2012 Fiscal Year Research-status Report
企業の環境投資に対する資本市場の評価とコーポレート・ガバナンスに関する総合的研究
Project/Area Number |
23530579
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
朴 恩芝 香川大学, 経済学部, 教授 (00345860)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
|
Keywords | 環境コスト / コーポレート・ガバナンス / 環境投資 |
Research Abstract |
当該年度においては、研究目的のなかでも、環境関連活動に対する企業の姿勢が、コーポレート・ガバナンスのあり方とどのような関係にあるのか関する研究を進めた。そこでは、環境コスト情報と財務データを用いて、代表的な経済的理論ファクターとの関係から、環境関連活動に向かわせる日本企業の投資モティベーションを調べている。 第一の検討課題として掲げた環境コストによって測定される環境関連活動への積極性は、企業のコーポレート・ガバナンスとどのような関係をもつかをみるためのものである。企業の株主構成の大部分が短期的な利益の追求を選好する投資者によって占められるならば、環境投資は当面の収益を犠牲にするため、環境コストの支出は抑制される可能性がある。あるいは、銀行をはじめ債権者が大きな影響力を行使しうる状況では、担保としての工場用地の価値を維持・向上させるために、用地汚染の防止に必要な支出はむしろ歓迎される。 本研究では、株式所有構造、役員構成、経営者の在任期間などの、ガバナンスに関する多様なファクターを用いて、環境コストの大きさにどのような影響をおよぼすかを理論・実証の両面から検証した。結果としては、一部ではあるが、株式所有構造をはじめ、ガバナンスを特徴づける諸要因が企業による実物投資へのモティベーションとして作用することが確認できている。 次年度は別の角度からのアプローチを行って、より確実な結果を導き出したい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は、環境関連活動に着手する要因としてのコーポレート・ガバナンスの役割について、集積された環境会計のデータをもとに実証分析を行うことであった。実際、ガバナンスの指標のデータと環境会計のデータ、さらに財務データが一定量蓄積でき、本格的な分析を行うことができている。 データは、所有構造などの定量情報を回帰分析の直接の変数とするだけでなく、企業の環境投資に肯定的なガバナンスの構造を特定するため、主成分分析の手法などに依拠しながら、複数の指標を組み合わせている。この分析から、ガバナンス構造を与件としたときに、あるべき環境投資の水準が導かれた。 それを考えるためには、環境投資と他の潜在的な投資機会とで、投資の収益性がどれだけ異なるかを比較する必要がある。環境会計情報には、環境コストだけでなく、その支出に伴う経済効果の数値が含まれている。費用と効果を短期・長期の視点で照らし合わせることで、環境投資の効率をさまざまな角度から具体的に測定する。ただし、設備の増設など効果の確認が比較的容易な投資と異なり、環境投資が企業の収益性に結びつく経路はかなり複雑であることが予想される。 補完として、データ・マイニングなどの手法を用い、可能な限り客観的な形で環境報告書に記載された定性情報にまで立ち入って収益性の判断を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、ガバナンス構造と環境投資の水準が株価に与える複合的な影響を、2つの観点から明らかにする。まず、ガバナンスの内生的な影響を排除した上で、環境投資の大きさは株価の説明要素となりうるかを実証する。それと同時に、ガバナンス構造と環境会計情報をもとに株式ポートフォリオを作成し投資収益を測定することで、SRIに代表されるファンドの運用に対して何らかのインプリケーションを示すことを目標とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに購入が必要なデータは、CSRデータベース、東洋経済株価CD-ROMにまとめられる。また、モデルの生成・実証にはSTATAも欠かせない。 環境会計とコーポレート・ガバナンスに関する書籍の購入に、半分以上が充てられる。具体的な文献リストは研究の進捗状況にあわせて作成されるため、ここでは予想される平均単価に必要数量を掛けあわせた金額を計上している。 研究拠点は香川大学に置かれるが、研究分担者の中條は阪南大学(大阪府松原市)が本務校であるため、研究会を実施するための国内旅費が不可欠となる。また、研究成果を海外の学会で発表する予定であり、同学会に過去に参加した経験から海外旅費を計上している。 環境会計データを収集するために必要と見積もられる時間に、香川大学・阪南大学の規定に準拠した単価を掛けあわせることで算出しており、積算に合理性がある。
|