2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530592
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
伊藤 克容 成蹊大学, 経済学部, 教授 (40296215)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール / 管理会計 / 組織文化 / 業績測定 / 予算管理 |
Research Abstract |
本研究では、「日本的管理会計」の特徴・性格を解明することを意図している。本研究の採用するアプローチの長所は、管理会計システムを、様々なコントロール手段から構成されるコントロール・パッケージの構成要素であると位置づけ、管理会計を中核とする会計的コントロール手段と組織文化や組織構造、人事制度、社内規則といった非会計的コントロール手段との相互作用に着目したことである。Anthony(1965)によるマネジメント・コントロールの研究以降、業績管理会計論研究およびマネジメント・コントロール論は、各種の業績測定尺度、予算管理システムなど、会計を中心とした公式な諸制度を中心に考察がなされてきた。今回採用したようなコントロール・パッケージの全体に着目するアプローチを通じて、日系企業の管理会計実務の実態解明やその問題点の抽出、その変容のメカニズムについての理解が促進されると期待される。本研究の貢献としては以下の2点が想定されている。1つは、会計を中心とした従来のマネジメント・コントロール理論を非会計的なコントロール手段も含めた、コントロール・パッケージ全体を包含するより説明能力の高い理論へと拡張することである。2011年度の成果としては、戦略立案のプロセスを取り上げ、コントロール・パッケージ論に関連する文献を整理・体系化し、伝統的な業績管理会計論との差異を明確にした上で、要素間を網羅したフレームワークを構築することに努めた。貢献の2つ目は、リサーチ・サイトとして日系企業を取り上げることで、伝統的なテキストでは必ずしも完全には説明ができなかった日系企業のマネジメント・コントロールの実態をコントロール・パッケージという観点から、分析し、その有効性を評価することである。2011年度の成果としては、複数の企業に対してヒアリング調査を実施し、理論の妥当性を継続的に検証することに尽力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を果たすために、2011年度においては、包括的な文献調査と日系企業へのヒアリング調査を並行して実施するという2つの課題の達成が予定されていた。文献調査に関しては、管理会計、マネジメント・コントロールに関する学術的文献のうち、コントロール手段の多様化に関する研究、コントロール・パッケージの視点からの研究についてはある程度、網羅的に収集し、体系的に整理することができた。また、ヒアリング調査については、複数の企業の経営計画策定プロセスについて集中的に聞き取り調査をする機会を得ることができた。 以上のことから、上記の2つの課題に関しては、概ね順調に達成できたと評価している。また、上記の情報収集の成果をふまえて、理論構築作業を行い、3編の論文と日本原価計算研究学会での学会報告として、その中間的な成果を公表することができた。情報収集が順調に推移したのに対してに成果報告が不十分なのが、次年度以降の改善点である。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度の計画(1)文献調査:多くの文献が新たに追加されることから、文献調査については継続的に実施する。文献調査の結果をふまえて、理論的なフレームワークの更新に努める。マネジメント・コントロール組織文化との関係については、特に網羅的な調査を実施する。(2)ヒアリング調査:複数の日本企業およびその現地法人に赴き、聞き取り調査を実施する。(3)中間成果の研究発表:国内外の学会で中間成果の研究報告を実施する。研究報告の結果、収集したフィードバック情報を反映させて、論文を公表する。2013年度の計画(1)文献調査:当該研究領域についての研究成果を検討することに加えて、前年度までにカバーできなかった「日本的経営論」、中間組織との関係性に着目した文献調査を実施する。(2)ヒアリング調査および質問票調査:引き続き、複数の日本企業およびその現地法人に赴き、聞き取り調査を実施する。仮説検証のステップとして、国内企業を対象とした質問票調査を実施する。(3)最終研究成果の発表:国内外の学会で最終的な研究成果の好評を実施する。研究報告の結果、フィードバック情報を反映させて、論文を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主たる支出項目および研究との関連性は以下の通りである。(1)文献調査: 文献調査に関連して、刊行物費(書籍・雑誌の購入費用)の支出を予定している。また、資料の整理作成用に各種消耗品(コピー用紙、文具、インクカートリッジ、ファイルなど)を購入予定である。文書の作成目的にPCを購入予定であるデータの整理保管用に記録媒体(ハードディスク)を購入する。(2)ヒアリング調査:インタビュー調査を行うために旅費、学会参加費を支出予定である。(3)研究成果の発表:研究報告を行うために旅費、学会参加費を支出予定である。ワーキングペーパーの印刷料金、発送費用を支出予定である。
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