2012 Fiscal Year Research-status Report
社会の持続的成長とライフサイクルコスティング―欧米諸国と日本との比較において―
Project/Area Number |
23530616
|
Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
矢澤 信雄 別府大学, 国際経営学部, 教授 (00439043)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 明 別府大学, 国際経営学部, 教授 (70037117)
|
Keywords | 会計学 / ライフサイクルコスティング |
Research Abstract |
2012年5月12日にライフサイクルコスティング研究会を開催した。研究会には日本でライフサイクルコスティング研究を行っている主要な研究者4名が招待され、欧米諸国と日本におけるライフサイクルコスティング利用形態の相違について研究発表を行った。 矢澤は社会コストを視野に入れた企業会計と国民会計の統合の研究を実施し、その成果は2012年12月に矢澤の単著『企業会計と国民会計』として出版された。その主な内容はライフサイクルコスティングによる世代間の利害調整の試みである。世代間の公平性を評価するためには、生涯純税率を指標とするのが従来の考え方であった。各世代においてこの生涯純税率が等しければ世代間の公平性は実現されていると判断されていた。これは、政府の視点からの世代間公平性といえる。しかし、矢澤は各世代が負担するライフサイクルコストを公平にすることが真の世代間公平性であると考え、この立場から著書を執筆した。 一方、西村は2011年度の研究成果を踏まえ、またライフサイクル・コスティングが環境問題及び企業の価格戦略などから益々重視される状態を考慮し、2012年11月に日本管理会計学会九州部会で『管理会計の現代的課題―回顧と展望』を報告した。また、ライフサイクル・コスティングと原価企画との関連を調べるため、日本の上場企業を対象にアンケート調査を実施した。少数であったが、貴重な知見を得ることができ、これを基に上記の関連を明確にするため研究を続けている。同時に、その一部の成果を論文に纏め査読付きの雑誌、Asia-Pacific Management Accounting Journal に投稿した。すでに査読は終わり、刊行は決まっているが、先方の不手際で遅れている。さらに、2013年3月に愛知大学会計大学院から招請を受け、以上の研究を踏まえ『管理会計の現状と研究方法』というテーマで報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年5月12日に開催されたライフサイクルコスティング研究会において、米国を起源とするライフサイクルコスティング理論が日本やドイツで受容され、さらに独自の発展をとげた点に関する手がかりとなる情報を得ることが出来た。これにより本研究の目標に向かって大きな進歩が見られた。 また、矢澤は単著『企業会計と国民会計』を2012年12月に刊行した。矢澤はこの著書の中で、本研究の中心的位置を占める「社会の持続的成長」という視点をさらに発展させて「世代間の公平性」の実現のためにライフサイクルコスティングの手法はどのような貢献をすることが出来るかを検討した。 西村は日本の上場企業を対象に実施したアンケート調査の分析結果を基礎として査読審査による論文1編を執筆し、研究発表を1回、招聘講演を1回行った。従って、研究はおおむね順調に進展していると判断することが妥当であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年11月に国内外のライフサイクルコスティングの研究者を招き、研究会を開催する予定である。この研究会においては米国、イギリス、ドイツでの社会環境・文化等を踏まえながらLCCの社会的背景を明らかにし、LCCが社会的な持続成長とどのように関わりながら研究ないし実行されているかを研究者が発表する予定である。さらに、2013年11月に招いた研究者と共同で米国・イギリス・ドイツにおける先端的な経験についての事例研究をおこなう予定である。また、ライフサイクルコスティングの研究者へのインタビュー調査やアンケート調査を計画している。 矢澤の著書『企業会計と国民会計』の中で調査された福島原発事故の被害評価結果をもとにライフサイクルコスティングにリスク概念を取り込む研究を実施する。この研究によりライフサイクルコスティングが社会の持続可能性評価指標としてより有用な手法となることが予想される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用計画としては、次を予定している。 1)ライフサイクルコスティング・フォーラム開催費用(会場使用料、飲食代、研究者講演謝金、研究者招聘に係わる旅費) 2)インタビュー調査費用(旅費、謝金) 3)文献購入
|