2011 Fiscal Year Research-status Report
大手航空会社の子会社LCCにおける経営戦略と市場競争への影響について
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23530554
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
水谷 淳 大阪商業大学, 経済学部, 准教授 (60388387)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | LCC / ネットワーク戦略 / 国際情報交流 |
Research Abstract |
平成23年度は初年度であったため、まずはヨーロッパ・アメリカ・オーストラリアにおける子会社LCCの経営戦略に関する先行研究をレビューした。そして、子会社LCCが成功するためには、ネットワーク戦略、運賃戦略や雇用面において、親会社の大手航空会社から限りなく独立した行動を確保することが重要であることが分かった。つぎにLCCのネットワーク戦略を分析するための予備的な考察として、わが国の大手航空会社(全日空・日本航空・日本エアシステム)のデータを用いて、長距離(国際)路線への参入による費用構造への影響を分析した。というのは、LCCは長らく短距離(国内)路線を中心にネットワークを展開してきたが、近年では一部のLCCが長距離国際路線にネットワークを拡大させつつあるためである。費用関数の推計結果から、自社内における国際線の比率が座席キロベースで20%を超えたあたりから国際線サービスと国内線サービスの間で範囲の経済性が生ずることを見出した。さらには全日空のケーススタディによって、範囲の経済性の生ずる要因の一つは、客室乗務員の国内線と国際線をうまく混ぜ合わせた勤務シフトであることが分かった。この知見は、今後、長距離路線に参入を考えているLCCにとっても参考になるであろう。平成24年3月にはカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学交通研究所に赴き、Gillen教授のアドバイスを受けながら推計モデルの修正を行った。この分析結果は、Cost and Network Structure of the Legacy Carriers in Japan: The Effects of Entry into International Routesと題して、平成24年6月に台湾台南市において開催されるATRS第16回研究報告会において発表することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、大手航空会社と子会社LCCの親子間におけるネットワーク棲み分け戦略を実証的に分析することが最終的な目標である。その中で平成23年度は(1)子会社LCCに関する先行研究のレビュー、(2)実証分析に向けてのモデル構築と使用データの整備が計画されていた。(1)の先行研究のレビューについては一定の成果があり、実証分析モデル構築のためのアイディアを得ることが出来た。(2)の実証分析についても予備的な分析としてわが国の大手航空会社のネットワーク戦略と費用構造の関する研究成果を上げることができた一方、最終的な目標である親子間の棲み分け戦略に関する実証分析には至っていない。特にデータの整備が遅れている。というのは、本研究では主としてOAG(Official Airline Guide)のフライトデータ(特注データ)を利用することとなるが、このデータが著しく値上がりしており、研究予算内に抑えるためにデータの仕様を何回も検討せざるを得ず、そのためにデータの入手が遅れてしまっているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずはOAGのフライトデータを入手し、8か国(イギリス・スペイン・ドイツ・アメリカ・オーストラリア・シンガポール・タイ・韓国)の大手航空会社とその子会社LCC、さらにはライバル航空会社を対象として運航ダイヤの特徴をまとめる。つぎに運航ダイヤを規定する要因を分析するためのモデル構築を行う。そして上記の運航ダイヤデータを用いて回帰分析を行う。特に親会社のみが運航する路線、子会社LCCのみが運航する路線、親子の両社が運航する路線を生じさせる要因を明らかにしたい。子会社LCCの成功事例としてオーストラリアのジェットスター、ドイツのジャーマンウィングスのケーススタディを行う。これらの分析結果を持って、カナダ、ブリティッシュコロンビア大学交通研究所を訪れ、レビューを受ける。さらには平成25年度のATRSで報告を行い、分析結果をブラッシュアップする。その後、国際ジャーナルへ論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
著しい値上がりのために、仕様の決定が遅れているデータの仕様を確定させ購入する(約50万円)。カナダ、ブリティッシュコロンビア大学交通研究所に2週間程度滞在し、Oum教授、Zhang教授、Gillen教授より研究のレビューを受ける(約40万円)。国際ジャーナルに投稿する論文の英語の検閲を受ける(約8万円)。
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Research Products
(1 results)