2011 Fiscal Year Research-status Report
最低賃金の引き上げに伴う知的障害者を雇用する企業の行動に関する研究
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23530490
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
眞保 智子 高崎健康福祉大学, 健康福祉学部, 准教授 (10341794)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 障害者雇用 / 最低賃金 / 知的障害者 / キャリア形成 |
Research Abstract |
本研究は、最低賃金の引き上げにより、最低賃金近辺もしくは、適用除外により最低賃金を下回る賃金で働いている知的障害のある労働者に対して、実際に企業がどのような行動をとるのか、その実態を明らかにすることを目的とする。研究の趣旨から調査対象は障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社(平成22年4月281社)と全重協会員企業(約320社)である。方法は、半構造化面接法によるインタビュー調査とアンケート調査による。調査の分析概念は、(1)企業は雇用を抑制するのか、(2)適応除外とする労働者の対象を拡大するのか、(3)生産性を上回る賃金でも法令遵守を重視する企業イメージを維持するコストとして支払うのか、(4)技能形成を促し、職域拡大による生産性の向上を模索するのか、である。 今年度は、平成20~22年にかけて実施してきたインタビュー調査の結果を踏まえ、有効な指標を抽出し、質問項目に落とし込み、インタビュー要項と調査対象企業の選定について検討を行った。インタビュー調査は、以下の企業を対象に実施した。大手百貨店特例子会社IS社、大手製薬メーカー特例子会社DSH社、大手製薬メーカー特例子会社LI社、大手精密機械メーカー特例子会社NT社、鉄道事業者特例子会社W社である。 インタビュー調査の結果から、最低賃金の引き上げに際して、特例子会社は、一部従業員に対してはベースアップによる対応を取っていた。最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加への対応として、目標管理による仕事の達成度の評価と観察によって、より難度が高い仕事に挑戦できる従業員に対しては、日常的に行うOJTにより、難度を上げた仕事やできる仕事の種類を増やすなどの戦力化が図られていた。 一方で、インタビュー対象企業ではないが、調査の過程で、より難度の高い仕事に挑戦する戦力化よりも企業への定着を重視した仕事配分を行っている企業の存在も指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、年度当初は東北大震災の影響もあり、企業への調査を実施することが困難な状況も生じたが、年度後半に集中して企業調査を実施できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、平成23年度に引き続き、インタビュー調査を実施する。今年度のインタビュー調査は特に、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(以下全重協)会員企業を対象に実施する。調査により得られた結果を質問紙に反映させるとともに、調査の集計方法について、統計を専門領域としている研究協力者に専門的アドバイスを受け質問票を作成する。 質問紙調査の対象である特例子会社はここ数年、毎年1割強増加しており、今後検討を要するが、現段階では全数の調査を予定する。配布、回収方法は、回収率を高めるために、調査協力者として各地域の就労支援施設の担当者に、支援に関わっているなど関係のある特例子会社への配布を依頼するとともに、首都圏など特例子会社が集中している地域では、すでに企業が連携して情報交換、勉強会を実施する組織ができているため、そうした場での配布を行い、後日郵送で返送する方法とする。調査の実施時期は、厚生労働省による障害者雇用の状況調査(6月1日調査)のために企業が集計を行うことを意識して、平成25年の6月を予定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、統計処理ソフトのバージョンアップを見送ったことがあげられる。見送りの理由は、所属機関である大学の規定による研究室のパソコンのリプレースが平成24年度に予定されていたためである。OSを含め大幅な環境の変化が予想され、それゆえ統計処理ソフトのバージョンアップを見送った。したがって、平成24年度は統計処理ソフトのバージョンアップ費用として、80万円の支出を予定する。 平成24年度は、インタビュー調査等出張旅費として30万円、物品費として10万円、人件費・謝金として20万円、その他として10万円の支出を予定する。
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Research Products
(1 results)