2013 Fiscal Year Research-status Report
論文・書籍の電子化にともなう査読制度の変容に関する文化生産論的研究
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23530618
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 郁哉 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00187171)
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Keywords | RAE / 研究評価制度 / メタ査読 / 英国 |
Research Abstract |
平成24年度までの研究成果をふまえて、平成25年度に特に重点を置いたのは、国際比較である。平成25年6月末から12月末にかけては、研究休暇を利用して英国に滞在して、同国の代表的な研究評価制度であるRAE(Research Assessment Exercise)およびその後継制度であるREF(Research Excellence Framework)に関して、第一次資料を含む資料収集と現地の関係者への聞き取りをおこなうことができた。 その現地調査において収集・検討したのは、主に以下の資料である――①イングランド高等教育財政審議会(HEFCE: Higher Education Funding Council for England)とその前身である大学補助金審議会(UFC: Universities Funding Council)及び大学補助金委員会(UGC: University Grants Committee)関連の資料、②政府省庁等によるRAEのレビューやコンサルテーション・レポート、③主として教育系の学術ジャーナルに掲載された英国の研究評価制度に関する論評、④タイムズ高等教育新聞(THES: Times Higher Education Supplement)、ガーディアン等のマスメディアに掲載された高等教育関係の記事。 英国調査では、以上の資料収集と並行して、現地の高等教育関係者11名へのフォーマルな聞き取りをおこなった。その内訳は9名の大学のスタッフおよび英国高等教育財政審議会の研究部の現部長および元部長の各1名である。これに加えて、現地調査の期間中には、折りにふれて大学関係者に対してインフォーマルな聞き取りをおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実績をふまえて、平成25年度は、査読プロセスとそのアウトプットが位置づけられる、より広い社会的・政治的・経済的文脈としての機関評価や研究資金・教育助成金の傾斜配分という問題について、海外での一次資料収集と聞き取りを含む調査によってより深く掘り下げることが出来た。現在までの達成として特筆すべきは、英国において、研究評価制度――既にその多くが査読を経て公表された論文・書籍等について、さらにピアレビューをおこなうという点に関しては、「メタ査読」と呼ぶことができる――が、学問分野においては、その学術コミュニケーションのあり方を大きく変える方向で影響を与えているという事実を確認できたことである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「現在までの達成度」で述べた、研究評価制度(「メタ査読」)が学術コミュニケーションに対して与えてきた影響について、さらに深く掘り下げいくことに重点が置かれる。たとえば、RAEにおいては、過去12年ほどの間に評価対象として各大学から提出される業績の内、論文が占める比率が60%前後から75%以上と飛躍的に拡大しているが、その傾向は特定の学問分野においては、特に顕著なものとなって現れている。今後の課題としては、そのような発表媒体(形式)の変容が、学術コミュニケーションの内容の変容に対してどのような影響を与えてきたのか、という点について、分野別に比較研究をおこなっていくことに重点をおく。それは、今後の我が国における研究評価制度およびそれにもとづく公的資金の傾斜配分のあり方について考えていく上で重要な意味を持つと思われる。
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Research Products
(2 results)