2011 Fiscal Year Research-status Report
財務・非財務指標が従業員の心理と行動に与える影響の研究:実験計画アプローチ
Project/Area Number |
23530567
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
末松 栄一郎 埼玉大学, 経済学部, 教授 (60276673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三矢 裕 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (00296419)
日置 孝一 神戸大学, 経営学研究科, 助教 (60509850)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 実験室実験 / 財務指標 / 非財務指標 / 従業員心理 |
Research Abstract |
本研究の具体的目的は,財務情報・非財務情報の提供の仕方によって,従業員の意思決定や業績がどのような影響を受けるのかを,実験計画法の手法を用いて解明し,実用的な利益管理システムのデザインに貢献することである。この点において変更はない。 平成23年度の研究実施計画では,実験参加者へのフィードバック情報の種類と情報提供の頻度を操作するとともに,作業成績に影響を及ぼすと考えられる他の要因についても分析可能な実験の実施を計画していた。 平成23年度において,埼玉大学と神戸大学の大学生が参加した実験を2回実施した。実験では,フィードバック情報の種類(財務情報と非財務情報)とフィードバック情報提供の頻度とを操作し,実験参加者の作業成績にどのような影響を与えるか検討した。 実験では,この2要因のほかに,参加者の個人差変数として,Need For Cognition(NFC: Cacioppo & Petty, 1982: 日本語版 神山・藤原,1991)を測定した。NFCとは,人がある問題を考えようとしたり,楽しもうとしたりする動機づけの個人差の概念である。ある問題や課題が与えられた際に,NFCの高い人は自分に与えられた問題を良く考えようとし,NFCの低い人は深く考えることを嫌うと考えられる。したがって,本研究においては,NFCの高い参加者は課題中に与えられるフィードバック情報についてよく考えるため,フィードバック情報の種類や頻度の影響を受けやすくなると予測され,他方,NFCの低い参加者はフィードバック情報を処理することを嫌い,情報の種類や頻度の影響を受けにくいと予測された。 実験の結果,NFCの低い参加者の作業成績は情報の種類・頻度の影響をうけていないことが示された。他方,NFCの高い参加者の作業成績は情報提供の頻度の影響を受けるが,情報の種類からは影響を受けていないことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目では,埼玉大学および神戸大学の大学生を参加者とする実験を実施し,フィードバック情報提供の頻度および情報の種類と,作業成績との関係について,ある程度の知見を得ることができた。さらに,参加者の個人差変数の効果についても知見が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き実験計画法によって,財務及び非財務の情報の提供の仕方が従業員の心理,行動,業績にどのような影響を与えるのかを解明し,実用的な利益管理システムのデザインに貢献することを目指す。 より具体的には,会計情報を頻繁に提供する(日次決算),財務情報と非財務情報を組み合わせて提供する(コスト・利益情報と生産量,歩留率情報の同時提供)などといった利益管理システムの構成要素個々のほかに,仕事内容(単純作業,多様な意思決定が必要な複雑な作業)などの要因が,従業員の意思決定やパフォーマンスに与える影響についても視点を広げていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に実施した実験室実験の成果の詳細な分析・検討を行い,その結果に基づいて,今年度の実験内容を設計する。 利益管理システムの構成要素個々が,従業員の意思決定やパフォーマンスにどのような影響を与えるかを十分に検討するため,集団間での競争の要因や目標の設定方法(他者が設定・自分で設定する)等の別要因を操作する別実験を学部生・MBA学生等を被験者として実施する。 その際,国内外における研究動向にも注意を傾け,国内外の研究者・実務家との意見交換を進める。
|