2011 Fiscal Year Research-status Report
企業活動のグローバル化の下での自律的行動促進のための原価企画システム
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23530600
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
諸藤 裕美 立教大学, 経済学部, 教授 (20335574)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 原価企画 / 管理会計 / トヨタ |
Research Abstract |
自律的行動(エンパワメント)のための管理会計システムの要件を明らかにすべく、欧米・日本の管理会計学領域の自律的組織・エンパワメント研究について、本課題研究開始時には不十分であったサーベイを行い、また、日本の管理会計学領域のエンパワメント研究は、帰納的研究或いはJohnson (1992)やSimonsの一連の研究(Simons, 1995: 2005など)に依拠した研究が多く、その他の近年の経営学領域の知見をあまり反映していないことから、それらのサーベイ、また関連する心理学領域の研究サーベイも追加して行った。それにより、上述管理会計システムの要件を整理することができたのに加え、経営学領域の研究において、エンパワメントの前提要因とエンパワメントの高さの関係が国の文化の違いにより異なってくることを理論的・実証的に明らかにした研究があることがわかった。それゆえ、一部ないし全機能の海外移転を行う国の文化に応じて、自律的行動促進のための管理会計システム設計・運用のあり方の検討を行う必要がある。 第二に、本研究のリサーチ・サイトの一つであるトヨタにおいて、原価企画システムも含む全基幹系システムの再構築が2003年に行われ、その理由の一つとしてグローバル化をあげている文献があったことから、グローバル化によって生じた問題点と当該システムの再構築の関係について明らかにしたいと考え、ヒアリング調査を行った。 第三に、1990年代末にトヨタにおいて行われた原価企画システムの大幅な変更(絶対値原価企画、総額方式)の主たる理由は、生産・調達のグローバル化や企業間競争の激化にあるとされており、筆者もこれらの変更を自律的行動を促進するシステムという視点から過去に論じたが、その後当該システムにどのような問題が生じ、どのように更なる変更が行われたかについて、ヒアリング調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自律的行動(エンパワメント)のための管理会計システムの要件を明らかにするための文献レビューについては、研究計画当初に想定していた領域に加え、経営学領域の文献のレビューも行ったことにより、管理会計学領域の帰納的研究の外的妥当性を確認できた部分があり、また、上述したようにエンパワメントとその前提条件との関係が国の文化に影響を受けるという研究の知見を得ることができた。 しかし、ヒアリング調査については、国内本社の原価企画関連部署に対しては行うことができたが、海外子会社については、ヒアリングするうえでの研究の枠組みを昨年度中に設定することができず、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の企業活動のグローバル化は、海外拠点に開発の責任を持たせ国内本社は支援に回る形にする動きや、海外統括拠点を設け、日本を全く経由せずに多数の地域で販売する製品を生産する動きなどがみられる。すなわち、企業活動の海外移転はより一層進展しており、また、本社と海外子会社との間での集権・分権関係のみではなく、海外統括会社と各周辺地域の間の関係も存在し、そして、国内本社から海外拠点への一方向の知識移転ではなく、双方向の知識移転が行われている。 原価企画に必要な水平的・垂直的インタラクションは、国境を超える部分が企業活動の連鎖の上流にさかのぼるほど、より困難になってくると考えられる。また、海外に任せる活動がより上流にさかのぼるほど、海外の組織成員の自律的行動の促進はより重要となってくると考えられる。本社対海外、海外の中の組織単位において水平的・垂直的インタラクションが円滑に行われているのか、また、日本で設計・運用されている自律的行動促進のための原価企画システムは、各国の文化等の違いにより機能しない面が存在するのか、といった点について問題の所在を確かめ、それへの対応策について理論的・実証的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越金が生じた理由は、23年度においては、計画立案時点で想定していたよりも広範囲の文献調査が必要だと判断し、それらの活動に重点を置いたことなどから、文献購入費用は予定よりもかかってしまったものの、海外へのヒアリング調査は来年度に持ち越すこととなり、旅費の支出が予定より少なかったためである。 24年度以降においては、企業活動のグローバル化のさらなる進展、そして進展の方向性の多様化に鑑み、それらグローバル化のあり方の合理性を既存研究その他により検討するため、資料収集にかかわる諸費用(文献購入費、資料収集旅費、複写依頼費等)の支出が、また、上記研究推進方針で述べたことについて、国内、海外拠点へのヒアリング調査、海外拠点の管理者を歴任された方へのヒアリング調査を行うことにより、事前準備のための資料収集にかかわる諸費用、また出張旅費の支出が予定される。
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Research Products
(1 results)