2013 Fiscal Year Annual Research Report
公正価値による財務報告は会計記録の意義にどのような変質をもたらすか
Project/Area Number |
23530615
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
工藤 栄一郎 熊本学園大学, 商学部, 教授 (30225156)
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Keywords | 公正価値と会計処理 / 複式記入の理論形成 / 複式簿記知識の社会化 / 文明論から見た会計記録の意義 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実績は、①会計記録の意義を歴史的側面からの研究から描出したものと、②わが国における会計記録技術の教育と普及に関する制度的研究、そして③わが国の最近の会計基準にみられる会計記録の論理の不徹底の確認、④世界的規模での公正価値会計の制度的進行の現状把握、の4点である。 本研究の目的は、IFRSに代表される最近の会計基準において要求されることが多い公正価値による評価の会計実践が会計記録の意義にどのような影響を与えるかを検証することを通じて、現代の財務報告変革の歴史的意味を明らかにすることであった。そのために、まず、会計記録の本源的意義、すなわち、人や組織はどのような目的のために、あるいはどのような要求により、どのようにして会計記録を実践してきたのか、を歴史的事実を確認することで明らかにしようとしてきた。 研究期間3年間を通じてもっとも充実した成果となったのは、会計記録の意味を、現代の会計変化(変革的な財務報告の状況)と照らすことで、再検討したことである。具体的には、人の行為としての「記録」が、文字を有する以前においても実践されていたという歴史的事実を確認したこと、そして、驚くべきことに、記録された出来事が会計的な事柄であったことの発見である。会計記録が、社会の形成にとって不可欠であることが確認できた。それは、社会的コミュニケーション、社会統治、信頼と安定の基礎である。また、会計記録が文明論のなかで語ることで、会計研究の広がりと深まりが増す可能性を予感した。 他方、当初計画した研究で充分に展開できなかったのが、現行の会計基準における会計記録の意義の後退の有無に関する明瞭な分析成果の析出である。ストック・オプション等に関する会計基準のなかで、その一端に触れるにとどまったが、今後、この論点についていっそう研究を進めることで、会計記録の意義の変化について明らかにしていく。
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