2012 Fiscal Year Research-status Report
ベイジアンモデリングによる小売マーケティングの新展開
Project/Area Number |
23530534
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐藤 忠彦 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (40400626)
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Keywords | ベイジアンモデリング |
Research Abstract |
小売マーケティングの現場では,個人の購買行動の結果である大規模データの蓄積が進展している.そのことに呼応する形で,マイクロ・マーケティングと呼ばれる戦略が非常に注目されている.マイクロ・マーケティングは,これまで幅広く活用されてきたマス・マーケティングと呼ばれる戦略に対するアンチテーゼとして生まれた概念で,消費財メーカーや小売業などのマーケティングの1つの方向性を示している.しかし,これら施策の実現に求められる個に特化した情報抽出といった技術的側面の課題と実際にそれらを実現するために必要となるコスト的課題の両面で,小売業におけるマイクロ・マーケティングの進展は限定的になっている.ただし,これまでと同じ枠組みで小売業の生産性を向上することは,現実問題として大きな困難があり,マイクロ・マーケティング的視点での施策の高度化が重要である.その際,前述した大規模データを前提とした“個に特化した情報抽出技術”は必要不可欠であり,それらの手法の開発は実務サイドから学術サイドに強く期待されていることである. 本年の研究では,特に消費者に対する広告効果や人的販売効果に焦点を当て研究を行った.広告効果に関しては,階層ベイズ型の非集計モデルで,人的販売効果に関しては一般状態空間モデルの枠組みで,粒子フィルタを用いて推定した.どちらの研究も,小売マーケティングにおいては間接的な施策であり,これまで焦点があてられていないが,重要な事項である.研究の成果として,それぞれこれまで明確ではなかったそれら施策の効果が定量化できている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記した,小売業の現場で日々蓄積の進む消費者の行動の結果である大規模データ(ID付POSデータ,POSデータ)を用いた,ベイジアンモデリング技術の高度化という目的が,一定の進展を見て,外部発表等で報告が実施できており,完成段階に近づいているため.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究の主たる位置づけは,研究最終年であるということを踏まえて,過去2ヵ年の研究成果を踏まえた,今日的な小売マーケティング課題の解明である.25年度は,動的店頭管理,顧客管理を実現するために,3つのテーマを設定している.具体的には,①動的複数カテゴリ選択行動の解明,②動的市場構造評価手法の開発,③動的顧客分類手法の開発である.これらは小売マーケティングの課題である「クロスプロモーションの高度化」,「品揃え戦略の高度化」および「効率的消費者対応」にそれぞれ対応している.これらも前2年で行う研究テーマ同様,当該分野で重要な課題として認識されているものである.これら解明を行うためには必然的に複雑なメカニズムを表現できるモデルが要求され,必然的に膨大な数のパラメータを有するモデルの推定を行う必要が出てくる.これらを実現するためには,新たなモデリングと推定技法の適用が求められる.①と②に関しては,Dynamic Latent Traitモデル(Dunson(2003),“Dynamic Latent Trait Models for Multidimensional Longitudinal Data”,Journal of the American Statistical Association)の適用を検討している.また,③に関しては動的因子分析モデルと特に昨今統計分野で脚光を浴びているノンパラメトリックベイズの手法である階層ディレクレ過程(Teh, Jordan, Beal, and Blei (2006),“Hierarchical Dirichlet Processes”,Journal of the American Statistical Association)によるモデル化を検討している.様々な学会・会議での発表や論文誌への投稿は積極的に行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は,研究最終年ということを踏まえ,海外の論文誌に論文の投稿を行う.そのため,論文の英文校正費として予算を使用する.また,高度な計算を実施するために,追加的にFortranコンパイラーを2セット購入する予定である. 24年度に購入を予定していた,Linux用のfortranコンパイラー2ライセンスのうち,1ライセンスを25年度に購入することにしたため,残額が生じた.25年度はその残額を使用し,当該ソフトウェアを購入する予定である.
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