2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530584
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野口 昌良 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70237832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 準一 国士舘大学, 経営学部, 教授 (90062869)
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Keywords | 炭鉱業 / 財務諸表 / 財閥解体 / 過度経済力集中排除 / 持株会社整理委員会 |
Research Abstract |
本研究は、九州大学・慶応大学・福島大学の各図書館・センター所蔵の炭鉱関係資料を利用し、鉄道・海運などの動力供給源であった日本の主要炭鉱会社を重点的に選別し、各社の利益管理ツールならびに各種報告制度に関する情報を抽出し、データベース分析を行ううことによって、戦前・戦後を通じた日本の基幹産業における会計実務というコンテクストから、我が国の会計制度の歴史的展開に関する議論に一定の貢献を果たすことを目的としている。 平成24年度は、井華鉱業および三井鉱山を調査分析対象とし、両社が持株会社整理委員会に提出した財務情報の属性を、財閥解体と過度経済力集中の排除というコンテクストから分析した。 分析の結果、次の2点が明らかになった。①財閥系炭鉱会社の伝統的会計実務は、自社解体の実施に際して十分に機能し、②財閥解体の過程で採用された会計実務(会社分割にあたって持株会社整理委員会によって検討された予想貸借対照表の作成)は、1947年7月に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって指示された「工業会社及ビ商事会社ノ財務諸表作成ニ関スル指示書」の内容の実現を通じて、戦後会計制度創設の重要な基盤を提供した。 この研究結果は、日本の財閥組織によって提供された会計情報のクオリティに関する議論に貢献することができる。というのも、初期の研究結果は、当該情報のクオリティを一般に粗雑なものであったと整理する一方、近年の研究成果は、それとは対照的に、財閥系の各会社によって当時採用されていた会計実務は、日本固有の経済環境下では、問題なく機能していた可能性があると指摘しているからである。本研究の成果は、後者の見解を支持するうえで重要なエビデンスを提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、三井鉱山に加えて、三菱鉱業も調査分析対象とする予定であったが、同社のデータベースについては、平成24年度終了時点において、依然として作成途上にあるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、三菱鉱業のデータベース完成を急ぐとともに、平成25年度の計画で予定されている日本鉱業および古河鉱業の両社につき、同様のデータベースを作成することを企図している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
資料収集と分析が中心課題となるため、旅費の支出が大半を占めることが予想される。
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Research Products
(1 results)