2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530503
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 由紀子 日本大学, 商学部, 准教授 (40407763)
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Keywords | 企業倫理 / 企業の社会的責任 |
Research Abstract |
平成25年度においては,第1に企業倫理の定義および特質を踏まえ、近接領域である企業の社会的責任や企業市民(corporate citizenship)などとの関係性を検討することにより,今後の日本における企業倫理研究の方向性と課題を考察した。それは,企業の倫理性を問う前提として,企業の存在意義そのものが現在問い直されているからである。Conscious CapitalismやCreative Capitalism,またBOPビジネスの広がりなどに象徴される,より良い世界と社会の構築への企業の役割が高まっているからである。ただし,公開株式会社においては社会問題への関わりの正当性の問題が依然として残ることは明らかである。これを克服するために米国で「社会的目的をビジネスの方式に統合する新しい領域」としてBenefit Corporationなどの社会的企業の設立も活発化している動向などもあり,今後の企業のあり方に影響を与えていくであろう。 第2に,これまで企業倫理は企業活動の結果,重大で深刻な被害が消費者や社会に生じた場合に注目されてきたが,平成25年秋に起きたホテルのレストランなどの飲食業界におけるメニューの虚偽表示問題は,業界の虚偽表示に対する認識の欠如や薄さを露呈した。これは従来の企業の不正問題と比べ,原因の1つとして利用者への直接的な危害や影響が認識されにくかったことにより,業界において非倫理的行為との自覚がなされていなかったこともあげられる。この問題は,従来の企業倫理研究で中心となっていた応用倫理学の規範的なアプローチからでは克服するには不十分であると考えられる。そのため欧米で研究が進んでいる意思決定プロセスにおける「限定された倫理性」によって生じる倫理ギャップに注目した行動倫理学のアプローチなどが,それらを補完するものとして注目していく必要性があることを確認した。
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Research Products
(1 results)