2011 Fiscal Year Research-status Report
ガバナンス・コントロールの理念と方法:デフレ脱却を目指す不況の管理会計学
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23530583
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大下 丈平 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60152112)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ガバナンス・コントロール / マネジメント・コントロール / 管理会計 / フランス |
Research Abstract |
本研究は、これまでに獲得した成果に基づき、次の四つの論点を巡って議論を深めていくことを目的としている。(4つの論点)(1)管理会計の発展は企業組織の経済モデル化の次元で考えるべきこと、(2)マネジメントの主たる領域が技術・生産志向性から組織・市場志向性へと移行:そのことがコントロールのパラドックス性を認識させたこと、(3)マネジメント・コントロールはそのパラドックスを緩和するための方法論の体系として再編されるべし、(4)企業不祥事、会計不正を背景とした内部統制論議はガバナンスをコントロールする方策を考えさせている(ガバナンス・コントロールの構想=新しいコントロール論の提案) このうち、当年度に発表した3つの論文のうち1つが、(4)のガバナンス・コントロール論を展開したものであり、そこでは、特にコントロール/監査をめぐる3組の3層構造((イ)財務諸表監査:財務諸表~内部統制~外部監査 、(ロ)マネジメント・コントロール(フランスのケース):マネジメント~コントロール~監査、(ハ)ガバナンス・コントロール:ガバナンス~内部統制~内部監査)を析出できた。このことは大きな成果であった。 他の2つは、活動基準原価計算(ABC)から時間主導的活動基準原価計算(TDABC)への展開を、企業組織の経済モデル化の次元で考えることによって、原価計算が発展するとはどういうことかをフランス的視点から考察したものである。 以上が今年度の研究実績の概要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究題目に沿って、初年度に3つの論文を発表し、1回の学会報告をおこなった。さらに(社)大学監査法人主催大学運営責任者会議に講師およびシンポジュームのパネリストとして参加した。そのシンポでは、「統一テーマ:大学におけるパブリック・ガバナンスと内部統制・監査」に向けて、研究題目の今年度までの整理を行い、「ガバナンス・コントロールの可能性:会計、コントロール、ガバナンス」と題して講演することができた。 また、特筆されるべきは、研究の中で担当者の考えるガバナンス・コントロールと類似の構想を掲げたコーポレート・ガバナンス論に出会ったことである。これもまた、今後の研究のなかで、ガバナンス・コントロール論を豊かにしてくれるものと思われる。 以上から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ガバナンスのコントロールといった新しいコントロール論を構想するに至るまでの上記の4つの論点を、内部統制論や内部監査論の研究成果を取り入れながら、例えば、ビジネス・モデルやERP (Enterprise Resource Planning)システム設計上の視点から考察し、さらに企業の技術・生産システムやガバナンス構造との関わりで、それらの論点の妥当性を検討していくことになる。これによって、ガバナンス・コントロールの枠組みに、より豊かな形を与えていく予定である。 また、研究途上、有力な英文雑誌のなかで見出した類似の構想「戦略的ガバナンス」論も今後の研究計画の一角をなすものと思われる。さらに、それに関連して、企業の社会的責任論(CSR)の重要性も認識するようになった。この点も研究計画の方向性を左右する重要な論点の一つとなってきた。 そして、そうした新しい論点の分析を通して、管理会計論から提起できるデフレ脱却の道筋の手掛かりを得たいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は、予定通りである。まず、コーポレート・ガバナンス、マネジメント・コントロール、管理会計、内部統制・監査などの領域の資料を購入する予定である。また旅費は、今年度は東京方面と名古屋方面でヒヤリングを行うために使用する予定である。人件費・謝金は、九州大学の大学院生を雇用し、データの整理とパソコンへのインプット作業を行ってもらう予定である。
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