2013 Fiscal Year Research-status Report
持続的製品イノベーションを創出する組織内・組織間ネットワークの最適性に関する研究
Project/Area Number |
23530505
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
牛丸 元 明治大学, 経営学部, 教授 (50232822)
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Keywords | レッドクイーン効果 / ライバリートラップ / ハイパーコンペティション / コンピテンシートラップ / 競争優位 / 企業間関係 |
Research Abstract |
企業間ネットワークのダイアドレベルにおける,レッドクイーン効果とその派生概念として提示したライバリートラップが,企業の短期的競争優位の連鎖にどのような影響を与えるのか,半導体産業と携帯電話産業の事例から考察し,7つの仮説を提示した。 レッドクイーン効果とは,ライバル企業同士の激しい競争が企業の競争優位の形成をもたらすとする効果である。一方,ライバリートラップは,ライバル間のマイオピア化が競争優位にもたらすマイナスの効果である。 7つの仮説は以下のとおりである。仮説1:競争相手からの刺激が競争制限的である場合,ライバリートラップとなる。仮説2:競争相手からの刺激が過当競争的である場合,ライバリートラップとなる。仮説3:競争相手からの刺激が過当競争的でも競争制限的でもない場合,レッドクイーン効果となる。仮説4:ライバル企業が流動的に変わることは,レッドクイーン効果となる。仮説5:ライバルが固定化することは,コンピテンシートラップや情報の陳腐化をもたらし,新規参入や代替品に対し劣位になることから,ライバリートラップが生じやすい。仮説6:ライバル関係が固定化すると,ライバルのみが正統であると認識するようになり,ライバリー・トラップが生じやすい。仮説7:ライバル関係が固定化するとイノベーションのジレンマに陥りやすく,ライバリー・トラップが生じやすい。 本研究は,第一に競争制限的である場合でも,ライバリートラップとなる可能性がることを提示した点,第二に,レッドクイーン効果が表れる状況が,競争関係の強さが中程度であることを示した点,第三に,競争関係の強さばかりでなく,流動性も競争優位と関係していること,すなわち,流動的な場合はレッドクイーン効果が生まれやすく,固定的な場合は,ライバリートラップが生じやすことを示した点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は,特許データを用い,企業間ネットワークと企業内ネットワークとの関係をみることを計画していたが,特許データのリンケージに時間を要しており,データベースの完成が遅れている。そのため,大サンプルによる実証分析による検証ができない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
市場の重複性に着目した企業間ネットワークとイノベーションとの関係についての研究を進める。現代のグローバル企業は,多角化が進んでおり,市場の重複の程度が高い。重複の程度が企業間ネットワークにおける製品イノベーションのあり方に影響を及ぼすことが考えられる。 ここでは,以下の仮説を提示する。仮説1:重複性の高い企業間ネットワークでは企業は防衛的行動をとりやすく,追随型のイノベーションがみられる。仮説2:競合性の低いネットワークでは,企業は攻撃的行動をとりやすく,先端的イノベーションを追求する傾向がみられる。仮説3:重複ネットワークの中心にある企業ほど,競争行動が弱く,イノベーションも追随的になる。検証方法は,日立や東芝などの企業を対象に,製品の幅と顧客の重複度から,競合ネットワークの強さを測定し,ネットワークマトリクスを構築する。紐帯の強さとイノベーションのタイプとを測定することで,仮説1と2を検証する。また,ネットワークの中心性とイノベーションのタイプを測定することで,仮説3を検証する。 ネットワーク研究の視点からみると,研究内容は,ネットワークの関係的埋め込みと構造的埋め込みに関係するものである。関係的埋め込みならびに構造的埋め込みが強い,強く密なネットワークの状況のときには,追随的イノベーションが起こるとする(仮説1と3)。このネットワーク特性下では,知のマイオピア化がおきやすく,革新的なイノベーションが起こらないことになる。また,関係的埋め込みが弱く,構造的埋め込みも弱い,弱く疎なネットワークでは,知の探索がおこなわれやすく,革新的なイノベーションが起こりやすいことになる(仮説2)。 当初の研究計画では,内部ネットワークの様態についても同時に分析する予定であったが,データ取得上の制約から,この点に関しては,事例的な分析にとどめることにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
有効なデータベースの探索に時間がかかったことから,データ処理のための人件費を十分に使用することができなかったために,次年度使用額が生じた。 特許データを使ったデータベースを構築するための人件費として使用したい。
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