2011 Fiscal Year Research-status Report
持続可能性会計の開発とステイクホルダー・エンゲージメントに関する研究
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23530613
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大西 靖 関西大学, 会計研究科, 准教授 (80412120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 昭宏 東京都市大学, 環境情報学部, 講師 (40350235)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境会計 / 持続可能性会計 |
Research Abstract |
本研究では、企業の環境、社会、および経済的側面に関連した持続可能性指標の統合可能性と、その統合プロセスにおけるステイクホルダーとの対話の関連性を明らかにすることを目的としている。 当該年度の目的は、持続可能性会計の理論的な分析を行うことであった。そこで、持続可能性会計に関する文献を中心に分析を実施して、とりわけ企業の持続可能性報告と正統性理論との関連についての関連性を検討した。その成果としてワーキングペーパーを発行した。内容は下記の通りである。 社会環境会計領域において、正統性理論は企業の情報開示を分析するための重要な理論のひとつとして位置づけられてきた。しかしながら、正統性理論が援用している正統性概念は研究者によって定義が多様に異なっていることが課題とされてきた。 そこで、本論文では近年の正統性理論および正統性概念の展開が社会環境会計の研究領域に対してどのような意味を持ちうるかを明らかにすることを目的として、理論的な分析を行った。その結果、正統性概念と企業の社会報告との関連についての研究の余地を明らかにするとともに、近年の社会環境会計に関する研究においては経営組織論における正統性概念の研究の展開を援用しながら研究が実施されていること、および今後の課題として企業の社会評価に関する分析を行うという観点からは、正統性に加えて評判といった他の社会評価指標を含めて議論を行うことで、持続可能性会計の領域における研究がより豊富になる可能性を持つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目的は、(1)持続可能性会計に関する理論研究として、持続可能性会計に関する論稿をサーベイするとともに、および海外の持続可能性会計の動向について調査を行い、理論的な基礎を構築すること、および(2)企業の環境報告書を収集し、持続可能性会計やその他関連情報を分析することの2点であった。 この課題に対して、当該年度では持続可能性会計の領域に関する文献研究を実施するとともに、環境報告書の分析等を通じて理論的な基礎を構築するための研究を実施した。その結果、持続可能性会計を分析するための理論的な基礎として、正統性理論を援用することの意義と課題に関する知見を得た。そのため、当該年度は一定の成果を得たと考えている。ただし、当該年度における研究費の配分時期等に伴って、海外学会への出席による研究動向の調査等を実施できていない点が課題と考えられる。この点については次年度に実施する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、持続可能性会計に関連する理論的な研究について、当該年度にワーキングペーパーとして発行した論文をもとに学会発表および学会誌への投稿を行うことを予定している。また、当該年度の理論的な分析をもとにして、経験的な研究に集中した文献調査を実施する余地があると考えている。 さらに、持続可能性会計の領域において、持続可能性報告とステイクホルダーエンゲージメントとの関連が問題とされるが、次年度ではこの問題について理論的な検討を加えるとともに、現状の実践に関する情報収集を行うことを予定している。理論的な検討の実施においては、最新の研究動向に関する知見を得るために、文献調査に加えて海外学会における調査も必要であると考えている。これらの調査および分析を実施することによって、具体的な調査項目の絞り込みおよび調査仮説の導出を行い、持続可能性報告およびステイクホルダーとの対話に関する経験的な調査に取り組むことが次年度の目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、当該年度における研究費の配分時期等に伴って実施できていなかった、海外における持続可能性会計についての研究動向を調査する必要がある。そのため、研究代表者および研究分担者が欧米を中心に、社会環境会計領域に関連する海外学会に出席して、発表資料および報告論文等の資料を収集することを予定している。また、ステイクホルダーとの対話に関する国内企業の実務について、学会を通じた情報収集や文献の研究に加えて、インタビューおよびステイクホルダー・ミーティング等の調査を実施する予定である。さらに、これらの研究の進捗状況および今後の研究方針に関して、研究代表者、研究分担者、および連携研究者による打ち合わせが複数回必要であると考えている。以上のとおり、次年度の研究費については、国内および海外への出張旅費に加えて、研究の進展に応じて追加的に必要となった文献の購入費用、および国内学会の発表費用等への使用を予定している。
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Research Products
(1 results)