2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530541
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
濱岡 豊 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (60286622)
|
Keywords | 研究開発 / 製品開発 / オープン・イノベーション / ユーザー・イノベーション / 破壊的イノベーション / 共進化マーケティング / 低線量被曝 / オープン・データ |
Research Abstract |
調査票、調査方法については昨年までと同様、郵送法とし、調査対象者はダイヤモンド社のデータベースを用いて抽出した。研究開発調査では488社に調査票を送付し、125社の回答を得た(回答率25.9%。不到達の5社を除く)。製品開発調査では、820社に送付し、137社の回答を得た(同16.7%)。7年間のトレンド変化について分析したところ、以下の点が明らかとなった。 研究開発調査でトレンド変数が有意となったのは247項目中47項目であった。これら項目から,「ユーザーへの評価、対応の低下」「研究開発のオープン化の進展と限界」「経済的報酬から地位やプロジェクト内容で報いるという研究開発におけるインセンティブ制度の変化」「海外でのR&Dの自律化と成果向上」「技術や品質の強化の一方での開発スピードの低下」など,研究開発が困難になっていることがわかった。一方で,「トップによる方向性の明示や,信頼や公正さなど組織文化の強化」が進行していることもわかった。 製品開発調査では、250項目中27項目でトレンド変数が有意となった。変化した項目から,「自社の製品、技術的な強みの低下」「ユーザーとの関係の変化」「開発プロセスでの情報収集活動の低下」「製品の複雑化」などの問題が重要化していることがわかった。製品開発調査については、破壊的イノベーションについての項目を新設した。 オープン化時代の研究開発という趣旨を実践するため、本年度は、福島原発事故以降、重要化している低線量被曝について、オープンデータを用いた分析も行った。福島県甲状腺調査の市町村データを分析したところWHO被曝線量と甲状腺ガンについては相関はなかったが、結節数とは正の相関があることがわかった。さらに、米国における核関連設備従業員疫学個票データ(CEDRプロジェクト)を用いて、多項ロジットモデルなど、個人レベルでのモデルを適用した。その結果、傾向性検定やポアソン回帰など、従来の手法では有意とならなかった場合でも有意になることが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年までと同様の回答数が得られた。製品開発についての調査では、これまでに調査されたことがない、破壊的イノベーションについての項目を新設し、その実態を明らかにした。自社が破壊的イノベーションを導入するかについて、「よくある(2.9%)」「ある(12.4%)」「まれにある(39.4%)」と合計55.5%の企業が導入経験があることがわかった。他社によるものも同程度生じているが、「その市場の既存企業(82.9%)」によるものが大半であり、「自社の既存製品の強化(72.0%)」「破壊的イノベーション市場(製品)への参入(48.8%)」のように正面で対抗することがわかった。ただし、記入して頂いた「自社による破壊的イノベーション」の例をみると、既存製品の低価格化、もしくは品質や機能を低下させた製品の導入も含まれており、さらに詳細な分析が必要である(44社中8社)。さらに近年問題化している低線量被曝について、オープンデータを用いた分析を行うことによって、これまでよりも感度のよい分析、モデルを提案することができた。これによって、オープン化時代のイノベーションの実践を行えたと評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
継続調査であり、基本的には同じ調査を行う。ただし、2013年度に引き続き破壊的 イノベーションについての項目を設定する。また、4年計画の最終年度であり、この4年間での変化のとりまとめを行う予定である。特に研究開発担当者と製品開発担当者による評価の差異に注目した分析を行う。低線量被曝については、長期での被曝を考慮したモデルの開発、分析を行う予定である。
|