2011 Fiscal Year Research-status Report
成熟産業、成熟市場における企業の再活性化と競争優位の再構築に関する研究
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23530498
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
山田 敏之 大東文化大学, 経営学部, 准教授 (10453664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
福永 晶彦 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (10279549)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 成熟市場・産業 / 中小・中堅企業 / 競争優位 / 事業転換 / 戦略シフト / 企業の再活性化 / 組織能力 / コア・コンピタンス |
Research Abstract |
本年度は主に成熟産業、成熟市場と企業の競争力、再活性化等に関連する既存の文献ならびに各種資料を渉猟し、調査研究のための分析枠組みを演繹的に導出すること、さらにそれら分析枠組みを精緻なものにするための補完的な実態調査を行うことを目的に研究を進めた。分析枠組みの構築については、研究分担者との間で分担を決め、数回の会合の中で、既存文献の読み合わせおよび資料の解釈等の報告、検討会を開催し、研究全体の分析フレーム構築に関する議論を行った。また、合わせて実態調査対象企業の選定を行い、聞き取り調査の内容および調査項目の検討も行った。実態調査ではa)貴社の事業概要と直面する問題等、b)成熟産業、成熟市場における貴社の経営戦略の特徴、c)そのような経営戦略を実現する組織運営の工夫やマネジメントの特質等を共通して質問することで合意が得られた。それらの議論を受け、平成23年10月には静岡県の模型企業であるハセガワへの聞き取り調査を実施した。調査結果から、ハセガワは顧客の高齢化と少子化という市場縮小要因に対し、1点特化の「飛行機のハセガワ」からキャラクター、ロボット、ゲーム、コンテンツまでを扱う「総合模型メーカー」への転換を図っていること。商品展開も「点」ではなく「線」で考えることができないと不十分であり、そのためには組織横断的な交流、健全な議論ができる風通しの良い組織体質への変革が必要であること等が明らかになった。さらに平成24年3月には宮城県の清酒企業である一ノ蔵への聞き取り調査を実施した。調査結果から、減少し続ける清酒市場で一ノ蔵は米加工業の原点である農業に回帰し(農商工連携)、徹底的に品質にこだわった清酒造りをしていくこと、新たな市場開拓として低アルコール酒の開発を進めていくこと、これら実現するために組織横断的なプロジェクトチームでの開発、女性の視点を重視し経営を行っていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の達成度において、やや遅れているとする理由として、第一に、東日本大震災の影響もあり、実態調査(聞き取り調査)が不十分だった点が挙げられる。本研究では実態調査の対象業界として、計画段階において繊維、造船、清酒、文具、玩具(模型)、農業等を挙げていたが、平成23年度は清酒、模型企業各1社ずつに聞き取り調査を実施した段階に止まっている。平成23年度の主たる目的は先行研究・資料の検討と分析枠組みの構築であり、実態調査は分析枠組みづくりを補完すること、さらに調査仮説の導出を目的とするものであるため、ケースは限定されるが、それらを勘案しても若干、実態調査の進み方が遅れていることが指摘できよう。二つ目の理由として、多角的な視点をもつ先行研究の整理、批判的検討、本研究の分析枠組みづくりにおける議論を収束させることに時間を要した点が挙げられる。本研究の学術的背景として複数の視点からの先行研究の存在を指摘することができる。例えば、成熟市場・産業における特定技術や産業の脱成熟化に関する研究、マーケティングや顧客価値創造といった視点からの研究、企業の競争力の復活や再活性化に関する研究が挙げられる。これらを踏まえ、本研究なりの新たな視点を付加した分析枠組みを構築する作業は膨大な先行研究の上になされることになり、議論を収束し、枠組みを構築することは非常に困難な作業となった。また、成熟市場・産業と衰退市場・産業の区別といった点でも様々な議論がなされた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、現在進行中の調査研究のための理論的な分析枠組みを完成させることを第一の目的として研究を進めていく。このために、概念の整理、結合等に関する議論を密に行うため、研究分担者を含めた会合を本年度以上に頻繁に開催していく。分析枠組みに関する議論の成果については、学会報告、学会誌あるいは大学の紀要等への投稿を含め、何らかの成果の形で残す予定である。さらに、研究全体にわたる仮説を導出するため、関東、関西、九州方面での実態調査を一層充実させていく。特に、実態調査に関しては現段階で2社に止まっているため、業種と企業の幅を広げていくことを含め早い時期から取り組んでいきたい。なお、実態調査の結果は分析枠組みの完成にも寄与するものとなるように実施時期等も適宜検討していく予定である。平成24年度は、聞き取り調査から得られた発見的事実を基盤に、仮説の構築を行い、調査仮説の導出を完成させていく。これらを踏まえ、聞き取り調査から事例研究の完成を目指すと同時に、事例研究の成果をまとめた中間報告書を作成し、関連する学会での発表を行っていく。可能であれば、これらの結果についても学会誌あるいは大学の紀要等への投稿ができるように準備していく。さらに、これらの作業と並行して、大量観察の実施準備に入っていく。まずは、アンケート調査送付先企業を選定してリストを作成し、アンケート調査のための予備調査を完了させ、質問票を完成させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に前年度の予算を使用することについては、実態調査の対象が2社に止まったことの影響が非常に大きいと言える。平成24年度には、この点を考慮し、関東、関西、九州方面の企業に対する実態調査を充実していく予定である。これらを進める上では、実態調査に伴う手土産、謝金、成果のまとめの際に依頼するテープ起こし等の作業への支出も見込まれる。また、今年度は主として邦文文献の収集・整理が中心であったが、平成24年度には欧文文献の収集・整理も入ってくるため、これに関わる一定の図書費の支出が見込まれる。さらに、出張の際の持ち運びと高度な計算能力を考慮したパソコンも前年度に購入することができなかったため、これらについても支出していくことになる。その他、細かい領域として、資料整理やファイル整理等のために使用する文具(電子文具を含む)等の支出も見込まれる。
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Research Products
(1 results)