2012 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な日本型人材マネジメントのあり方についての実証的研究
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23530489
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
宮本 大 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (30434682)
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Keywords | 人材マネジメント / 能力開発 / 人材育成 / 持続可能性 / 成果主義 |
Research Abstract |
本年度は、前年のマクロデータによる分析を受け、企業および従業員の個票というマイクロレベルにおける日本企業の人材マネジメントシステムの実態を明らかにする研究を進めてきた。 まず電機・電子・情報関連産業の技術者データを利用した研究では、入社直後に配属される担当職務によって社内におけるキャリア形成が異なり、とりわけ職務経験の幅が異なる傾向が確認できた。ただし、いずれの職務であっても基本的な職務経験はその内容に関連して広がり、関連のある幅の広い職務経験を通じて仕事上の不確実性に対するスキルや総合的な職務遂行能力が高まっていた。こうした従来の日本企業が行ってきたOJTや人事異動を通じた職務経験の蓄積という人材育成は近年の成果主義化の中でも依然として効果的であることが確認された。 次に先の電機・電子・情報関連産業と同じような輸送用機器製造業の技術者データを入手することができ、このデータを利用して人事異動による効果についての研究を実施した。それによると、期待通り人事異動は個人の成果を高めることに寄与していた。またこうした効果は、人事異動による個人の職務遂行能力の向上という予想される結果は得られなかったが、人事異動によって情報交換を行う人的ネットワークの形成され、それが個人の成果を高めていることが示唆された。 検証結果のより頑健な検定が必要であるが、OJTや人事異動等は個人の人的資源の蓄積に対して一定の効果があり、これらの人材マネジメント施策は成果主義化の進展や産業にかかわらず依然として人材の育成に寄与するものであることが確認できた。ただしその効果や経路は産業によって異なることが示され、この点については次年度に詳細な検討を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は前年のマクロデータによる分析を受けて、各調査によるマイクロデータを利用し、能力開発を中心とした持続可能な人材マネジメントシステムの実態を明らかにする研究を行うという計画であった。研究実績の概要で述べたようにマイクロデータによる分析をおおむね計画通り実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにした人材マネジメントシステムが従業員および企業に及ぼす影響についてより詳細な検討を加えるとともに、産業横断的な検討により一般的かつ包括的な持続可能な人材マネジメントのあり方を提示するための研究を推進する予定である。 より学術的かつ実務的にも有用な研究成果を得るためには、今後、研究成果を他の研究者、実務担当者からコメント・批判を受けることができるように全国規模および国際学会での報告を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は60,691円であり、その分については計画していたよりも多くの学会やセミナーに参加し、研究成果の完成度を高めるために使用する予定である。こうした繰り越しがあるものの、平成25年度の研究費は従来の申請した通りの費目に沿って使用する予定である。
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