2012 Fiscal Year Research-status Report
企業戦略としてのM&Aが企業の組織形態および経営者の会計行動に及ぼす影響について
Project/Area Number |
23530587
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
浅野 信博 大阪市立大学, 経営学研究科, 准教授 (10319600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椎葉 淳 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60330164)
松中 学 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20518039)
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Keywords | M&A / 会計発生高 / 利益調整 / 企業戦略 / 組織形態 / 会計行動 / 監査役 / 監査法人 |
Research Abstract |
本研究の目的は、戦略遂行のためのM&Aが企業の組織形態の変化をつうじて経営者の会計行動にいかなる影響を及ぼすのかについて明らかにすることである。われわれはこれまでの一連の研究において、「M&Aに関するディスクロージャー制度の法律上の問題点」について議論するとともに、制度の現状およびあり方について理解を深めることができた。本年度においては特に、委員会設置会社および監査役設置会社それぞれにおける監査役および監査法人に注目し、経営者の会計行動が監査役および監査法人によって規律付けられているか否かについて検討を行った。研究成果の一部は、すでに論文として本年度に刊行済みである。 研究代表者である浅野信博(大阪市立大学経営学研究科:会計学パート担当)は、前任監査パートナーの回転ドアに注目した研究および監査の品質に注目した研究について学会報告を行うとともに、その内容を論文として公表した。特に監査の品質にかんする議論は、膨大なサーベイを含む研究方法論であり、本研究の基礎の一部をなす実績である。 研究分担者である椎葉淳(大阪大学経済学研究科:経済学パート担当)は、企業戦略および組織形態を議論する際に重要となる、製品ライフサイクルとコストの関係にかんする証拠について海外で報告を行った。 研究分担者である松中学(名古屋大学法学研究科:法学パート担当)は、前年度に引き続き、わが国の監査役に関する歴史分析について研究を実施するとともに、法人格否認の法理にかんする論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「戦略遂行のためのM&Aが企業の組織形態の変化をつうじて経営者の会計行動にいかなる影響を及ぼすのかについて明らかにする」という本研究の目的を達成するための前提である、1)M&Aを実施した後の企業における組織形態の分類、2)持株会社、委員会設置会社、監査役設置会社などにまつわる法律上の問題点に関する議論、を綿密な意思疎通を図りながら実施した。その結果、本研究はおおむねにおいて当初の計画通り順調に進展していると評価している。 会計学パート担当の浅野は、前年度に引き続き、M&A後の組織形態について法学パート担当である松中の協力を得ながら詳細な分類作業を行った。M&A後の組織形態の分類をいかにして説得力をある形で実施するかについては本研究の重要なカギであり、この分類作業については特に慎重を期して実施した。また、監査役および監査法人の規律付けにかんする研究については当初の計画以上に推移したが、予想に反するアーカイバル研究の結果が得られたことから、一部については次年度の課題とした。 経済学パート担当の椎葉は、監査役および監査法人の規律付けが経営者の会計行動にいかなる影響をおよぼすのかについて、浅野および松中と協力して経済理論モデルの構築を行った。経済理論モデルについては、アーカイバル研究の結果により修正が強いられることになったが、現時点ではおおむね順調に進展していると考えている。 法学パート担当の松中は、さまざまな企業の組織形態にまつわる法律上の問題点について浅野、椎葉と頻繁に議論を行っている。法学パートについては計画していた研究成果の公表が次年度にずれ込んだが、プロジェクト自体は当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、M&Aを実施した後の企業における組織形態の変化に注目するとともに、経営者の会計行動にたいする監査役および監査法人の規律付けについて集中的に議論を行った。次年度以降の研究の推進方策は以下のとおりである。 会計学パート担当の浅野は、本年に引き続いて、「戦略遂行のためのM&Aが企業の組織形態の変化をつうじて経営者の会計行動にいかなる影響を及ぼすのか」について明らかにするために、経済学パートの椎葉および法学パートの松中と共同してアーカイバルデータを用いた実証研究を実施する。なお、実証分析を実施するに際しては、経済学パートの椎葉によって構築された経済理論モデルから演繹する形で仮説の設定を行う。 経済学パート担当の椎葉は、経営者の会計行動にたいする監査役および監査法人の規律付けについて、経済理論モデルを用いて考察を行う。さらに、M&Aのアドバイザリーにかんするデータベースの構築およびそれを用いたアーカイバル研究についても浅野と共同して行う。 法学パート担当の松中は、さまざまな企業の組織形態にまつわる法律上の問題点、およびアドバイザリー契約にかんする法律上の問題点について、さまざまなケースに注目しながら、浅野、椎葉とともに議論を進める。 われわれのこれまでの一連の研究における成果については、本年度に引き続き、国内ないしは国外の学会等で精力的に報告するとともに、国内外の雑誌に積極的に投稿する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度における研究費の使用計画は以下のとおりである。 物品費については、マーケット、監査法人、役員など、さまざまなデータベースの購入にたいする支出が主たるものとなる。このうちマーケット関係のデータベース購入については、詳細な検討の結果、前年度に引き続き次年度に繰り越すことにした。これまでのアーカイバル研究の結果をわれわれ3人で詳細に分析・検討した結果、マーケットデータを用いた分析を実施するのは時期尚早と判断したからである。また、本年度に引き続き次年度においても監査法人および監査意見にかんするデータベースを購入する。本研究において監査関係のデータは必須であるにもかかわらず、大阪市立大学、大阪大学、名古屋大学でそれぞれ利用可能ではないからである。 書籍、消耗品などのその他の物品費については、各パートのメンバーがそれぞれ必要額を使用する。 われわれは3つのパートについてそれぞれ役割を分担して研究を遂行していることから、綿密な意思疎通を行わなければならない。研究代表者の浅野はサバティカル期間中であり国内を中心とした移動のため、法学パートの松中は名古屋在住のため、それぞれミーティングを行うための旅費を研究費として頻繁に利用する。さらに国内外において研究成果発表を行う際の旅費についても、各パートのメンバーがそれぞれ適宜使用する。 経済学パート担当の椎葉については、M&Aデータベースの構築を行うために、データ入力作業に必要な人件費を計上する。
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