2011 Fiscal Year Research-status Report
アジアのコンテンツ産業におけるイノベーションシステムと共進化に関する国際比較研究
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23530501
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安田 武彦 日本大学, 商学部, 教授 (30246805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 文化経済学 / 文化政策 / 産業政策 / 国際文化交流 / クリエイティブ産業 / イノベーション / ネットワーク / 東アジア |
Research Abstract |
アジアのコンテンツ産業を取り上げて、そのイノベーションを生み出すプロセスを明らかにし、域内の文化関連財取引の拡大によるイノベーション・システムの共進化に関する国際比較を行うことを研究の目的とする。主に映像コンテンツ産業でイノベーションを生み出すネットワークのメカニズムとそのガバナンス構造に焦点を当てて調査と分析を行う。平成23年度は、今まで行ってきたコンテンツの制作と流通におけるネットワーク分析を継続し、インターネットによってコンテンツ流通過程にどのような変化が生じているのか分析を引き続き行った。それを踏まえて、コンテンツ産業のイノベーション・システムを明らかにしていくために、コンテンツ制作の上流における変化に関する資料の収集を行った。 平成23年度は、韓国とシンガポールの映像コンテンツ産業のイノベーション・システムの調査を中心に行った。「韓流」と呼ばれる韓国のコンテンツに対するブームがアジア各地で生じたが、これはメディア産業の効果的な国際マーケティング戦略によるところが大きいといえる。韓国のコンテンツ産業におけるプロデュース能力は大変に優れており、対アジア戦略でかなりの成果を収めている。この国際プロデューサーは韓国のコンテンツの強さをどのように考えているのか、原作に当たる上流のコンテンツ産業とのメディア・ミックスを行うためのネットワーク構築をどのように考えているのか、そしてアジアにおいていかに韓国コンテンツを普及させようとしているのかという点などに焦点を当てて資料を収集し分析した。その際に、彼らの考える「アジア的価値」とは何かという点を合わせて考察した。またコンテンツ産業におけるイノベーション・システムの最新の研究動向に関する情報と資料の収集、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で調査・分析の対象とするアジアの国・地域は、シンガポール、韓国、台湾、香港および中国である。各国・地域において、まずコンテンツ産業のイノベーション・システムを順次個別に明らかにする。 研究初年度にあたる平成23年度は、予定通りに主に韓国、そしてシンガポールの調査と資料収集を行い分析した。またコンテンツ産業とイノベーション・システムに関する最新の研究動向を調査し分析した。次年度以降の現地調査の際に活用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
シンガポール、韓国、台湾、香港の映像コンテンツ産業のイノベーション・システムの調査を行う。平成24年度はシンガポールにより重点を置いて、イノベーション・システムの特徴の調査を行う予定である。あわせてコンテンツ産業のハブとしてのシンガポールのASEAN市場開発戦略も調査する。 またネットワークを通じた国際的な事業展開が、アジア域内で文化交流を活発化し、イノベーション・システムに共進化をもたらしている。日本をオリジナルとするコンテンツとアジアの映像コンテンツ制作との関係性を分析し、アジアにおけるコンテンツ産業のイノベーション・システム間の共進化を明らかにしていきたい。 さらに、今後もコンテンツ産業とイノベーション・システムの研究に関する意見交換をアジア及び欧米の研究者と積極的に行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費については、平成24年度にWindows8の発売が予定されていたためにPCの購入を延期した。次年度にこれを購入する予定である。 旅費については、平成23年度に発生した東日本大震災の影響により23年度の科研費給付額の確定がかなり遅れた関係で、海外調査の予定を十分に立てられなかった。平成24年度は23年度に十分に行えなかった海外調査とともに、国際コンファレンスで研究発表するために海外出張する予定である。また国内の学会などでの研究発表や情報交換のために国内出張、およびアジアや欧米の研究者とのあいだで海外学術交流も行うために海外出張する予定である。 人件費・謝金については、平成24年度は国際コンファレンスでの発表、海外の学術誌への投稿を予定しているので、翻訳またはネイティブ・チェックを行うための費用を必要とする。
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