2012 Fiscal Year Research-status Report
グリーン・ツーリズム組織体の類型化と経営戦略~東アジアの事例を中心に~
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23530529
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Research Institution | Kyushu Kyoritsu University |
Principal Investigator |
李 只香 九州共立大学, 経済学部, 教授 (80309731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八島 雄士 九州共立大学, 経済学部, 准教授 (00320127)
藤田 武弘 和歌山大学, 観光学部, 教授 (70244663)
細野 賢治 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (90271428)
DRUMMOND Damon 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (30341613)
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Keywords | 日本 / 韓国 / 地域問題 / 農村問題 / グリーンツーリズム / ビジネスモデル / 経営戦略 / 支援組織 |
Research Abstract |
同研究の目的とする「グリーンツーリズムのビジネスモデルの類型化」を達成するために、平成23年度は、有力グリーンツーリズム組織体の事業に焦点をあて調査を行い、平成24年度においては、グリーンツーリズム組織体の経営資源及び他組織とのコラボレーションに焦点をあて主に調査などを行った。 (1)当該研究の主要調査先とする東広島の世羅、和歌山県田辺、全羅北道ワンズ(韓国)のほか、韓国ソウル近隣の数カ所の調査を行った。また、調査日程に開始か終了時に研究補助者らとともに事前・事後の研究会を行った。得られた主要な知見などは、次のようである。 (2)ツーリズム体に事業活動の詳細のほか、収益構造が明らかにできた。大半のツーリズム体は、地域内の調達・生産・流通を目指しており、規模拡大より適正規模が志向される。また、ツーリズム組織体は、数名から20名前後の小規模組織である故、人材や情報といった経営資源の調達は、地域の他の組織体からの支援やネットワークによる依存する傾向が強く、その故、他の組織体からの支援や恊働(コラボレーション)による価値創出が志向されている。 (3)支援組織は、地方政府や自治体の組織、財団法人、社団法人、NPO、任意組織などであるが、日韓の地域問題(農村問題)の取組みや事業の推進経緯の違いによって、①官設官営、②官設民営、③民設民営と様々であった。また、支援組織は支援型と中核型とあるが、支援組織を介在させながら、コミュニティービジネス(6次産業化)の手法を取り入れる方向にあった。そのため、地方政府や自治体、そしてツーリズム組織体と地域住民のよる公式・非公式のネットワーク作りが重視されている。 調査先はいずれも日韓の有数の優良事例であるが、グリーンツーリズムの推進経緯は異なるものの上記で示しているような志向は共通しており、その比較により有効なビジネスモデルの検討が可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同研究の目的とする「グリーンツーリズムのビジネスモデルの類型化」を達成するために、平成23年度においては、有力グリーンツーリズム組織体の事業内容及びマーケティング環境に焦点をあて調査を調査してきた。 一方、各事業は、地域の資源を用いながら、地域内で生産・流通することで、収益事業になっている現状が明らかになっていることから、当該年度(平成24年度)は、地域内の他のグリーンツーリズム組織体や支援組織全般へと調査範囲を広げ、予定の諸調査を行い、論文(3)、学会発表・招聘講演(5)、図書(2)を通して、成果の一部を発信している。 調査地の具体は、日本は、東広島世羅及び和歌山県田辺を、韓国においては、全羅北道ワンズにし、当該地域に集積するグリーンツーリズム組織体の取引関係などの恊働の実態に対して一定の調査を終えることができた。これらの地域は、いずれも地域の活路をグリーンツーリズムに求め、一定の成果をあげている有力事例であった。予定の調査を終えることで、農家単体のビジネスモデルのほか、共同体モデル、より多様な業態の集積としてのコミュニティビジネスモデル、他機関との提携に依存するモデルを検証することができた。 また、調査先における支援組織の調査も同時に並行させることで、諸ビジネスモデルの価値創出のプロセスの異同を見出すことができた。日本においては、自治体、民設民営及びNPO法人、任意組織について、韓国おいては、地方政府の官設官営組織、民設民営の法人、任意組織について調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえつつ、次のように調査及び検討を推進する。 (1)グリーツーリズム組織体は、単体として規模が零細で、経営資源に乏しいため、その持続性を促すモデルとしては、コミュニティービジネス(もしくは6次産業化)の手法が有効と考える。そのことからビジネス体同士の恊働や支援組織との連携のあり方を追究し、望ましいモデル提示に向けて、諸検討を行いたい。その際には、①支援組織の介在させたネットワーク化、②支援組織を中核とするネットワーク化の2つのタイプでモデル化をはかり、さらに検討を進める。 (2)そのために、諸調査の検討・整理を重視しながら、8月~9月にかけ必要な再調査及び新規調査を行う。その際には、補助研究者らとともに、当該研究の分担にそって、①グリーンツーリズムのビジネスモデル提示、②マーケティン環境分析、③組織体の内部プロセス、④持続性の検討を念頭におき、総合的な検討を行うために研究会を7月に行い、来年2月から3月にかけて当該研究をまとめる。 (3)グリーンツーリズム体の経営資源の制約のほか、コミュニティビジネス(あるいは6次産業化)は地域の利害関係者とのネットワークによって推進される故、多様な主体間の交流が必須となる。その点で、支援組織がグリーンツーリズム体あるいはコミュニティービジネスの持続性に主要な役割を果たしている。支援組織は、欧米においてはIO(Infrastructure Organization)と称され、日本及び韓国においては中間支援組織として知られつつあるが、日韓の支援組織の役割や内部プロセスの異同も主要な検討項目として加え、諸検討を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究に関わる主要概念の整理しつつ、次のように、補足的な調査及び新規調査を行う。また、平成25年度に学会報告及び論文として成果をまとめる。 (1)ビジネスモデルのあり方及び収益構造において、農村ビジネスは補助金に一定を頼っている現状から、自立した収益性のあるビジネスへの転換しつつある。当研究の事例から、補足調査からその成功要素を整理する。平成25年度内においては、和歌山田辺及びワンズコミュニティービジネス(韓国)における集積する他のグリーンツーリズム体との組織間関係再調査を行う。 (2)新規調査としては、次の2つの直売所での聞き取り調査を行う。日本においては、直売所及び観光地として「道の駅」が1000カ所以上と広く普及されているが、第3セクター方式で設立されている多くが十分な経営成果を上げていない。そのなかで、比較的最近発足した株式会社まちづくり宗像(福岡県宗像市)は、大型の観光資源より地域の特長ある漁・農産物及びその加工品により大きく成功している(売上高において九州1位、全国上位)。同社の成功についての聞き取り調査を行うほか、韓国においては、韓国国内最初の直売所であり、収益事業としても成功しているヨンジン(龍進直売所)において新規調査を行う。 (3)各事例は、研究ノートとして活字化するほか、7月の観光学術学会、平成26年3月の経営行動研究学会に報告するほか、図書出版を念頭におきながら、論文化を順次行っていく。
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