2011 Fiscal Year Research-status Report
組織的公正における組織コミュニケーションの影響過程に関する研究
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23530485
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
加納 郁也 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (40382254)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 組織的公正 / 組織コミュニケーション |
Research Abstract |
本研究は、明確な職務を前提とし、欧米で展開されてきた組織的公正理論を、日本企業の強みであるすり合わせ型の職務に応用しようとするものである。本研究は次の2つの課題に焦点を当てた分析枠組みの構築を目指している。第1に、評価だけでなく、職務遂行にともなって必要とされる情報やコミュニケーションの認知が、組織的公正に影響を与えているという点である。従業員が公正・不公正を知覚するのは、何も評価場面だけに限定されるものではない。評価制度の設計および運用のみに着目して組織的公正を高めようとする努力には限界がある。情報やコミュニケーションは、本来日本企業の強みを構築するためのポイントとなるが、従来の組織的公正理論では、分析の射程外となってきたのである。第2に、職務の分化と統合ともいうべき現象に注目する点である。テレワークの導入にあたっては、職務の切り分けが問題とされ、いかにしてチーム作業を切り分け可能な職務に落とし込むかという問題が議論の中心となってきた。しかし、すりあわせ型の職務遂行に強みをもつ日本企業の分析においては、統合という視点が欠かせない。事実、申請者のこれまでの調査では、テレワークを成功裏に進めている企業の多くで、切り分けられた職務を統合するために何らかの仕掛けを有していることが明らかとなっている。そこで、今年度は、本研究を次のようなステップで進めた。まず、研究資料の収集および文献研究を行った。次に、こうした二次データの収集だけでなく、実際の人的資源管理制度、とりわけ評価・報酬制度に関する一次データ収集の必要性から、調査対象先となる数名ないし数社の経営者および従業員にもインタビューを行った。これをもとに設計した調査デザインに基づいて、本研究の目的に合致した調査票を作成した。目下、分析モデルの修正を含めた各質問項目の修正を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の研究計画に従って、おおむね予定どおりに進んでいる。本研究は、申請者が3年間の計画で単独で行う予定であるが、第1期は、文献研究およびインタビュー調査による定性的データの収集、分析枠組みの設定、パイロット調査の実施による調査票の修正を中心に行う計画となっている。研究資料の収集および関連文献研究については、計画通り実施された。また、こうした二次データの収集だけでなく、実際の人的資源管理制度、とりわけ評価・報酬制度に関する一次データ収集の必要性から、調査対象先の経営者および従業員へのインタビューを実施する必要があるが、これも予定どおり実施することができた。この後、二次データとして収集した文献や資料およびインタビューによって収集した一次データをもとに、本研究の目的に合致した調査票を作成した。企業組織における組織的公正の実証分析を行う上では調査票が必要であることから、これを作成した。パイロット調査については、適切な対象先を選定することが困難であったため実施することができなかったが、目下、分析モデルの修正を含めた各質問項目の修正を行っているところである。以上のことから、交付申請書に記載した当該研究の目的の達成度については、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第2期以降では、本調査(定量的調査)の準備、分析および追跡調査を中心に行う予定である。本研究では、まず従来の組織的公正研究において蓄積されてきた評価プロセスにおける従業員の公正感だけでなく、日常の職務を通じた情報やコミュニケーションが従業員の公正感に重要な影響力を持っていることを明らかにし、「公正な評価・処遇」とは評価プロセスに限定されるものではなく、日常の職務遂行プロセスから見直すべきものであることを明らかにし、拡張された組織的公正研究の分析枠組みを構築する。また、従業員へのアンケートだけでなく、人事担当者や経営層へのインタビューによって、より厳密な分析結果の解釈を行い、当該研究における分析枠組みの精緻化を目指す。一方、近年、大企業を中心に「テレワーク(在宅勤務)」の導入が進められてきているが、そこにはさまざまな困難がある。なぜなら、テレワークとは単に働く場所が変化することを意味するのではなく、統制の方法やコミュニケーションの仕組みの変更を伴うものだからである。そこで問題となるのは、分業を含めた職務遂行プロセス、チームワークの維持とコミュニケーション、明確な評価基準、公正な評価である。このように、本研究では、分化の視点だけでなく、目に見えないところで職務を遂行している従業員の公正感を高めるために、統合メカニズムのあり方を提示することも射程に入れている。そこで、今後の研究の推進方策として、下記のようなプロセスで上記の課題に取り組む。本調査で使用する調査票を作成し、調査対象企業の選定を行い、調査票を郵送によって発送、回収する。回収された調査票は統計的処理が可能となるように加工し、データ入力を行う。今年度中に分析を終え、次年度に報告できるところまで進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度実支出額は、3月31日までに支出された額を記載したものであり、3月31日現在で発注・納品までを完了したものについては、次年度4月に支出された。本調査で使用する調査票を作成する。調査票の印刷には申請した印刷費を使用する予定である。その後、調査対象企業の選定を行い、調査票を郵送によって発送、回収するが、申請した通信費の大半を本調査票の発送、回収に使用する。調査票の準備・補助については、謝金を活用する。調査票の統計的処理および分析回収された調査票を統計的処理が可能となるように加工し、データ入力を行う。データ入力の補助者については今回申請する謝金を利用する。統計分析については、市販の統計パッケージソフトを購入する。また分析結果に基づく考察の際に、追跡調査を行ったり組織行動、人的資源管理の領域の研究者からアドバイスを受けたりする必要があり、その際には旅費を利用する予定である。
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