2011 Fiscal Year Research-status Report
商業集積がソーシャルキャピタルの形成に与える影響の研究
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23530555
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
酒井 理 大阪商業大学, 総合経営学部, 准教授 (30411466)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / 商業集積 / 社会的コスト / 地域厚生 / 高齢者 |
Research Abstract |
本研究の目的は、中小小売業で形成される商業集積がソーシャルキャピタルの形成に与える影響を明らかにすることである。研究は(1)商業集積と社会的コストの関係を探る研究、(2)商業集積とソーシャルキャピタルの関係を明らかにする研究、(3)ソーシャルキャピタルと地域の厚生向上に関する研究の3つで構成されており、平成23年度の研究は、(1)を中心に進める計画であった。 具体的には、経済産業省の商業統計表を使用して、全国の地域から代表となる地域を選び出し、商店密度などの集積度や地域の商業販売額といった商業集積データを収集をおこなった。また社会的コストを示すデータの収集については、路線価に代表される地価データ、地域の犯罪発生率データ、地域ごとの医療費データ、地域を運営するための行政コストに関するデータを収集した。当初の計画に基づいて地域の社会的コストを表現する指標が作成できるかを吟味した。しかしながら、当該指標の作成については思いのほか苦心した。指標吟味のデータの収集を行うことはできたものの、指標作成は現在も継続して検討中である。そのため研究計画では、作成した指標が実態を的確に表現できているかを確認するための実地調を行う予定であったが、これらは未実施で次年度に繰り越すこととなった。 実地調査の実施までのステップが難航したため、代わり前倒しで行える研究作業に着手した。具体的には、2年目に計画していたアンケート調査地の選定作業である。時間がかかると予想していた地元との調整を今年度中に済ませることができた。さらに、研究協力者である医療生協かわち野との連携によってWHOの実施している「高齢者にやさしいまちチェックリスト」などの資料を参考にして2年目に行う予定であったアンケート調査のたたき台を作成することができた。1年目の計画で未実施のものが出た代わりに2年目の作業の多くを今年度実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画に照らし合わせると、着手作業の順番に変更があった。1年目に計画していた作業の多くを2年目に送ることとなった。その一方で、2年目に計画していた作業の多くは1年目に前倒しをして進めることができた。よって研究計画全体としての遅れはわずかに留まり、その程度は微々たるものであると評価している。 今年度計画しながら実施できなかったのは、実地予備調査と実地調査である。実地調査の前提としていた指標の作成が計画通りに進まなかったことが原因である。指標が完成次第、迅速に実地調査を行う予定である。実地調査に進めない状況であったため、2年目に計画していたアンケート調査の下準備を前倒しで進めた。今年度計画していた、指標の作成作業と実地調査以外の作業は順調に進めることができた。指標作成にかかわる商業集積データ、社会的コストに関わるデータに関しては、すべて2次データであることから比較的に容易に収集することができ、研究計画に沿って進めることができた。2年目の作業の前倒しでは、東大阪市内の3か所の調査地点の選定およびアンケートの企画設計の多くを終了させることができた。 研究の進捗をみながら、臨機応変に先送り作業と前倒し作業の入れ替えの対応をスムーズに行うことができたと考えている。予算執行に関しては、データの収集に費用がかからなかったことと、計画した予算の大部分を占めていた実地調査にかかる費用が、上記の理由によって2年目に送ったことから、予算執行をおこなうことはなかった。これが予算執行額が0円計上の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めるにあたり、当初計画していた作業の着手順序を変更したため、今後の研究については、初年度と次年度の内容が変更されることとなる。初年度に計画しながら実施できなかった実地予備調査と実地調査を第三四半期までに実施する。実地調査の先送りの原因となった指標の作成に関しても次年度第一四半期で完成させる。次年度の第二四半期に計画していたアンケート調査地点の選定作業、第三四半期に計画していたアンケート調査の企画設計作業に関しては、今年度中に済ませることができているため、作業負担の超過による研究進捗の遅れは発生しないと考えている。 次年度末時点では、(1)商業集積と社会的コストの関係を探る研究、(2)商業集積とソーシャルキャピタルの関係を明らかにする研究、(3)ソーシャルキャピタルと地域の厚生向上に関する研究のうち、(3)の研究を残して、(1)および(2)に関して研究をまとめる予定である。計画では、(1)を初年度、(2)を次年度、(3)を最終年度で進める計画であったが、作業着手順の変更もあったことから、次年度に関しては(1)と(2)を並行して推進するかたちをとることとする。調査対象の東大阪市行政、地元自治会、および地域の医療団体、商店街組織といった外部協力者の良好な関係を維持しており、今後研究の進捗に重大な阻害要因が発生することはない状況である。 研究の推進に影響を与える点として、研究代表者の所属変更がある。東大阪市に立地する大阪商業大学を本務校として研究を進めていたが、次年度より東京都千代田区に立地する法政大学に移籍したため、研究拠点が調査対象地域より遠隔となることである。調査対象地域での研究推進に関しては、出張する時間は増えるものの負担の増大はそれほどないと想定しているが、計画で予算計上していなかった調査地点への旅費の増加が発生する。初年度の実地調査用の旅費、消耗品費などの振替で影響を最小限にとどめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に計画している研究費は、今年度未着手で次年度に繰り越した研究作業にかかる費用と次年度に実施する作業にかかる費用を合わせたものとなる。今年度未着手で繰り越した作業にかかる費用は、全国10カ所の実地調査の旅費80万円と統計ソフトSPSSの購入費用、および社会的コストに関わる文献の購入費用などの40万円である。統計ソフトSPSSに関しては、今年度取り組んだ指標の完成後、アンケート調査実施前に購入を計画していたが、初年度に指標を完成することができなかったため次年度に予算執行を延ばした。指標完成後速やかに執行する予定である。 今年度計画しているアンケート調査にかかる調査員報酬75万円、謝礼75万円は、調査実施とともに速やかに執行する。さらにソーシャルキャピタル関連の研究文献の研究代表者にとって開拓中の研究分野であり、購入費用15万円の執行は次年度の第一四半期に行う。アンケート調査地点の選定にかかる東大阪市内の現地調査費用3万円に関しては、初年度に調査地点の選定は済んでおり執行の必要はなくなった。 ただし、研究計画作成時点と状況が大きく変わる事態が発生した。研究代表者の本務校が大阪府から東京都に変わることでアンケート調査対象地域である東大阪市への移動費用が新たに発生することになる。次年度には調査準備、調査実施にともない年間10回の現地への出張機会が発生すると考えており、東京大阪間の1泊往復旅費として@4万円×10回で40万円の新たな旅費の増加を見込んでいる。この増加分に関しては、初年度から次年度に繰り越した全国10カ所の現地調査のための費用の一部、さらに次年度執行する必要がなくなった東大阪市内調査旅費3万円分を充てて対応することを計画している。 本務校の移動に伴う想定外の新たな支出増加に関しては、研究の効率的な推進と柔軟な予算執行に努めて予算内で確実に対応する計画である。
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Research Products
(1 results)