2012 Fiscal Year Research-status Report
逆選択に関する実証研究ー更新型定期保険のミクロデータ分析を中心としてー
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23530553
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 信一 立命館大学, 経済学部, 教授 (90388108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米山 高生 一橋大学, 商学研究科, 教授 (00175019)
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Keywords | 逆選択 / モラルハザード / 死亡保険 |
Research Abstract |
下記の内容をAPRIAソウル大会(2012年7月)で発表した。 日本の保険会社A・Bから提供いただいたデータ130万件から、保険会社が、終身保険・定期保険の新契約後1年~5年では、医的選択により逆選択とモラルハザード(自殺)を回避しており、実績死亡率が国民死亡率を有意水準5%で下回っていることが証明された。 終身保険の場合、新契約後5年以降でも逆選択・モラルハザード(自殺)とも発生していない。すなわち、実績死亡率は国民死亡率を有意水準5%で下回り、実績自殺率も国民平均を有意水準5%で下回っている。 一方、自動更新の定期保険契約の場合、医的選択効果の有効性は5年程度で、新契約から5年以上経過すると、実績死亡率が国民死亡率を有意水準5%で上回っており、逆選択とモラルハザード(自殺)が発生していると考えられる。自殺についても、経過5年以上では、実績自殺率が国民平均を有意水準5%で上回り、そのため、全期間でも、実績自殺率が国民平均を上回っている。逆選択・モラルハザードの原因は、定期保険の自動更新制度であり、選択更新制度への見直しが必要と考えられる。 なお、2011年7月にAPRIA東京大会で発表した論文を修正した‘An Experimental Study on Adverse Selection and Moral Hazard' は、’Hitotsubashi Journal of Commerce and Management'に2012年10月に掲載された。上記のAPRIAソウル大会発表論文についても、英文ジャーナルに掲載されるべく、学会参加者のご意見に基づき修正および英文校正を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
死亡保険の逆選択・モラルハザード(自殺)について、商品別・経過別に発生の有無を個別保険会社のミクロデータに基づき実証することが目的であった。 終身保険については、ほとんどすべての経過年で、逆選択・モラルハザードとも発生しておらず、新契約時の医師選択の効果が持続していることが、計量経済学として実証できた。 定期保険については、日本で自動更新制度が標準となっていることから、経過5年以内で逆選択・モラルハザード(自殺)とも確認されないものの、経過5年以上では大半の経過年数で逆選択から死亡率が国民平均より高く、自殺率も国民平均より高くなっていることが、計量経済学として実証できた。この逆選択・モラルハザードの解消には、定期保険を選択更新とすることが効果的と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
定期保険における逆選択・モラルハザードの発生原因は、日本で普及している自動更新制度であると考えられる。そこで、保険会社Cにお願いして、定期保険の実績死亡率・実績自殺率を、自動更新前と自動更新後に分離して、国民平均と比較するためのサマリーデータを作成いただいた。 このデータに基づき、統計的手法により逆選択・モラルハザードの発生状況を確認した日本語論文を作成し、エジテッジで翻訳したもらい、米国St. John's UniveisityのKwon教授と一橋大学米山教授と議論し修正した。その論文をAPRIAニューヨーク大会で発表すべくエントリーを3月におこなったところ、4月にアクセプトされた。その論文をこれから鋭意修正し、丸善で校正してもらい、Final Paperとして5月末までに提出し、7月末のAPRIAニューヨーク大会で発表する。
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Research Products
(3 results)