、今年度は以下の対象者を中心として20~30名程度のインタビューを実施する。日本で働く外国人、家庭を持ちながら働く女性、非正規雇用者、在宅勤務者が今年のインタビュー対象者である。上記の「理由」で示したように、成熟化された経済状況、少子高齢化の進展、都市一極集中といった社会状況の中で、個々人の労働に対する意識は大きく変化している。豊かさを求めて働く時代から、自己の価値観に基づいた働き方を求める時代への変化を解明するため、多様な人々ーのインタビューを実施していきたい。 講演会は、企業の人事担当者や多彩なキャリアを持つ方を招待したものを年数回予定している。文献研究、資料収集は継続的に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
先に述べたとおり、インタビュー調査が中心となる。インタビュー協力者に対しては簡単な謝礼を渡す予定である。東京や地方(富山を予定)等でのインタビューに関しては、交通費・旅費を必要とする。また、インタビューに関しては、院生にも協力を求め実施するため、それに対する謝金が必要となる。 講演会については、講師謝金(遠方の場合は交通費も必要)や会場費が必要となる。 文献研究については文献の購入費、資料収集(今年は働き方に関する統計データの収集と関連する論文の検索・コピー等)については、学生や院生のアルバイトで実施するのでそれに対する謝金が必要となる。 インタビューについては、可能であれば、海外での勤務者にも実施したいと考えている。可能な地域は、上海、北京、台南、アムステルダムである。これについては、海外渡航できる日程が確保できるかどうかによるため、まだ計画段階である。 また、インタビュー調査した内容については、記述したものをデータ入力して、その内容を整理する必要がある。それについても、院生などにも協力を得る必要があり、それに対する謝礼も必要となる。
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