2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530592
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
伊藤 克容 成蹊大学, 経済学部, 教授 (40296215)
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Keywords | 管理会計 / マネジメントコントロール / 組織文化 / コントロールパッケージ |
Research Abstract |
当該研究では、「日本的管理会計」を会計的コントロールと非会計的コントロールの組合せ(パッケージ)という観点から調査し、その実態の理解と変容のメカニズムについて、明らかにすることを意図している。業績管理会計論研究は、従来、財務的業績測定尺度、企業予算システムなどに代表される、会計を中心とした公式な諸制度を中心に考察がなされてきた。最近の傾向として、組織文化や経営理念など多様なコントロール手段の集合体として考えるアプローチ(コントロール・パッケージ論)が注目されている。コントロール・パッケージという枠組みを用いて、日本企業における組織慣行のなかで、総体としてどのような管理会計を構築すべきかについての理論構築を目指す。 本研究の目的を果たすために、(1)関連領域についての包括的な文献調査と(2)日系企業へのヒアリング調査を並行して実施した。 本研究の意義は、管理会計システムを単独で機能するものとしてはとらえず、コントロール・パッケージの部分集合であるというアプローチを採用している点に求められる。多様なコントロール要素に着目し、トータルとしての経営システムのなかでの管理会計の役割や他のコントロール要素との関係についての知見を深めるために、組織編成、組織文化、人事制度などの文献を整理し、業績管理会計システムと関連づけた。 文献研究によって明らかになった疑問点や問題点をさらに明確にするために、複数の企業に対して集中的なヒアリング調査を実施した。 上記の成果をふまえて、実務家を交えた研究会での報告、学会報告などを行うとともに、論文を公刊した。このことによって、暫定的に構築された理論モデルの検証と理論モデルの改善がもたらされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、最終的なアウトプットとしては、既存研究の成果にもとづいた、実践的な理論の構築を目指している。これまでの成果として評価できる点は、少なくとも、問題領域の整理、留意点の網羅・検討、事例の収集とその分析はクリアできたことである。課題としてあげられるのは、組織間管理会計の領域についての検討が手つかずになっていることである。 成果物の作成という面では、複数の中間成果物の公刊も実行でき、リサーチサイトとの関係構築も順調に推移している。 以上の要因を総合的に評価すると、概ね順調に、当初の計画通りに進捗していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、伝統的に重視されてきた会計コントロールに加えて、非会計コントロールをも包含したパッケージとしてのマネジメント・コントロール・システムの理論研究の体系化と理論の妥当性の検証を目指している。そのためには、引き続き(1)マネジメント・コントロール研究の動向およびそれに関連する隣接諸分野の研究を収集し、理論を精緻化すること、(2)日系企業のマネジメント・コントロールの実態をコントロール・パッケージという観点から、観察・情報収集し、分析し、その有効性を評価することは、重要な課題となる。 最終年度は、複数の日系企業のマネジメント・コントロール実務を観察し、理論仮説の妥当性を検証するとともに成果物の公刊を続けていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マネジメントコントロール、業績管理会計関連の文献の購入費用、コントロールパッケージに含められるコントロール手段(組織構造、経営理念、組織文化、人事制度、社内規定など)に関する資料の購入費用、ヒアリング調査のための旅費、研究会・学会・講演会などの参加費、事務機器などの購入費用、消耗品費が予定されている。
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