2011 Fiscal Year Research-status Report
ベイジアンモデリングによる小売マーケティングの新展開
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23530534
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 忠彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40400626)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 動的離散選択モデル / 動的来店行動 / シミュレーションスムーザー |
Research Abstract |
平成23年度は,消費者の購買行動原理解明のための研究を行った.具体的には,動的離散選択モデルによるID付POSデータを用いた計量分析として行った.本年は,家庭内消費量,在庫量の動的来店行動への影響の解明に主眼をおいた研究になっている.これは,マーケティング分野ではその重要性が認識されているが,実際には解決出来ていない重要な課題である.本研究で行った現象の統計的モデリングでは,個人,時点毎のパラメータと潜在変数の変化を許容する.この構造化により,先行研究で対応できていない課題に対処できる.ただし,こういった比較的自由なモデリングを行うと,モデル自体は多くのパラメータをもつことになる.そのためモデルの推定では,膨大な統計的な計算が必要となる.本モデル化は前述のように動的離散選択モデルの枠組みで行い,モデルの推定にはマルコフ連鎖モンテカルロ法とKalmanフィルタ/平滑化などのアルゴリズムを用いた.本研究は,2011年6月に行われた日本マーケティングサイエンス学会にて,その時点までの成果を報告している.消費者の小売店舗への来店に家庭内在庫量や消費量が強く影響すること,またチラシなどのフロー型の変数に比べてストック型の変数である家庭内在庫量や消費量は強く影響することなどが,示唆されている.これらの研究から得られる成果は当該分野で新規性をもつと考えられる.また,本研究で提案した動的離散選択モデルは,統計的モデリング技法としても発展が望まれる手法であり,そこにも貢献できていると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究に関して,学会報告を行うとともに当該研究に関する事前研究の論文が査読付き論文として採録されている.また,膨大な計算を必要とする当該研究において,その計算用プログラムの効率化なども大きく進展した.さらに,研究成果発表も5件行っている.その意味で,本研究はおおむね順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も平成23年度に引き続き,消費者の購買行動原理解明のための研究を行う.本年は,消費者の動的プロモーション反応に関する2つのテーマを研究する.具体的には,(1)セールスプロモーションの動的即時効果と累積効果の解明,(2)セールスプロモーション間の動的交互作用の解明である.これらのテーマは近年脚光を浴びているテーマである.先行的に行った研究(佐藤,樋口(2008)("動学的売上反応モデルによるPOSデータの解析",マーケティング・サイエンス),佐藤,樋口(2009)("動的個人モデルによる購買生起行動の解析",マーケティング・サイエンス)では,セールスプロモーションに対する反応動的変化は捉えられているものの,そのメカニズム(消費者の異質性やセールスプロモーション間の交互作用)は的確にモデル化なされておらず,大きな課題が残されている.これらが解明されない限り,その活用には限界がある.また,当該フィールドで重要な課題であるセールスプロモーションの即時効果と累積効果に関しても手付かずの状態であるといえる.本年の研究では,基本的に前年の研究の枠組みに加えて,階層型の状態空間モデルの枠組みを用いた動的市場反応モデルも活用する.本年の研究から得られる成果も前年の研究同様に新規性をもつと考えられる.その意味で,様々な学会での発表や論文誌への投稿は積極的に行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は,研究遂行のためのデータ購入を検討していたが,研究目的に見合う適切なデータがなかったため,繰越金が生じた.平成24年度は,平成23年度の繰越金の一部を活用し研究遂行上必要となるID付POSデータを取得する費用とする.また,平成24年度に新たに取得する研究費は,研究を円滑に進めるために必要不可欠な,Fortranコンパイラー(2セット)購入のための費用とそれを稼動させるノートパソコン(1台),デスクトップパソコン(1台)購入の費用として計上している.また,研究成果の発表も国内外の学会で積極的に行うため,平成24年度計上分と平成23年度計上分の積み残した額の一部を有効に活用する.
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