2012 Fiscal Year Research-status Report
国際財務報告基準に基づく財務報告の比較可能性と透明性の解明
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23530610
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
杉本 徳栄 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (50206695)
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Keywords | 国際財務報告基準 / 国際会計 / 財務報告 / 比較可能性 / 透明性 / 証券取引委員会 / 企業会計審議会 / 金融監督院 |
Research Abstract |
本研究の目的は、国際財務報告基準(IFRSs)の適用が、信頼性の高い財務報告を提供すること、より具体的には財務報告の比較可能性と透明性を向上させるという役割期待の妥当性について検証を行なうことである。この目的を達成するために解明すべき研究課題は、米国と日本によるIFRSs適用(任意適用と強制適用)の政策論争に関わる制度的・政策的解明と、IFRSs導入におる会計の品質の影響分析やその経済的帰結等の実態的・実証的研究による解明である。 平成24年度の研究実績は、まず米国証券取引委員会(SEC)と金融庁・企業会計審議会によるIFRSsの強制適用の是非の判断に関わる制度的・政策的解明に努めた。米国と日本は、会計基準のコンバージェンスを推進するとともに、国際会計基準審議会(IASB)による「1組の高品質で国際的な会計基準」の策定においても重要な役割を果たしてきた。自国の会計基準の品質の高さを自負し、いまだIFRSs強制適用の是非の判断を明確にしていない米国と日本において、会計基準の国際的な動向のなかで、IFRSsを強制適用することの是非に関わる政策論争の動向について継続的に検討し、これまでの実態を明らかにした。 併せて、究極のIFRSsフルアドプション国である韓国について、とくに規制当局である金融委員会と金融監督院等によるIFRSsアドプションとその定着に向けた取り組みについて詳細かつ具体的に検討し、その実態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、制度的・政策的解明と実態的・実証的研究を通じて、IFRSsに基づく財務報告の比較可能性と透明性、ひいてはIFRSs財務報告の信頼性について明らかにすることを目的としている。 米国におけるIFRSs強制適用の是非の判断については、SECの「コンバージェンスとグローバル会計基準を支持するSEC声明」(2010年2月24日)の公表により、それに添付された付録「作業計画」に基づいて、SECスタッフ(主任会計士室と企業財務局のスタッフ)による当該課題に対する一連の進捗報告書やSECスタッフ最終報告書が公表された。アメリカ大統領選挙によるSEC委員長の交代などもあり、SECコミッショナーはスタッフによる一連の報告書を踏まえたIFRSs強制適用の判断を下していないが、このSECスタッフ最終報告書等の役割と意義は大きく、この報告書の検討とこの間の規制動向などについては、平成24年度に論文や学会報告などを通じて公表した。 日本におけるIFRSs強制適用の是非の判断については、金融庁・企業会計審議会で検討しており、制度的・政策的解明の見地から、その審議動向などについて丹念に捉えてきた。あいにくIFRSs強制適用の是非の判断についての結論はいまだ下されておらず、引き続きその審議動向を見極めていく必要がある。この間の日本の規制動向などについても、平成24年度の論文や学会報告などを通じて公表している。 いわゆるIFRSs導入効果などを見極める実験は、究極のIFRSsフルアドプション国である韓国を対象とした実態の解明が有益である。韓国でのIFRSsフルアドプションの規制と実態、さらに法人税負担をはじめとしたIFRSs導入効果やその影響などについては、経済産業省企業財務委員会などでも報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
米国と日本におけるIFRSs強制適用の是非は、一連の政治的要因(大統領選挙や政権交代など)により、その方向性や結論が導き出されていない。日本では、IFRSs強制適用についての抜本的見直しは、「政治主導」の名のもとで展開してきたが、これまでの政治主導の教訓とも対比しながら、IFRSsの適用に関わる会計制度設計を金融行政や政治学の見地からも検討を加えなければならない。日米両国でのIFRSs強制適用の是非の最終的判断に至るまでの審議内容や動向を検討していく。 具体的には、SECスタッフの「作業計画」とその最終報告書等を踏まえたSECコミッショナーの取り組みとともに、金融庁・企業会計審議会の「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」、「国際会計基準への対応について当面検討すべき課題」などに対する取り組みの実態と文献考証などをもとに研究を推進する。 IFRSsを設定するIASBの目的の1つは、「1組の高品質で国際的な会計基準」の開発である。ただし、この「1組の高品質な国際的な会計基準」の意義が十分に明らかにされていないため、この本質的問題に対する基礎的研究を進め、その意義などについて明らかにする。同時に、この「1組の高品質で国際的な会計基準」の実現に向けたG 20や金融安定理事会(FSB)などによる政治的見地からの規制の結び付きについても具体的に解明する。 同時に、IFRSs適用による会計の品質への影響分析やその経済的帰結、IFRSsの導入効果の解明に向けた実態的・事象的研究も引き続き進める。会計情報の質的特性としての比較可能性などに関する一連の研究成果をもとに、IFRSsに基づいた財務報告の比較可能性、透明性および価値関連性などについて検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、IFRSsアドプションによる会計の制度設計のなかで、規制当局である米国のSEC、日本の金融庁・企業会計審議会等による規制とその実態の解明のために引き続き使用する。 研究目的の1つである米国と日本によるIFRSs適用の政策論争に関わる制度的・政策的解明については、この間の研究成果等を踏まえて、米国SECを訪問し、IFRSs導入問題についての聴き取り調査や関連情報・資料の収集に努め、IFRSs適用に関わる制度設計のあり方に具体性を持たせる。また、金融庁・企業会計審議会総会の傍聴をはじめ、金融庁企業開示課や経済産業省企業会計室並びにIFRSs任意適用企業の担当者などと意見交換や聴き取り調査を実施する。究極のIFRSsフルアドプション国である韓国でのIFRSs導入効果や影響などの先行研究からの知見や金融委員会・金融監督院の規制を整理するとともに、その検証を行なう。 「1組の高品質で国際的な会計基準」の意義について明らかにするために、ロンドンに本部のあるIASBを訪問して聴き取り調査や関連情報・資料の収集に努める。 もう1つの研究目的であるIFRSs導入の実態的・実証的研究については、日本と韓国におけるIFRSsの任意適用企業と強制適用企業に関わる各種情報・資料の収集に加えて、その企業サンプルをもとにした分析などにも研究費を使用する予定である。 その過程で専門家からの専門知識の提供も受ける予定であり、規制当局の各種規制や企業に関わる各種情報・資料の収集は、電子開示情報や各種データベースをはじめ、IR情報などを利用する(レンタル費用通信費を伴う場合もある)。また、これらの研究成果を関係する学会などで報告する予定であり、その際に生じる外国語論文の翻訳や校閲などにも研究費を使用する予定である。 なお、IASBでの聴き取り調査などのために次年度への繰越金が生じている。
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Research Products
(11 results)