2013 Fiscal Year Annual Research Report
貸借対照表アプローチと損益計算書アプローチの発展的統合過程に関する研究
Project/Area Number |
23530571
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
大雄 智 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 准教授 (40334619)
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Keywords | 企業結合会計 / 連結会計 / 資本会計 / 概念フレームワーク / IFRS |
Research Abstract |
最終年度は、2013年1月に企業会計基準委員会から公表された企業結合会計基準等に関する複数の公開草案(2013年9月に成案)を踏まえ、資産の売却・分配の会計処理を題材に、利益認識のタイミングを決める概念および株主資本の範囲を決める概念について検討した。 前述の公開草案では、アメリカの会計基準や国際会計基準と同じく、支配の喪失を伴わない非支配株主との取引が資本取引として処理されることになっている。ただし、アメリカの会計基準や国際会計基準の背景には、株主資本の変動が資産の変動に依存し、かつ、資産の変動が支配の獲得・喪失に依存する概念フレームワークがある。それに対して、日本の概念フレームワークでは、純資産が資産と負債の差額として定義される一方、株主資本は純資産のうち報告主体の所有者である株主に帰属する部分と定義されており、株主資本の変動が必ずしも資産の変動に依存するわけではないことが示唆されている。したがって、支配の喪失を伴わない非支配株主との取引から生じる純資産の変動も株主資本以外の要素の変動(たとえば、その他の包括利益)として処理される余地があるはずであり、それが貸借対照表アプローチと損益計算書アプローチを統合する一つの工夫である。 また、本年度は、支配獲得後の子会社株式の追加取得や一部売却の会計処理を、親会社説 vs. 経済的単一体説という観点からだけでなく、支配アプローチ vs. 持分アプローチという観点からも検討した。本研究課題における貸借対照表アプローチは支配アプローチに、損益計算書アプローチは持分アプローチに対応する。 子会社株式の追加取得が資本取引として処理されることにより、財務レバレッジが上昇し、ROEが上昇するという不合理に対処するためにも、純資産と株主資本とを峻別し、2つのアプローチを統合する工夫が必要であるというのが本研究の含意である。
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Research Products
(2 results)