2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530536
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 文男 京都大学, 経済学研究科(研究院), 名誉教授 (40066676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 靖永 京都大学, 経営学研究科, 教授 (70240447)
曳野 孝 京都大学, 経営学研究科, 准教授 (50301825)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | グローバルマーケティング戦略 / 新興国市場 / ボリュームゾーン / 中間層 / パナソニック / ソニー |
Research Abstract |
本年度の研究では、日本の電機産業を代表するパナソニックとソニーの中国市場におけるグローバルマーケティングの実態調査に基づき、日本家電企業のグローバルマーケティングの特徴とその抱える問題点を解明した。現在、世界の電機企業は、新興国市場、とりわけ中国市場を中心として激しい競争を展開している。パナソニックとソニーはこの中国市場で韓国やサムスン電子やLG、現地企業Skyworth, Hisene, TCL, KONKA, Haierなどと激しく競争する中で、苦戦を強いられている。 その最大原因が日本企業の高い生産技術にもかかわらず、デザインや価格、チャネルなどのマーケティング戦略面での大きな遅れにあることが明確になった。とりわけ、中国でボリュームゾーンを形成している中間層のニーズの的確な把握による製品開発に基づいたマーケティング戦略の展開が遅れている。パナソニックやソニーに代表される日本の家電企業がこれまで中国でとってきた戦略は、中国の沿岸部の富裕層にターゲットを当てた戦略であった。現在、中国では最大のボリュームゾーンを形成する中間層が急増しており、それが沿岸部から内陸部へと速い速度で移動しており、これらの層がもつ固有のニーズを踏まえた商品開発とマーケティング戦略の思い切った転換なくしては、中国での競争優位の実現は困難であることが明らかになった。これら中間層のニーズの特徴は、高品質にとどまらず、価格に対しても厳しい要求がみられる。高品質と低価格という相反する問題をいかに解決するか、という問題を抱えている。この問題は中国市場にかぎらず、21世紀のグローバルマーケティング戦略の重要な課題でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)中国市場におけるグローバルマーケティングについては、本研究に先立ち数年前から問題意識を持ち、データーの収集を行い、中国を訪問し予備調査を続けていた。しかし、中国経済と中国市場の変化のスピードが速く、これまで収集してきたデーターが古くなったため、今回改めて新しいデーターを収集する必要があった。(2)中国市場は実に広大で、多様であるため、沿岸部を中心としただけの訪問で全ての特徴を把握することができない。これまで北京や上海を中心とした沿岸部の地域の訪問にとどまり、内陸部の市場に関しては二次データーの収集にとどまった。4年間の研究期間で内陸部を再度訪問しデーターの収集を行いたいと考えている。(3)さらに可能であれば、日本企業だけにとどまらず、現地企業を直接訪問してインタビューを行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度はタイ国とベトナムを訪問し、Panasonic Home Appliance Vietname Co.(Hanoi)とSony Vietnam Ltd.(Hochimin)のインタビューを実施し、これらの国でのパナソニックとソニーのグローバルマーケティングの特徴が、中国でのそれとどの点で同一であり、どの点で異なっているのかを明らかにする。さらには、タイとベトナムのそれぞれの国の家電流通の大型店を中心とする実態について調査する。また、タイJETRO、タイ日本商工会議所を訪問し、タイの家電に関するインタビューを行う。なお、ベトナムとタイには本研究に先立ち、2007年にはタイを、2008年にはベトナムを訪問し、Panasonic Home Appliance Vietnam Co.とSony Vietnam Ltd,を訪問し、インタビューを実施した実績があるので、その当時と現在どのような違いが生じているのか比較検討する。 さらに、当初の計画には無かったが、パナソニックやソニーのアジアの重点地域とされているシンガポールとマレーシアを訪問し、これらの企業のインタビューを行う計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアに関する図書、資料費に5万円(2)資料整理のためのファイルとファイル用ハーフポケット費、文具などの費用に5万円(3)タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシアでの調査費用に70万円(4)研究協力者に図書、資料費として10万円を配分予定。
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