2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530503
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 由紀子 日本大学, 商学部, 准教授 (40407763)
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Keywords | 企業倫理 / 企業の社会的責任 |
Research Abstract |
本年度は本研究課題である企業倫理研究の動向を探るうえで,非常に重要な新たな課題に取り組まなければならなくなった。それは企業自体のあり方を問うことにつながるBenefit Corporation(日本では現在のところ定訳がない)であり,本年度はこれに焦点を当てて研究を行った。 このテーマは,2012年度の米国の企業倫理学会の年次大会でも新たな企業形態の動向として1つのセッションが設けられるほど関心を呼び始めていた。 営利を第一とする企業の目的に,地域社会からグローバル社会へと程度の差はあれ社会への貢献を加えていくものである。すでに世界的にも有名ないくつかの企業がこのBenefit Corporationとして認証されることに積極的な姿勢を見せている。それはこれまでの企業に倫理性や社会性を求めることに疑義を抱くことに対する見方に対しての問題提起とともに,理論よりも実態が進んでいることを示すものである。 しかしながら,これは未だ法制度的には全米の中でも10数州で成立したばかりの企業形態であるので,研究は暫定的な成果とはなるが,「米国のCSR」(小林俊治・高橋浩夫編著日本経営倫理学会監修『グローバル企業の経営倫理・CSR』白桃書房近刊)にその成果の一部をまとめた。 Benefit Corporationは企業倫理(学)の学問としての位置付け方を探る本研究課題においても,その前提となる企業自体の本質を問うものであるため,今後もこの企業形態の動向と展開を注視しつつ,そしてそこにおける課題を把握していくことは企業倫理研究にとって不可欠であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,企業倫理研究を進めていく上での新たな課題としてのBenefit Corporationという企業形態に立入らざるを得なかった。なぜなら,企業の本質を掘り下げることなく企業倫理の学問的な位置づけは不可能だからである。 また,前年度からの課題である企業倫理が実証科学である経営学と規範科学である応用倫理学の学際領域である学問的性格を踏まえ,規範科学と実証科学のそれぞれの役割と特質を明らかにしていくための,学問それ自体の意味を考える基礎的な文献研究を積み重ねていくまでの余裕がなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に,前年度から引き続き課題となっている規範科学と実証科学のそれぞれの役割と特質を明らかにし,その違いと接点を探る。また,新たな課題としてBenefit Corporationから企業の本質を読み解いていきたい。そのために,文献研究を試みる予定である。 第二に,最新の米国における企業倫理研究動向を把握するために国際学会などの参加を通じて新たな知見を広めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
第一に,学問それ自体の意味を考える基礎的な文献研究およびBenefit Corporationの動向を把握するための文献収集に努めたい。また,その他関連の専門書および消耗品を購入する予定である。 第二に,米国の企業倫理学会および経営学会の年次大会に参加していく予定であるので,それに伴い旅費が発生する。
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Research Products
(1 results)