2012 Fiscal Year Research-status Report
成熟産業、成熟市場における企業の再活性化と競争優位の再構築に関する研究
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23530498
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
山田 敏之 大東文化大学, 経営学部, 教授 (10453664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 透 日本大学, 商学部, 教授 (60255247)
福永 晶彦 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (10279549)
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Keywords | 成熟・衰退市場 / 中小・中堅企業 / 持続的競争優位 / 事業転換 / 戦略シフト / 企業の再活性化 / コア・コンピタンス / 組織能力 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度の引き続き、成熟産業、成熟市場と企業の競争力、再活性化等に関連する既存の文献ならびに各種資料を渉猟し、調査研究のための分析枠組みを構築すると同時に、それら分析枠組みを精緻なものにするための補完的な実態調査を一層充実させることを目的に研究を進めた。分析枠組みについては、研究分担者との間で数回の会合を持ち、数回の検討会を開催して、研究全体の分析フレームの精緻化、先行研究との関連性等に関する議論を引き続き行った。実態調査としては平成24年6月18日にSWEET(プラモデル)(事前調査として平成24年5月19日に第51回静岡ホビーショーへ参加)、平成24年7月4日に森下仁丹(食品、シームレス・カプセル)、平成24年7月26日にあさ開(清酒)、平成24年8月10日に福源酒造(清酒)、平成24年8月22日にトンボ鉛筆(文房具)、平成24年9月3日に若竹屋酒造場(清酒)、平成25年2月21日に富士フイルム(高機能素材、化粧品)といった聞き取り調査を実施した。これら調査の結果から、成熟市場での戦略のポイントとして、(1)成熟市場の本質を読む観察力と洞察力、(2)業界の常識や慣行にとらわれない発想の転換、(3)小さな失敗や実験からの組織的学習、(4)気づきから組織的実行に至る経営トップのリーダーシップ、(5)成長戦略が逆に脱成熟を阻害すること(売上重視が真の顧客の存在を忘れさせる)、(6)モノでなくコンテクスト(モノの提供方法、モノの使用から得られる価値)で考えること、(7)地域の基盤(原材料、人材、知識、ノウハウ等)の有効活用、(8)自社の強みの洗い出し(その際に顧客に近い技術ではなく、遠い技術に遡って検討すること)といった事項が共通に抽出された。さらに、次年度に実施予定のアンケート調査(仮説検証作業)の準備作業としてスケジュールの確認、対象企業の選定に関する議論も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成度を、(2)おおむね順調に進んでいると判断した理由として、第一に、昨年度に東日本大震災の影響もあって不十分であった実態調査(聞き取り調査)への取り組みが改善されたことが挙げられる。昨年度は清酒、プラモデル製造各1社ずつの聞き取り調査に止まっていたが、本年度は清酒3社、プラモデル製造1社、文房具1社、食品・カプセル製造1社、フイルム・化粧品製造1社の7社に聞き取り調査を実施することができた。ただし、昨年度の調査も含めて、清酒企業への聞き取り調査のウエイトが大きく、農業、造船、繊維、地方鉄道といった産業に属する企業への聞き取り調査が行われていないという意味で、研究対象とする産業の偏りがみられており、この点は今後の課題である。二つ目の理由として、多角的な視点をもつ先行研究の整理、批判的検討、本研究の分析枠組みづくりにおける議論をおおむね収束させることができた点が挙げられる。議論の中から、(1)成熟産業・市場と衰退産業・市場では性質、特質が異なっているため、同様の分析枠組みを用いることは困難であること、(2)成熟産業・衰退産業の戦略に関する既存の研究ではポジショニング・アプローチが主としてとられてきたが、資源・能力ベース並びに時間(経過)の視点を組み入れる必要があること、(3)技術やマーケティングの発想転換により脱成熟が実行される際に組織プロセスの視点が重要であること、(4)従来の枠組みに地域の能力といった視点を加えることの重要性等の諸点が分析枠組みに組み入れる項目として浮かび上がってきた。おおむね順調に進んでいると判断した第三の理由は、平成25年度に実施予定のアンケート調査に対する準備作業がやや遅れがちではあるが、議論・検討できたからである。アンケート調査票案の作成までには至らなかったが、おおまかな調査のスケジュール、対象企業の選定等における議論を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、これまでの調査研究で明らかになった発見的事項を確認しながら、仮説の精緻化を図ると同時に、大量観察の手法により仮説の検証を行い、研究報告書として取りまとめることが目的となる。このため、研究分担者を含めた検討会をメール上だけでなく、実際に対面する会議も本年度以上に頻繁に開催していく予定である。分析枠組みに関する議論の結果については、前年度に成果の形で残していないため、学会報告、学会誌あるいは大学の紀要等への投稿により中間報告を行っていく。さらに、現段階での実態調査の結果を踏まえ、発見的事実と調査仮説構築の部分に関しても、学会報告、学会誌あるいは大学の紀要等への投稿により中間報告として成果を発信していくことを予定している。さらに、研究全体にわたる仮説を精緻化するため、関東、関西、九州方面での実態調査を一層充実させていく。実態調査に関しては現段階でやや業種に偏りが認められるため、業種と企業の幅を一層広げて取り組んでいきたい。九州方面への出張も現段階で実現していないので、これも課題として挙げておきたい。また、平成25年度は仮説検証のためのアンケート調査を実施する予定である。アンケート調査実施に当たり、早急に対象企業と調査票の確定していく。可能であれば、特定企業に対する予備調査を行い、調査票の精緻化を図っていくことも必要になるだろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に前年度の予算を使用することについては、実態調査の対象が7社に止まったことの影響が非常に大きいと言える。平成25年度には、この点を考慮し、関東、関西、九州方面の企業に対する実態調査を一層充実していく予定である。これらを進める上では、実態調査に伴う謝礼、謝金、成果のまとめの際に依頼するテープ起こし等の作業への支出が見込まれる。また、平成25年度はこれまでの調査研究から導き出された仮説の検証のため、アンケート調査を実施する予定であり、それに関わる調査票や送付返信用封筒の印刷代、企業選定のための会社四季報の購入(CD-ROM)、郵送料等の支出が見込まれる。さらに、平成25年度は研究結果の取りまとめの年度であり、報告書作成のために、社史等を含め特定業界に関する資料を幅広く収集することが必要となり、これに関わる一定の図書費の支出および報告書印刷代の支出が見込まれる。その他、細かい領域として、資料整理やファイル整理等のために使用する文具(電子文具を含む)等の支出も見込まれる。
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Research Products
(10 results)